強襲上陸
アラデスクはウラソフとの会話後、すぐさま自身の艦であるヘルゴランの司令室にある放送設備を使用して、周りの艦にいる何万人といる兵士に対して語りかけた。
「皆、聞こえているかな?司令官アラデスクだ。知っている者もいると思うが、此度の戦場に突如としてスヴァールクスが現れた。奴らは今、目の前に見えるドルゴヌのオイミャク星を攻撃している」
「此度の任務は宇宙政府軍と共にドルゴヌと対峙する事が目的であった。故にこの状況は敵同士が争っている好都合な状況と言えよう」
アラデスクは少しの間を空けて再び話し出す。
「だが、私は彼らを助けたい......ドルゴヌと敵対したとはいえ奴らの支配下にある無辜の民が目の前で虐殺されるのを私は見て見ぬ振りをする事は出来ぬ」
アラデスクは艦隊のあらゆる場所に地上の映像を送信した。
そこには陣形を寸断され孤立した状態で戦闘を行い、スヴァールクスの波に飲み込まれて行くドルゴヌの兵士達、そして当てもなく逃げ惑う一般市民達であった。
「私のこの判断は間違っているのだろう。敵だった者同士が争っているという好都合な状況に片方に肩入れする......などという馬鹿げた事は......」
「しかし、それでも私は彼らを助けたい。どうか私の想いに賛同してくれないだろうか?」
アラデスクは少しいつもより自信無さげだが、しかし力強く問い掛けた。
ヘルゴランにある司令官の席の後ろはガラス張りになっており、そこからは巨大な艦内を見渡す事ができた。
そこから見えるのは、アラデスクの言葉に対する返答として自らの光剣を掲げる、兵士達だった。
彼らはアラデスクが見える場所に集結し、光剣を掲げる事で賛同の意を示していた。
また別の艦からも、光剣を掲げる兵士達で埋め尽くされた。兵士達の映像が次々と送られてくる。
兵士達はアラデスクに対して
「殿下!我々は貴方に従いましょう!」
「殿下の理想を叶えるべく戦いましょう!」
上級の士官から末端の兵士に至るまで、あらゆる階級の者たちが声を上げた。
「皆......私の我儘に付き合ってくれて感謝するぞ......私も剣を取ろう!同志達よ。共に戦ってくれ!」
「「おお!!」」
「全軍出撃!」
アラデスクの号令と共にエリディアンの兵士達は地上への降下準備を開始した。
「アラデスク、すげえ演説だったな」
「皇族が間違っている事を認めた上で協力を求めるってのは簡単じゃないだろうなぁ」
アラデスクの演説を聞き、心を動かされた者たちの一員だった。
彼らもまた、降下準備を迅速に進めて行った。
そして、いよいよ降下するという時にルインとシタデレが話しかけてくる。
「皆さん、今回の作戦は、私達は貴方がたの隣にはいません。初めての事に不安に思うかもしれませんが、クイーンを討ち取った皆さんの実力は本物です。ですので、今までの通り実力を発揮していただければ、と思います」
「まぁ......なんだ......今回私は陣地防衛、ルインは航空部隊の支援という任務がある。お前らに教える事は教えた。後はそれを忘れずに生きて帰れるかはお前ら次第だ。まだ、死ねない理由があるんだろう?ならば必ずや生き残れ。話はそれだけだ」
2人の言葉には、師としての温かさが込められていた。
「ありがとうございます!必ずやご期待に応えます!」
「私も、こんな所で止まるわけには行きませんから!必ず帰ってきます!」
「当たり前だ!俺はこんな所でくたばる訳には行きませんよ!」
「シオちゃんを取り戻して、宇宙を守らなければならない。ルインさんから教わった偵察兵としての全てを駆使して戦ってきます!」
4人はそれぞれの決意を表して戦場へ赴いた。
ーー
リュウキ達を含む、エリディアンの軍勢はオイミャク星の様々な地域に降下していった。
オイミャク星は正に地獄の様な惨状だった。
街は破壊され、あちこちで爆発音や銃声が聞こえており、またバイオミサイルがとめどなく飛来しては地面に激突して敵の数を増やしていた。
「なにこれ......ダラスやギテオンよりも酷い......」
シリカの言葉通り、今までのスヴァールクスよりもまるで、星の生物全てを殺し尽くすのではと疑うほど、非常に苛烈な攻撃であった。
「バイオミサイルを撃ち落とす必要があるな......まずは工兵!対空用のパワーシューターを設置してくれ!それ以外の者は周りの敵を排除せよ!」
指揮を取るアラデスクの号令に周りは即座に動き出した。
リュウキ達もまた、周囲の敵と交戦して行く。
周囲のエリディアン兵の戦意も高く、次々と敵を切り裂いていった。
「リュウキ!リュウキはいるか!」
周囲の敵を排除した直後、アラデスクがリュウキ達を探す声が聞こえた。
その呼びかけに応じ、リュウキたちは彼の元へ駆けつけた。
「アラデスク、どうしたんだ?」
「うむ、友よ頼みがあるのだ。我ら本隊は橋頭堡の防衛陣地が完成次第、攻勢に移るのだが、その前にお前達で周りにいるドルゴヌの戦闘部隊の救助に向かって欲しいのだ。銃声や悲鳴はそこら中で響いている。それを頼りに、彼らと合流して情報を得たいのだ。頼めるか?」
「ああ、任せてくれ」
友の頼みを断る理由はないと、リュウキ達は即座に承諾した。
「感謝するぞ。1人でも多くの命を救ってくれ!ザメルとルインをお前達の支援につけよう!......そして、気を付けてくれ......此度の戦何か違和感を感じる......」
「分かった。ありがとう、アラデスク」
リュウキ達は周囲の救助に、アラデスクは軍の指揮へと、それぞれ行動を開始した。




