妹への想い
シリウスは昔の事を夢で見る事が多かった。
「......これから任務なんだからこういう夢は辞めて欲しいんだけどなぁ......」
窓の外を見ると丁度ワープゲートから宇宙空間に戻る所だった。
「あと少しで着きそうね......ラハブル星......どんな所だろう......オイミャク星と違うのかなぁ......」
もうすぐ降り立つラハブル星の事を考えながらシリウスは自身のスナイパーライフルを点検した。
ーー
到着後に一般の船員が税関の点検を受けている裏で、シリウスは隠し扉から船を脱出して、現地の諜報員と合流する。
「長旅お疲れ様でした。シリウス・ヤゴーダ狙撃中尉でお間違いないですね?」
「はい。短い間ですがよろしくお願いします」
「一先ずは話せる場所へ移動しましょう」
こうして2人は諜報員の隠れ家へと向かう。
「さて、まず中尉に狙撃していただく対象のアラデスク皇太子についてです。皇太子は今さっきラハブル星に到着したところです」
諜報員がテレビを点けると、宇宙船から降り立ち出迎えに来た民衆の歓迎を受け、手を振っているアラデスクの姿が映る。
「これが、ターゲットですか」
「ええ。皇太子は明日、明後日と大統領と会談を行いまして、最終日にラハブル星の一般市民と大統領府近くの公園で、触れ合う時間が設けられているそうです。そこを狙います」
諜報員は地図を広げて公園を指で示した。
「狙撃ポイントは?」
「こちらです。このビルの屋上です。距離は4126メートルです。可能ですか?」
「ええ。問題ありません」
「承知しました。狙撃後は速やかに、空港へ向かって下さい。当日に行きに乗った貿易船が出発しますので、そのまま逃亡して下さい」
「承知しました」
「では、当日までは特に何もありませんので、お寛ぎ下さい」
そういうと諜報員は部屋から出て行った。
「シャナとイーダのお土産......探しに行こうかな」
ーー
リュウキ達はアラデスクと共にラハブル星を訪れていた。
「さて、私は大統領との会談に向かうがリュウキ達は久しぶりの人類の惑星だ。好きに遊んできてくれて構わないぞ!」
「おお!さっすが!アラデスク!太っ腹!」
ロドメルは分かりやすく喜んでおり、他の皆も彼ほどではないが、喜びを隠せてはいなかった。
「ルインやシタデレ達も遊びに行ってくれて構わんが?」
アラデスクの問いに対して親衛隊の面々は回答する。
「私は軽く街を散策しようかと思います。シタデレはどうですか?」
「私も寝てますよ......退院したばかりですし、人間の街に興味はありませんので」
「リッテンとカラシコフはどうする?」
「私も少し散策をしようと思います。カラシコフ隊長もいかがですか?」
「我々は遊びで来ている訳ではないのです!遠慮しておきます!」
「まぁ、隊長が自分でそう仰るのならば......」
こうしてそれぞれの目的に別れた。
ーー
5人は街に繰り出して、ラハブル星代表的な観光スポットで様々な店が立ち並ぶメインストリートへと向かった。
「すごい......色んなお店があるね。ダラスとは大違い」
「ああ。早く行こうぜ!」
「そういえばリュウキは、ラハブル星に来た事あるんだよな?」
「うん。でも、会談の時に少しだけだよ」
その時リュウキ達の背後から1人の少女が現れる。
「あの......すいません。お聞きしたい事があるんですけど」
リュウキが振り向くとそこには、リュウキと同年代くらいの長い銀髪の少女が立っていた。
「ん?俺達ですか?」
「は、はい!実は......妹に買うためのお土産屋さんを探してるんですけど、でも私ラハブル星に来るの、初めてなので何処が良いか分からなくて......」
「それなら俺、メインストリートで1番有名なお土産屋さん知ってるんで、案内しますよ」
「ホントですか!ありがとうございます!」
「じゃあ俺、この子案内してくるから先に遊んでてよ。後で合流するからさ」
「うん。分かったわ、終わったら連絡してね!」
こうして少女とリュウキは店に向けて歩き出した。
「あ、皆ごめん、私もちょっと買いたい物あるから買って来るね。終わったら合流するから!」
そう言うとエマも人混みの中に消えて行った。
「ラハブルには、観光で来たんですか?」
「あ.......え、えっと......その、仕事で......来ました」
「仕事ですか!?俺たちと同い年位なのに働いているんですか!?」
「はい......私の父も母も、もう死んでいるので妹と2人暮らしなんです......だから......妹の為に働いているんです」
「えっと......お名前は何とお呼びすれば良いですか?」
「あー......えっと......シリウスって言います。そちらは?」
シリウスは一瞬本名を明かすか悩んだが、その場限りの関係であると判断して答えた。
「俺クドウ リュウキって言います!気軽にリュウキって呼んで下さい!」
「リュウキさんですね。よろしくお願いしますね!」
「リュウキさんはおいくつなんですか?」
「俺は今年で17ですよ」
「私も今年で17です。一緒ですね」
「え!年も同じなんですね。じゃあリュウキ君って呼んでも良い?」
「ああ、もちろん大丈夫だぜ!シリウス!」
「シリウスは妹が居るんだね。俺も居るんだよ。今は何歳なの?」
「妹はもうすぐ13才だよ」
「え?俺の妹と同い年だ!シオって言うんだけど、凄い偶然だ!」
「え?そうなのね!私の方はイーダって言うのよ。リュウキ君の妹さん、シオちゃんはどんな子なの?」
「そうだなぁ......シオは、凄く元気で......小さい頃も川で溺れてた子犬を助ける為に飛び込んだりするくらい無鉄砲だけど優しい心を持ってるって感じかな」
「すごいなぁ......シオちゃんは凄く元気なんだね」
「私の妹......イーダは身体が元気じゃなくて......あまり走ったりは出来なくてさ......」
「シオちゃんは今は中学生ですか?」
「今は......事情は話せないんですが、ちょっと......遠い所にいて......会えないんだよね......でも、俺もシオに会う為に、頑張っている最中なんだよ......」
「......何か......事情があるんだね。ごめんなさい......こんな事聞いてしまって......」
「いやいや、全然気にしてないよ。あ、ほら、目当てのお土産屋さん、もう見えてくるよ!」
リュウキは遠くに見えてきた店を指差した。
そこには、大きな看板が掲げられ、外から見ただけでも様々な種類の土産物が並んでいるのがわかる店があった。




