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Space Liberator  作者: ツインタニア
銀氷のアリゲーター

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優遺伝保護法

シリウスは訓練場から戻る途中に目眩を感じて、トイレに向かう。


「ハァ....ハァ....ちょっと撃ちすぎたかな......?」


そう呟きながら自身の胸に刻まれている緑の鷲の紋章の様な痣に目をやると痣は身体の不調を訴える様に普段よりも強く光っていた。


「便利だけど、この弾使うと疲れるからなぁ......次の任務の為に慣れておきたかったんだけど......」


緑の痣は彼女が幼い頃いつの間にか発現していた物であった。


しかし、その時点では、ただの痣であり特に気にする事はなかった。


きっかけは彼女が狙撃の飛距離を伸ばす為に悪戦苦闘していた時、緑の銃弾は突然手元に現れた。


普通ならば異物として報告するべきであろう、実際彼女も謎の銃弾を不気味がり上官の元へ持って行こうとした所、粒子の様に空気に溶けていってしまった。


不思議に思いながらも再び狙撃銃を手に取ると、またもやその銃弾が出現する。


形状は通常の弾と同じだったので、試しに使用してみた所、飛距離を格段に伸ばす事が出来た。


しかし他者に見せようとすれば消え、それを伝えようとすれば、まるで日焼けした書物の如く、読み上げる事はできなかった。


故に彼女以外にこの存在を知る者はいない。


「そろそろ......行かなきゃなぁ......」


シリウスは立ち上がり部屋へ戻っていった。



ーー





ギテオンでの戦いの結果、解放者達の手によりクイーンは倒れ、人類とエリディアンの共闘は成功して一先ずは、お互いに歩み寄る事ができた。


また解放者達がクイーンを討ち取った事によりエリディアンの彼らに対する認識も少しずつだが、変わりつつあった。


しかし、この時点では宇宙の問題はまだ山積みであった。


人類側も我々エリディアンも同じ種族同士で争っており、それぞれが手を取り合いスヴァールクスに対抗するのは正に夢物語であった。


だが、人類の組織ドルゴヌから来た1人の狙撃手により歴史は動き出す。


ーーーリッテン・ソイルドの著書「宇宙の解放者」

第2章 銀氷のアリゲーター



ーー


少しの日々が立ちシリウスの狙撃任務の詳細な日付が判明してそれに向けての準備を進める。


そうして遂にラハブル星に向かう当日となった。


「シリウス ヤゴーダ中尉。成功を祈っているぞ」


「おまかせ下さい。必ずや成功させてみせましょう!」


当日には上層部の人間もシリウスの見送りに来ており、それだけ重要な任務である事が伺える。

「では、あの宇宙船が今回君をラハブルまで乗せていってくれる貿易船だ。到着後は現地の諜報員と合流して任務に当たってくれ」


「かしこまりました」


シリウスは船に乗り込むも正式な船員ではない為、倉庫の一角にスペースを用意されそのまま出発した。


窓から遠ざかっていくオイミャク星を見ながらシリウスはイーダの事を考えていた。


「いつも、イーダはナーシャに面倒みてもらってるし帰ってきたらお土産の1つでも渡してあげたいなぁ......」


などと呟きながら窓から星々の景色を眺めていたが、やがてワープゲートに入り窓からは何も見えなくなる。


「暇だなぁ......寝ちゃおうかな......イーダ......お姉ちゃん必ず帰るからね......」


シリウスはそのまま瞼を閉じた。


ーー


シリウスの夢の中


「失礼します。ヤゴーダさんのお宅で間違いないですね。我々はドルゴヌ政府より派遣されました。遺伝子調査官です」


突然、家の中にスーツ姿の男が複数人押しかけてきて、それをシリウスの父が応対した。


「そうですが......一体......何のご用でしょうか?」


「先日、可決された(優遺伝保護法)に基づいて検査に参りました」


「ハァ....それで......何をすれば良いのでしょうか......?」


父の問いに検査官は答える。


「そもそも、優遺伝保護法とは遺伝子的に優秀な人物を検査で見つけ出しその才を活用して国を発展させるために行います。ただ血液を採取させていただくだけです。結果もすぐに出ますのでお時間は取らせません」


「分かりました......それならば......」


父は承諾し家の奥から母とイーダとシリウスを呼ぶ。


「お父さん......注射嫌だよ......痛いもん」


「我慢しなさい。すぐ終わるから......」


「ん?お嬢ちゃんの胸に痣みたいなのがあるけど怪我でもしたのかい?」


「ああ......これは......産まれた時から着いていまして、お医者さんにも原因が分からないそうでして......ただ害はないそうなので特に気にしてはいません」


検査官の問いに母が答えた。


その後、家族全員の血を採取した。検査官は機械で判定を行う。


しばらくして結果が画面に表示され、それを見た検査官は驚く。


「ま......まさかこんな普通の家に、レッド遺伝子が出るとは......しかし......本来なら家族全員出るはずだが......なぜ子供だけ......しかも......姉の方だけなのだ......」


「レッド......?それは何なのですか?」


家族は検査官の言っている意味が分からずに尋ねる。


「この検査には優秀な遺伝子を発見する一方もう一つの目的があります。それは犯罪者の子孫や危険思想を持つ者などを発見する事です。国とってそれは害ですのでね」


「は、犯罪者?私も妻も......勿論子供達も......誓ってそんなことは......」


「そうですよ。調査官さん私たちは何も......」


父母の必死の訴えも聞き入れられることはなかった。


「残念ですが、これは決められた事なのです。何故かは分かりませんが、家族の中でシリウスのみ、レッド遺伝子が確認されました。法律で定められた通りに近所に通達し役所に登録させていただきます」


それからシリウス一家の生活は一変した。


家族の誰かが街を歩くだけで後ろ指を刺され、村八分の様な状態となった。




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