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Space Liberator  作者: ツインタニア
銀氷のアリゲーター

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39/89

右翼・トロツキストブロック

私は過去の裁判の被告らと同様に苛烈な拷問により自白を強要されていた。


「うぐあぁぁぁぁぁぁ」


「ほら、ヤゴーダ殿。ジノヴィエフを見てた貴方ならば、どうすれば良いか分かるでしょう。自分がスパイと認めれば早く楽になれますよ」


「エジョフ......お前のしている事は......いつか必ずや......お前自身に返ってくるぞ!」


「おやおや、怖いですねぇ。ですが私は書記長の命令に背く様な愚か者ではありません。書記長の命令、望みに忠実に従いますのでご心配は不要ですよ」


「そして人の心配よりも、自分自身の心配をする事を、おすすめしますよ。スパイのヤゴーダさん」


最終的に私は拷問に屈して罪を自白してしまった。


ーー


獄中にて私は拷問の痛みに苦しんで眠る事も出来ずに夜を過ごしていた。


「誰かと思えばまさかヤゴーダ殿がここに居るとはなぁ。これも運命だろうか」


私が振り返るとそこにいたのは協力者の1人ニコライ・ブハーリンだった。


彼とは手紙でのやり取りが主で顔は知っていたが実際に会うのは初めてだった。


「ブハーリン殿。同じ牢獄だったのですな」


「そのようだね。ヤゴーダ殿、随分手酷くやられているな、身体は大丈夫かい?」


「痛みが激しいですが......何とか」


「そうか、私も君ほどでは無いが身体が悲鳴をあげているよ。......それにしてもNKVD長官の君までもがこんな立場になるとは......コーバはもはや誰の事も信用していないのだろうね......」


「......私もブハーリン殿もそして書記長、他の死んでいった皆も理想の国を作る為に手を取り合い革命を成し遂げました。あの時は全てが光に満ちていました。それが今やどうしてこんな事に......」


「ヤゴーダ殿、過去を悔いても何も変わりはしないせめて我らの想いを未来に託すんだ」


「未来......ですか?」


「ああ、私は投獄されてから本をたくさん書いているよ。そしてこれからも生きている限り一冊でも1文字でも多くこの世に残していくつもりだよ」


「裁判が始まるまではまだ時間がある。過去の事を悔やむのも気持ちは分かるが、未来に目を向けてみてはどうだい?」


「せっかくこうして話す機会が出来たんだ。ぜひまた話したい。生命ある限り共に会話を楽しもうじゃないか、ヤゴーダ殿」


ブハーリン殿は手を差し出してくる。


私はその手を取り握手を交わした。


「ふふ、ヤゴーダ殿の目に輝きが戻って来たなそれこそ、真の革命家と言えよう!」


「ありがとうございます。改めてこれからよろしくお願いしますね。ブハーリン殿」


「ああ、よろしく」


私はブハーリン殿と話してから、しばらくの間未来について考えていた。


私自身の未来を開くと言うのは困難だという結論はこの様な境遇では覆すのも難しい為、最初は子や孫が幸せに人生を生きて行ける様にと祈った。


元々私は革命を志してからは無神論であったが、祈るというのは不思議な物で心が楽になる。


私は毎日来る日も来る日も祈り続けた。


最終的に祈りは、私の様な失敗をせずに、良い仲間達と共に苦しんでいる人々を助けられる様な立派な人間になって欲しい、という願いに落ち着いた。


これは、あくまで私のわがままな願望に過ぎない。本当は、ただ幸せに暮らしてさえくれればそれで良いと思っていた。


しかしそんな日々にも終わりは訪れる。


遂に私とブハーリン殿の公開裁判が始まった。


しかしこれも前と同じく、裁判とは名ばかりの寸劇であった。


「主文、被告人21名のうち、ドミトリー・プレトニョフ、セルゲイ・ベッソノフ、フリスチアン・ラコフスキーを除く18名を祖国に対するスパイ行為により、銃殺刑に処す」


判決は予想通り死刑だった。


今回の裁判も今まで同様に決められた台本通りに進む演劇の様であった。


拷問を受けた被告達は家族と自らを守る為にありもしない罪を自白して行った。


判決後、突然被告である、ニコライ・クレスチンスキーが立ち上がった。


「私はこんな馬鹿げた判決は飲む事ができない!私は無実である!私はテロもスパイもやってはいない!」


彼はただ1人裁判に真っ向から立ち向かい反論を試みたが、それは周りで傍聴している【市民】達が許さなかった。


「引っ込めっ!売国奴!」


「ファシストの犬がっ!」


忽ち罵詈雑言が飛び交う、それもそのはずである、この【市民】は裁判が台本通りに進まず被告が不都合な事を行った時にそれを妨害する役割を持っていたからだ。


ニコライの主張は忽ち掻き消されてしまい、裁判長によって無理矢理、閉廷させられてしまった。




しかし私に思い残す事はなかった。


私は獄中にて、この世界で1番祈りを込めたという自信があり、それが強い心の支えとなった。


神に対して祈る訳ではないまだ見ぬ数百年後の世界に対して想いを届ける為である。


ーー


裁判の2日後に私は自らのダーチャ(別荘)に連れて行かれ処刑の準備が始まった。


私は縛り上げられ、目隠しをされるその間にも心の底から未来の事を想った。


やがて処刑用の銃が此方に向けられる。


何秒経ったかは分からないが、しばらくして轟音と共に全身に激しい痛みが走る。


まもなく自分は死ぬという事を嫌でも実感させられる。


私に悔いはない祖国の為に、理想の為に、革命の為に全てを捧げたからである。


意識を失う直前になって偶然目隠しが外れて視界が開ける。


それと同時にまるで私の魂が形を取ったかの様な緑色の鷲が私の身体から飛び出して来た、それと同時に全身の力が一気に抜ける。


「この世に神は存在する」


意識を失う直前に静かに呟きながら、見たその鷲の目は鋭く何処までも見通している様に見え、それを見るとなぜか気持ちが落ち着き安堵のまま私は眠りについた。


ーーー


ドルゴヌ支配領域 オイミャク星


「また.......この夢か」


少女は目を覚ました。


「いつもいつも、何なのよ.....ほんとに.....」


小さい頃から同じ夢を頻繁に見る。


夢の内容は目を覚ますとほとんど忘れてしまったいるが、祖国を想う1人の男の視点で進んで行き、彼は祖国の為に奔走するも最終的に報われる事なく処刑されるという何とも後味の悪い夢だ。


「気分悪いなぁ......でも、仕事行かなきゃ......」


私は手早く洗面を済ませて妹の部屋に朝食のパンを持っていく。


部屋のドアの前に立ちノックをする。


「入るよ。イーダおはよう。体調は大丈夫?」


「あ!お姉ちゃんおはよう!今日は大丈夫だよ!咳もあんまり出ないんだ!」


「そう?良かったわ。ご飯ここに置いておくから、食べられる時に食べてね」


「ありがとうお姉ちゃん。お姉ちゃんもお仕事頑張ってね!」


「うん。それじゃあ行ってくるね」


私はイーダの部屋を後にして、職場へ向かうべく家を出た。










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