ギテオン戦の終結
クイーンは絶叫しながら爪を振り回して反撃する。
エマは攻撃してすぐにブリンクで再び離脱する。
「よし!成功したよユウゴ君!」
「ああ、あと一息だ!」
クイーンは再び卵に向かうべく動き出すが、動きは鈍っており目に見えてダメージが蓄積している様子だった。
傷を負いながらもなんとか卵に辿り着いたクイーンは強制孵化を使って反撃に出る。
「よし!もう一度行くぞ!これ以上敵が増えるのはまずい!」
「分かったよ!」
2人は再び同じ戦術を使おうとするが、クイーンは他の有象無象のスヴァールクスではなく知能を有している。
だからこそ、同じ手は通用しなかった。
ユウゴを警戒してる振りをしながら突如として攻撃に来たエマに向かい爪を振り下ろす。
「嘘......」
クイーンの突然の行動に驚いたエマは動きが鈍ってしまった。
「エマさん。ユウゴさんお2人ともお見事です。此度の戦果はあなた方が居てこそのものでしょう」
その時エマの前にルインが飛び出して、そのままクイーンの頭部を一気に切り落とした。
クイーンは頭部を切り落とされても身体は数秒の間動き続けたが、やがて力尽き地面に倒れた。
クイーンが倒れた事で周りの軍勢は統制を失い、組織的な行動をせずに逃げ出していった。
「逃げ出したのは、放っておきましょう!今は安全を確保したら、シタデレの元へ向かいましょう」
ーー
「ハァ......ハァ......なんだこいつ......今まで出会った中で1番強えな......おい、弓使いまだ動けるよな?」
「直ぐに救援は来ます。諦めずに時間を稼ぎましょうシタデレ!」
「ああ......何とか......な......そろそろ.....きついが......」
ゼータヘッグと対峙していたシタデレとモーデルは2人がかりでも圧倒されており敗北は時間の問題に思えた。
その時ゼータヘッグが何かに気づく。
「んん?クイーンの気配が消えたな......まさか......やられたのか......流石にこいつらに時間を掛けすぎたか......」
「命拾いしたなぁ......雑魚どもが我が主から帰還命令が来た。また会える時に強くなっているのを楽しみにしているからな......」
ゼータヘッグは高笑いしながら闇の中に消えていった。
「このやろう......待ちやがれ!」
「落ち着いて下さい。勇の私。深追いは禁物です。一度撤退しましょう!」
「クソが......今回だけは従ってやるわ......」
「シタデレ動けますか?」
「大丈夫だ......とりあえず......あいつらの所へ行こう......」
その後シタデレ達は何とか合流に成功して陣地まで帰還した。
ーー
カイマンの部屋にて
「おお!クイーン討伐に成功したのか、キュリアス、モーデルに良くやったと伝えておけ」
「ははっ!」
「それで、討伐したのは誰なのだ?私が直々に報奨を渡してやろう」
「カイマン様......それなのですが......」
「なんだ?どうしたと言うのだ」
「クイーンを討伐したのは皇太子殿下の連れて来た人間共だそうでして......」
「なんだと!?有り得ん!何かの間違いであろう!」
それを聞いたカイマンは激昂した。
「しかしモーデルがその様に言っておりまして......」
「それではいかんのだ!兄上を皇太子の座から下ろせぬではないか!」
「モーデルを今すぐここに呼べ!私が直接聞く!」
「承知致しました。すぐお伝えいたします」
ーー
ウラジオ星 アラデスクの執務室にて
アラデスクは窓の外から見えるスヴァールクスの本拠地ソラリス星を見つめていた。
「殿下!ギテオンの報告がきましたぞ!」
「遂に来たか。それで結果はどうなのだ?リッテン」
「はい。作戦は見事成功してギテオン星の奪還に成功した......との事です」
「そうか......一先ずは、喜ぶべきだろう。皆は無事なのか?」
「それが......リュウキ達は......他の戦士達を押し除けて見事にクイーンを討ち取った!との事です」
「そうか......やってくれたか......帰って来たら労ってやらねばならんな」
アラデスクは部下の手前平静を装い続けたが内心ではこれ以上ないほど喜んでいた。
ーー
「モーデル!読んだ理由は分かっているな!お前の報告についてだ!」
「カイマン様......報告に嘘偽りはございません。一体何か問題がございましたか?」
「うぐ......あ、兄上が連れて来た人間共の事だ!あいつらがクイーンを討伐したのは本当か!?」
「ご報告申し上げた通りです。人間達を主体とした皇太子殿下の援軍が単独でクイーンの巣に侵入して見事に討ち取ったのです」
「単独?単独だと!ならば軍令違反......ではないのか!?援軍の分際で勝手な行動を行うとは......それを追求して功を剥奪することも......」
「彼らには私が第4軍団長の権限でクイーン討伐の為、単独行動の許可を与えています。故に軍法上も問題ございません」
「なっ......そ、そんなこと......私は聞いてないぞ......」
「現地での指揮に関してはカイマン様は私に一任されると自ら最初に宣言しておられましたが?」
「うぐっ......もう良い!下がれっ!」
カイマンはバツが悪そうに後ろを向いた。
「......失礼致します」




