戦闘訓練2
ーーー数百年前、我々は広大な宇宙にて初めて文明と呼べる社会を築いた生命体を発見した。それは自らを人類と称する種族である。
彼らは母星である地球から宇宙に進出し幾度の危機と苦難を乗り越えて、不屈の精神と卓抜した団結力によって今日にはあらゆる星で地球とそう変わらない生活を送れる様にまで成長したが、その人類達に危機が訪れる。
我らと長年争うスヴァールクスのオロニアルが彼らの存在を知り攻撃目標に定めた。
我らエリディアンはそれを止めるべく当時の皇太子アラデスク率いる戦士達が救援に向かうも被害を完全に抑える事は出来なかった。
だが、数千年に渡って終わらない争いを続けてきた我らとスヴァールクスの間に人類という新たな種族も加わった事で動かなかった運命の歯車が動き出した。
人類から後に“解放者”と呼ばれる事になる戦士達が我らの星に到来したのである。
しかしながら、その時点では宇宙に進出したばかりの人類を下に見る風潮が強く、彼らの評判は良いものではなかったが、この到来が隠された歴史を暴き、永遠に続くとも思われた争いを終焉に導く事になるのをまだ誰も知らなかった。
ーーーリッテン ソイルドの著書 「宇宙の解放者」 序章より
ーーーイルメグ星 メギト訓練学校
俺達はルインに教えられながら短距離ワープの技術であるブリンクの訓練をしていた。
「さぁもう一度やってみましょう。今度は腕ではありません。足の方に意識を向けて力を溜めて下さい。そうして自分の体が軽くなったと感じたならばその力を足から全身に移動させると同時に体を目的地の方へ向けるのです!」
「ハァハァ…ブリンク.....何度やっても上手く移動できない....」
「気を落とす事はありませんよ。この移動術はエリディアンでも使いこなせる者はそう多くありません。偵察兵などの兵種に属さない限りは使えなくても問題はありません」
ブリンクが成功しない事に悔しがるシリカにルインが声を掛けた。
「兵種?兵種ってどんな種類があるんですか?」
「ああ、説明していませんでしたね。兵種はその名の通り兵の役割を分担してそれぞれの専門性に特化した兵士を作る為に分けたものです。休憩がてら少し話しましょうか」
「まずは突撃兵。最も人数の多い兵種です。所謂歩兵と言えば分かりやすいでしょう。敵陣に直接乗り込み制圧する役割を持ちます。カラシコフ隊長の兵種ですね」
「そして前述の偵察兵。元々私が属している兵種でもあります。敵陣の情報収集等が主な任務で、単独での惑星潜入等が多いのでブリンクに長けた者がこの兵種に選ばれます」
「次に砲兵と弓兵。砲兵は突撃兵が敵陣を制圧する直前にその陣を強力な火砲で可能な限り叩いて援護を行います。マグナ砲という戦艦から惑星に向けて発射する巨大で高火力なレーザービームを撃つ装備などがあります。弓兵は突撃兵の支援を更に前線で行うと言った感じですね」
「最後に航空兵。航空兵は戦艦やザメルの様な小型の戦闘機などで空や上空での戦闘を専門とします。1番幅広い分野の職種かもしれませんね。操縦や整備、ブラックホールなどの観測任務に惑星の周回軌道などを加味した航行ルートの策定など兵種の中でも色んな分野がありますね」
「主な物はこの4つですね。他にも工兵や補給兵などがあります。そして航空兵の様に兵種の中でも細分化されている物もありますよ。そして我々アラデスク殿下や皇帝陛下などの親衛隊は騎士の称号を与えられます。なのでまた特別ですね。またタイミングがあればお話ししましょう」
「色々あるんですね。教えていただきありがとうございます。よし!もう一度頑張ってみますね!」
「ええ。その心意気が大切です。お付き合いいたしますとも」
そうして再び訓練を行い遂に成功の時が来た。
いつもよりも明らかに体が軽く感じこれは成功するだろうという確信と共に力を放出した。
視界が一瞬にして白く跳ねたかと思えば、次の瞬間には5メートル先の地面に足が着いていた。
「よし!成功したぜ!」
「うわっブリンクした後少しふらふらするねー。これも慣れなきゃ」
「やった!行けた!ようやく出来た!」
「これは凄いな。使った後は頭がクラクラする。これにも慣れていかなくてはな」
どうにか皆ブリンク自体は成功する事が出来た。これは大きな一歩と言えるだろう。
「皆さん。成功する事が出来ましたね。そしたら先程もご説明した兵種を決める事にしたいと思います」
「兵種、ですか」
「はい今まで皆さんをブリンクの訓練に集中して貰ったのはそれぞれの適正を見分ける為の物でした。リッテン博士どうですか?結果は」
「うむ。問題ない。リュウキ。ロドメル。両名は突撃兵。シリカは弓兵。そしてユウゴ加えてエマは偵察兵だ」
「無事に結果も出ましたね。今までは戦士としての基礎訓練と言った感じでした。ここから更に兵種毎の専門に特化した訓練を行なっていきますので、楽しみにしていて下さいね。しかし皆さんの上達は目を見張るものがあります。訓練もあと少しです戦士になり目的を達成できる日はそう遠くないですよ」




