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Space Liberator  作者: ツインタニア
解放の夜明け

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思いもよらぬ選択

扉を開けた先には正に玉座と呼べる巨大な椅子がありそこへ至るまでの道のりには10人の騎士が直立不動に佇んでいた。


その姿に俺達はその光景にとても圧倒されたが、意を決して少しずつ前へ進み始め玉座の前に並んだ。

そして直ぐにあの時と同じ蒼い輝きを放つ甲冑に身を包んだ皇太子アラデスクが現れた。

途端に騎士達は跪き俺達も慌てて同じように跪いた。


「ふふっ、緊張しているのかリュウキよ?そう固くなる必要はないぞ我が友よ」


その厳格な雰囲気を破ったのはアラデスクの言葉だった。彼は玉座から降りて皇太子とは思えないフレンドリーな態度で話しかけてきた。


「皆も顔を上げよ。そう簡単に頭を下げられては私の気も張り詰めて疲れてしまう」


そうして全員が顔を上げていく中カラシコフが声を上げた。


「ですが殿下そのように軽い態度を見せてしまえば、皇太子としての威厳に欠けます。それどころかただでさえ最近は殿下の弟君カイマン様を担ぎ出そうとする動きも見えてきているのです。もう少し次期皇帝としての自覚と言いますか。威厳と言いますか...」


「分かっておるわ。説教は後で聞いてやる。今は新たな戦士を歓迎する時であろう」


「全く私は何処で殿下の教育を間違えてしまったのだ....」


カラシコフは小声で呟いた後も何か言いたげな顔をしていたが渋々引き下がったようだった。


「久しぶりではないか。息災で合ったか?我が友であるお前とその友人達を客として、そして共に戦う仲間として歓迎しよう」


「は...はい!アラデスク皇太子もお元気そうでなによりです!」


「そう固くなる必要はない。武器を持たずとも妹を助ける為に1人死地に赴いた事。私はお前を友人として戦士として認めている。故に皇太子としてではなく1人の友としてお前と関わり合いたい。我の事はアラデスクと呼ぶがいい」


と言いながら彼は手を差し出してきた。


「え?いいんですか?」


正直周りの雰囲気からして敬語を着けずには呼びづらいが本人から言われたので覚悟を決める事にした。


「分かったアラデスク。共に戦う仲間としてこれから宜しく頼む」


そう言って俺は差し出された手を握り彼と握手をした。


「さてカラシコフとルインは早速リュウキ達を訓練施設を案内してやってくれ。私は少し父の所へ行って来る。リッテンは共に来てくれ。その他の者は解散してくれて構わない」


「「ははっ!」」





ーー


「さて、それではリッテンよ。着いて来てくれ」



「承知...」



「...皇太子殿下、此度は一体何用で陛下の元へ?」


「...仔細は言われていない。大方いつも通りの説教であろう」


「彼らの件は陛下にはお伝えしているのですか?」


「伝えた所で父は許可せんだろう。なに、自分で言うのもアレだが私は上に立つ者として多くの人間を見てきた。大半は私の機嫌取りをする下心の見えた者ばかりだがな。だがそのおかげで他人の本性を見れる目を手に入れたのだよ。そしてリュウキ達は明確な目的を持ってここに来ているのだ。その力は必ずや我らの力となろう」


「失礼ながら殿下の見る目を疑ってはおりませんが、陛下は現皇后様との間にカイマン様が生まれてから殿下の事を疎ましく思っております。足を掬われぬようお気をつけ下さいませ」


「ああ、疎ましく思われようとエリディアンの為になるのであれば何だってやってみせるさ、それが玉座に座る資格のある者という事だ」 


私は内心そう言う事ではないと思ったが殿下にはこれ以上何も言うことはできなかった。


無論殿下を守る為ならば命を捨てる覚悟だがそもそも我ら殿下の親衛隊も一つに団結していると言える程でもない。


何より私にはルインの様な高速移動による強さもカラシコフ親衛隊長の様な熟練の剣捌きがあるわけでもなく、なぜ親衛隊の騎士に選ばれたのか未だに自分でもよく分かっていないので先行きは不安な気持ちになる。


やがて皇帝との謁見室に辿り着き私は門番へ扉を開けるよう促す。


「アラデスク皇太子殿下だ。陛下に取り次いでくれ」


「ははっ!」


そうして扉が開き先程の皇太子殿下の謁見室に負けず劣らずの豪華な部屋が前に現れる。


程なくして皇太子殿下の父である現皇帝アルカイド ベルダムが登場すると私と殿下は跪いた。


「ご無沙汰しております。父上、本日は如何いたしましたか?」


「アラデスクよ。お前が何やら人間を連れてきたと聞いた故その真偽を確かめるべく呼び出したのだ。

お前は一体何を考えているのだ?」


「ははっ、我々は有史以来スヴァールクスを除いて高度な知的生命体との関わりを持ちませんでした。此度初めて人類と接触し盟約を交わして共に戦う事を誓いました」


「しかしオロニアルの軍勢は非常に強大です。このままでは我らも彼ら人類も奴に平伏す事になるでしょう。その為には彼らと我らのお互いの良さを活用していくべきだと判断致しました」


「此度私が連れてきた5人は戦意は高く潜在能力も十分です。そして我の隣にいるリッテンは長年人類の保有するマインドエネルギーを我らの力で発現させて戦士にする研究を進めてきております。必ずや我らに利益を齎すものだと私が保証いたします」


その言葉に私はとても驚いた。確かに私は人類の持つマインドエネルギーに目をつけて彼らに我らの技術を提供して協力関係を結ぶべきだと提唱した事があった。


しかしエリディアンでは宇宙に進出したばかりの文明レベルの人類を下に見る論調が強く結局賛同を得る事は出来なかった。しかし自らの研究成果に間違いは無いと私は信じて研究を進めてきた。

それを披露する場を得る事が出来た事が分かると私は研究者として喜びを隠しきれない程嬉しかった。

しかしその為にはこの場をどうにか切り抜ける必要があるので今はまだ油断はできない。



「皇太子殿下ともあろう者が人類の如き下等な生物に我らの至高な文明に触れさせるとは、失礼を承知で言いますがとても皇太子に相応しい振る舞いとは言えませんな」


そう口を開いたのはカイマン皇子を次期皇帝に据えようとする一派の筆頭格とも言える宰相オーエン シグリアだった


この言葉に私は堪らず声を上げる。


「なっ!?シグリア宰相それは流石に殿下への侮辱ではないか!?」


「良いリッテンお前は黙っておれ」


「は、ははっ」


その論戦の最中に突如陛下が口を開いて私に問い掛ける。


「リッテンと言ったか、お前は自分の研究成果をアラデスクと共に成功させる自信を持っているのか?」


「ははっ!私の研究者生命を賭けて研究して参りました故。必ずや成功報告をお届け致します!」



「良かろう、ならば今後予定されている人類との共闘作戦に置いてお前の連れてきた5人が戦士として十分な戦果を上げなければアラデスク、お前ではなくカイマンを皇太子とする。」


その言葉が放たれた瞬間、玉座の間の空気が凍りついた。

騎士たちの鎧の金属音すら消え、重苦しい沈黙が流れる。


アラデスクはゆっくりと顔を上げ、父を見据えた。

その瞳には怒りも怯えもなく、ただ確固たる決意の光だけが宿っていた。


「……承知いたしました。父上。必ずや成功させてみせましょう。」


静かな声だった。しかしその言葉の奥には、帝の威圧をも押し返すような力強さがあった。


私は息を呑んだ。

殿下のその姿に、若き皇子ではなく“真の皇帝”の片鱗を見た気がした。


「――殿下!? あのような約束をしてしまい宜しいのですか!」


謁見の間を出ると、思わず声を荒げてしまった。

だが殿下は歩みを止めず、静かに言葉を返した。


「部下を信じられぬ君主が、民を導けるはずがない」


アラデスクは小さく呟く。


「は?殿下今何と仰いましたか?」


「お前は常に自分の研究を信じているな、リッテン。

ならば私はお前を信じよう。……部下を信じることが、主人の責任だ。」


「そしてお前は自分がなぜ親衛隊に選ばれたのかを疑問に思っていよう。私はお前の研究が私の目標に必要だと考えているからこそ選んだのだ」


そう言って振り返った殿下の横顔には、恐れも迷いもなかった。

私はその背中を見つめながら、心の奥で誓った。


――我が主の信頼を、決して裏切りはしない。


それが、凡庸な私が親衛隊に選ばれた唯一の理由なのかもしれない


















































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