イルメグへ
目を覚ますと、船内はまだ薄暗い照明のままだった。
「……もう朝か?今どの辺なんだろう」
声と共に、青白い光が弾けてザメルが現れた。
「今はイルメグまで、あと1時間程度のところですよ!」
「おはようございます!です!リュウキさん!いい朝ですね!と言いたいけど今はワープゲートの中なので綺麗な星は見えませんが」
「ザメルさん。おはよう」
突然出てきた事に若干驚きつつ返事をする。
「他の皆様はもう起きて朝食を食べていますよ!リュウキさんが最後です!」
「え?ホントに?皆は何処にいますか?」
「それでは、皆様の所にご案内しますね!」
そうして彼女と共に少し大きめの部屋へ向かうと既に皆揃っていた。
「みんなおはよう。遅れてごめんね」
「ちょっと遅いわよリュウキ。寝坊癖ようやく治ったと思ってたけど再発したのかしら?」
「ごめん。昨日少し寝付けなくてさ...」
シリカに小言を言われながら俺は席に着いた。
「さて。皆様揃いましたね。本機はもうまもなくイルメグ星の上空に到達いたします。これより着陸体制に入ります。到着後もルインさんが皆様の事を案内いたしますので彼女の指示に従ってくださいね!」
「あれ、ザメルさんはどうするんですか?」
「私は到着後は整備工場で運行後の点検がありますので一度お別れですね。ですが、私はルインさんの使用機体ですので、また会う機会はきっとありますよ!」
「そうかー、ザメルちゃんとはお別れなのかー。悲しいよ!ねえ?シリカちゃん」
「ルインさんと行動をすればまた会う機会もあるって言ってるから大丈夫だよ。エマ」
そうこうしているうちに窓にイルメグ星の様子が少しずつ見えてきた
「うお!すげえ俺達の街とは全然違うぜ。皆見てみろよ!」
「これは...とても興味深いな...」
ロドメルとユウゴは興奮した様子で窓の外を見つめていた。
「ふふっ、私も皆様を迎えに行った時人類の街を見ましたがやはり自分の住んでいる場所とは違った良さがありますよね」
「あ、今ちょうど高度3000メートルの地点まで来ましたね。そろそろ出る準備をしては如何でしょう?」
「あ、そうですね。2人とも街は降りてからゆっくり見ろよ。とりあえず降りる準備しようぜ」
そうして準備をしている内に遂にイルメグ星に着陸して操縦席からルインが出てきた
「はぁやっと着いた。久し振りにこんな長く運転したなぁ」
「ありがとうございます。俺達の為に」
「いえいえ。さぁ早く降りましょう!アラデスク皇太子が首を長くしてお待ちですよ」
そうして外への扉が開いた。
扉が開き降りようとした時、後ろからザメルに声を掛けられた。
「リュウキさん。私はリュウキさん達のことは詳しく知りません。ですが、何か強い意志を持ってここへ来た事は感じていました」
「なので、アンドロイドの私が言うのはおかしいかもしれませんが、敢えて言わせていただきます。皆様の旅路にディザイア様の加護が在らんことを。これはエリディアンの他人の無事を願う時に言うおまじないみたいなものです」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が温かくなった。機械であるはずの彼女の言葉が、誰よりも人間らしく感じた。
「ありがとうございます。ザメルさんにもディザイア様の加護が在らんことを」
そう返すと彼女は軽く微笑みながら消えていった。
そうして俺たちはイルメグ星に初めて降り立った。
窓から見えていた景色も凄かったが改めて地上から見てみるとその景色に圧倒された。
空には淡い紫の雲が流れ、街全体が金属と光の織り成す巨大な都市だった。
浮遊する輸送艇が行き交い、建造物の間に透明な通路が伸びている。
――人類の街とは、根本から違う世界だ。
景色に見惚れていると見覚えのある騎士が近づいてきた。
「さて。ようこそいらっしゃいました、リュウキ殿。そして皆様。私の名はカラシコフ・ジホスゲン――アラデスク殿下にお仕えする者です。
このイルメグ宮殿へようこそ。殿下が、あなた方の到着を心よりお待ちしておられます。」
「カラシコフさん!お久しぶりです」
「リュウキ殿もお元気そうで何よりですな」
他愛もない会話をしながら宮殿内を移動していた。
流石はエリディアンの宮殿と言うべきか 床には白金のような金属が敷き詰められ、壁には星雲を模した装飾が輝いていた。
内心凄い所に来たなと思いながら皆を見ると皆も圧倒されているようでまじまじと飾られている装飾品や調度品を見ていた。
そうしている内に一際目立つ巨大な扉が目の前に現れた。
「さてこちらが謁見室で御座います。ご準備はよろしいですか?」
「ふう。相手は皇太子なのだろう?少し緊張するね」
何時も冷静なユウゴがそう呟く。すると周りの皆も不安を感じているようだった。その雰囲気を感じとったのか、ルインが言葉を発した。
「そう不安に思う必要はありません。殿下は皇族には珍しく身分の差を気にしておりません。あなた方と会う事を楽しみにしておられますのでいつも通りの態度で大丈夫ですよ」
そう言われて少し心が楽になると同時に扉が開かれた。




