希望の灯火
忙しくて投稿遅れちゃいました。
会談当日に俺は空港で迎えに来たアトマスさんの車の前にいた。
「やあ。クドウ君久しぶりだね。退院してから身体は大丈夫かい?」
「はい!大丈夫です」
「そうか、なら良かった。さあ遠慮せず乗ってくれ」
「失礼します」
そうして車は会談場所の大統領官邸に向け出発した。車内では他愛ない話をして到着を待っていた。
「どうだい?やっぱり緊張してる?」
「そうですね。人類代表って考えると少し...」
「そうだね。確かに君は人類の代表の1人と見られるかもしれないが、君が主だって話したりすることはないはずだからそこは安心して会議が終わるまで堂々と座っていればいいんだよ」
そうして暫くして
「お、見えてきた。あれが今回の会場だよ。着いたら案内の人が居るからその人に着いて行きなさい」
「はい!ありがとうございました」
そうして言われた通りに控室に向かう。
しばらくして会談の時刻になり部屋へ案内される。
そこで指定された席へ着席していると続々と宇宙政府側、エリディアン側の代表団が入ってきた。宇宙政府側はオルレアン大統領を初めてとして、テレビで見たことのある大臣達が入室してくる。
エリディアン側はあの日に出会ったアラデスクやその部下であるカラシコフ、ルインの他にも見た事のある人物が何人かいた。最初に口を開いたのはオルレアン大統領だった。
「まずは此度のダラスでのスヴァールクス襲撃への助力、真に感謝いたします。聞けばアラデスク皇太子殿下自ら剣を振るい人々を救っていただいたと」
「いえ、人類と手を取り合うために我らは来たのです。であれば同盟相手を救うのは当然であります故」
「事前に通告させて頂きました通りそちらの同盟の提案を我々宇宙政府は受け入れさせていただきます。しかし我らはスヴァールクスという未知の存在を何も知らない。ですのでそういったことで今後緊密に協力して行きたいと考えたいます」
「オルレアン大統領。その返事を聞けて嬉しく思います。我らも出来る限りの援助をさせていただくつもりです」
ーー
そうして、会談は終わりの時間になり俺も肩の荷が降りた気分で控室に戻って暫くすると。1人の見覚えのあるエリディアンが入ってきた。
「失礼いたします。こちらにクドウ リュウキ様は居られますでしょうか?」
声の方向に目を向けるとそこには白銀の甲冑に身を包む女性エリディアン騎士が立っていた。その甲冑は流麗な曲線を描き、光を受けるたびに月光のような輝きを放つ。
口元しか見えない兜はミステリアスな雰囲気を漂わせていた。その立ち姿は毅然としており、一目で戦場を生き抜いてきた者の気迫を感じさせるが、面差しには柔らかさもあり、澄んだ声は落ち着きと温かみを帯びている
「はい!私です」
「クドウ様。お久しぶりでございます。と言っても名乗るのは初めてで御座いますね。私の名はルイン、皇太子殿下の親衛隊騎士でございます。以後お見知り置きを」
「はい!よろしくお願いします」
「それで本題なのですが我が主人であるアラデスクが貴方にお会いしたいと言っておりまして。我らの控室にご足労願えないでしょうか?」
「アラデスクさんが?大丈夫です。行きます!助けて貰ったお礼もしたいので」
「ありがとうございます。それではこちらへ」
そうしてルインに連れられ彼らの控室に入ると直ぐに声を掛けられた。
「おお!リュウキ来てくれたか!無事だったとは聞いて安心していたがやはりこの目で確かめたくてな!」
「アラデスク皇太子もお元気そうで何よりです。あの時は助けていただき本当にありがとうございました!」
「いや。あの時にシオを助ける事ができなかった事は今でも悔やんでおる。護るべき民を護れぬなど戦士として失格であった」
「いえ...シオの事は確かに残念でした...ですが助けて頂いた事実は変わりません!」
俺は少しだけ語尾を強めて言った
「シオは...シオの事はとても残念です。...ですが悲しんでばかりではいられません!前を向いてシオの分も精一杯生きて行きます!」
そう言った後アラデスクは少し黙り暫くして口を開いた。
「そう、私が君を呼んだのはそのシオの事なのだ。それでは本題に入りたいと思う。結論から言わせてもらおう。シオはまだ生きている」
「え?シオが...生きてる....ですか?どういう事ですか?」
「実は我々があの時君と出会ったのは偶然ではない。強い力に引き寄せられて来たのだよ」
「強い...力?」
「そう、その力の名はマインドエネルギーと言う。それは我々エリディアンが保有している力で。スヴァールクスにはない力だ。これのおかげで我々エリディアンは数で劣りながらも互角に奴らと渡り合えたのだ。だが君達人間も僅かながらマインドエネルギーを有していてね。それを知った奴らは自身に人類を取り込むために今回君たちを襲ったんだ」
「そしてシオは常人よりも遥かに大きな力を有していた。だから攫われたのだろう。ただ取り込むのではなく、意志を宿した兵士としてだ。奴らはあの戦いの前にギテオンと言う惑星も襲ったが余り良い適合者が居なかったのだろう」
俺は突然の話に頭が追いつかない。でも胸の奥が熱くなる。シオを助けたい、それだけははっきりしていた。
「で、でもその話ならシオはスヴァールクスに取り込まれたっていう事じゃ?......」
「......スヴァールクスの指揮者オロニアルは以前からマインドエネルギーを有している自分より強大な存在を手に入れる事を目標にしていた。だからこそ人間を襲ったのだろうそしてシオという存在を見つけたんだ。いずれシオはスヴァールクスの戦士として改造されいずれ奴らの頂点に君臨する存在となろう」
「....そんな...シオがあんな化け物に?」
「君とシオは兄妹で血縁があるだろう。故に君にもシオ程ではないが常人よりも遥かに強い力がある。だから協力して欲しいのだ。シオが奴らに取り込まれる前に、あれ程の力であれば直ぐに完全に取り込む事は不可能だ。時間はある」
俺の気持ちは既に決まっていた。必ず助けるという思いを強く持った。
「やります!やらせてください!」
「そう言ってくれると思っていたぞリュウキよ。ならばまた連絡を入れる。今は体を休めておくと良い」
「はい!失礼します」
俺は失われたはずの希望を取り戻し帰路に着いた。




