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呪いと祝福の子らは女神の掌で踊る〜南からの使者〜  作者: 樹弦


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セシリアの勧誘

 セシリアの訪問は妹のみとの話に留まらず、そこにいたジュディスにも積極的にアプローチが始まった。


「私としては高等部会長を第八王子に任せて中等部会長はジュディスさんにお願いしたいのよね」


「えっ?」


 レイとジュディスは顔を見合わす。


「そうなると…王立学院規則そのものを変えないといけないと思うよ。王家の者と羽化の守を務めた者は生徒会役員に立候補も推薦もしてはいけないことになってるから…」


「もちろん、その規則を変えるために署名を集めているところよ。だって時代錯誤じゃない?昔は政治的軍事的にもその影響を避ける意味合いもあったのかもしれないけど…だって、あなたたち、ここから独立した軍隊を作ろうとなどとは思わないでしょ?」


 セシリアの言葉にジュディスはにっこり笑う。


「軍隊を作ろうとは思わないが、将来的にも関わりたい優秀な人材には私もアプローチはしてるよ?剣を捧げてもらった」


 セシリアは驚いた顔をした。ジュディスはアマロックの指導のもと、食後の鍛錬を始めた二人を見る。ジュディスの視線にセシリアはまさかと思ったがレイのため息が聞こえた。


「ウォード先生もブラッドウッド先生もジュディスの挑発にまんまと引っ掛かって剣の勝負に挑むからだよ…勝てる訳ないのにさ」


「えっ?剣の勝負!?剣を捧げるってもっとこう…ロマンチックなものじゃないの?」


 セシリアの想像したのは騎士が女性に敬愛を表す意味でのそれだった。


「ジュディスの場合は全然違うね。剣を交えて最終的には相手の首筋に剣を突き付けて力の差を見せつける。見ての通りこんな小娘にこてんぱんにやられるのは実に屈辱的だと思うよ…」


「想像がつかないわ…」


「早く剣が振りたいよ。左腕が重くてやってられない」


 ジュディスがやけに袖の広がった服を着ているとは思ったが服をめくった左腕にセシリアはギョッとした。赤い実が三つ膨らんだ蔦が腕に絡まっている。


「詳しくは言えないが、私やレイはこの世界の危機を避ける為の重要な任務を遂行中なんだ…だからしょっちゅうこんな風にもなるし任務で不在にもなるだろうしで正直なところ、生徒会まで運営できる自信はない…かな」


 セシリアはガッカリしたが、確かに不在の多いのは困る。


「そう…なのね。残念だけど、不可能な理由は理解したわ。でも今年こそは行方不明にならずに学院祭には絶対に参加してね。せっかく王子と羽化の守のいる盛大な学院祭になるはずが、去年はとてもそんな気分にはなれなくて、まるでお葬式みたいな雰囲気になっちゃったんだから」


「あぁ…その点については本当にごめんね。悪かったよ」


 レイは謝罪する。


「でも今日は話せて良かったわ。二人がみんなに人気の訳がよく分かったから」


 ジュディスは首を傾げる。レイはそんなジュディスの頭を撫でて笑った。


「とっても二人が仲良しで羨ましくなっちゃったわ。私はずっと待っていたんだけど、もう自分から行こうかしら…生徒会の外聞を気にしているうちに身動き取れなくなっちゃったのよね」


 ジュディスはセシリアの言葉になるほどと頷いた。


「セオは疎そうだなぁ…一度押し倒してみたらどうだ?」


「ジュディス…それをお勧めするのは人として、どうかと思うよ?」


「それって要するに自分から相手にぶつかってみるってことよね?」


 セシリアは真面目な顔をして考え込んでいる。


「いや、ジュディスの言葉をそんな真剣に考慮しなくても大丈夫だよ?それに多分…セオだって君のことは気になってると思うし」


 レイに指摘されてセシリアは驚いたように顔を上げ初めて動揺を見せた。レイはその直後にブリジットに呼ばれて席を外す。二人きりになったセシリアはジュディスに尋ねた。


「ねぇ、第八王子を…好きになったのっていつ?第一印象は最悪だったのに、どうして?」


 いつだったのかとジュディスは考える。


「最初…この広い屋敷にレイはたった一人で住んでいたんだ…誰とも深く関わらず…がらんとしてて寒かった。そのときは羽化の守の役目が終わったら、それで終わりにしようと思ってた…」


 ジュディスは微笑む。近くで見てもよくできた人形のように美しい、と思いながらセシリアは続きを待つ。


「でも…私たちが…行方不明になる直前にレイが大怪我をして、失うかもしれないと思ったら耐えられなかった。そのとき気付いたんだ。それなのに、ちゃんと口に出して伝えたのはつい最近で。剣ばかり振るって生きてきたから、そういう女っぽいことをするのは…実は苦手なんだ…」


 セシリアはジュディスの素顔を見た気がした。奇跡の噂だけが一人歩きしていると思った。相手に好きだと伝えるのが苦手な自分と同じ一人の少女がそこにはいた。


「しかも…勇気を出して伝えたら、言葉にしなくても、それはいつも感じてるし、ちゃんと伝わってるって…レイが言うんだ。レイには…いつも驚かされるよ」


 照れたように笑ってジュディスは話を切り上げる。


「セオは…ちょっと危なっかしくて放っておけないところがあるからなぁ。生徒会長みたいにしっかりした人が側にいるのがいいんだと思うよ」


 ジュディスはセシリアを見て美しい笑みを浮かべた。

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