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団欒

朧げな視界を時折、影が遮る。

風が凪いでおり、額に冷えた感触と人肌を感じ

気持ち良さを覚えた。


心地良さの最中で眼を閉じた瞬間、男の脳裏に夢の記憶が舞い戻り安寧を食い破ってきた。暗い海底のような遺跡に鎮座する門。その深奥から這い出る主の記憶に男は心と脳を凌辱され、闇に肉体諸共喰い尽くされると感じた。その瞬間、男は恐怖で飛び起きた。


暫し男は激しく動悸したが、呼吸に専念して落ち着きを取り戻した。目線を配った先にある壁を形成する木の枝の隙間から漏れ出る光から今が日中であり、植物を組み合わせた小屋に自分が寝かされていたと知った。


そして、体を触り肉体の無事を確認しようとして違和感を覚えた。左手の肘から手にかけて自由が効かず、強張りを感じる。しかし、左手には編まれた布とそれを固定する麻縄で縛られており容易に視認が出来ない状態であった。男は不安に駆られそれを取り外そうと試みた瞬間、死角から息を呑む声が聞こえた。


男は後ろを振り向くと小屋の隅にあたる部分に少女が蹲っているのが見えた。褐色の肌に黒い髪は長髪であり、男の左手に巻かれたベージュの布で出来たワンピースような服を纏っている彼女は装飾品を纏う手に布を握りしめ震えていたが、その大きい二対の眼は男の動きを見逃すまいという野生動物さながらの警戒心を宿しつつ、一切の瞬きを拒否して男を見つめていた。


男は警戒を解いてもらいたい気持ちで声をかけようと少女の方向へ身じろぎした瞬間、顔に冷たい布の感触とべちゃという音を聞いた。そして、投げつけらた濡れた布が重力によって男の顔から剥がれ落ちる前に少女が風の如く、小屋の出口に消え去るのを感じた。取り残された男は一抹の不安と寂しさを覚えつつ、少女であろう声が外で叫ぶのが聞こえた。


手持ち無沙汰の男は立ち上がって小屋の外へ出てみようとしたが、それは許されていない事を悟った。左手を固定しているあさ麻縄のさらに太いものが小屋の屋根を支える中央の柱に結えつけられている。男は外に出ることを諦め座り直した。すると、誰かが会話する声が聞こえて小屋に近づいてくるのを感じ、男は身構えた。


現れたのは例の原住民のリーダーだった。最初に会った頃の印象とは変わって少しやつれているようだった。リーダーは入って来るなり、矢継ぎ早に男の体を触り状態を確かめていった。その際、筋骨隆々のリーダーに弄られている最中、男は居た堪れない気持ちになり目のやり場に困っていると例の小動物のような少女が戸口に身を隠すようにこちらを見ている事に気付いた。


その視線を受けてリーダーも気付き、戸口の方へ振り返り大声を上げた。その声に少女は驚いて逃げ出し、男も吃驚して肩を竦めてしまった。そして、腹の音が鳴った。このような訳の分からない状況下でも生きたいと願う自身の肉体を男は呪い、恥ずかしく自身に呆れた。


それを聞いたリーダーは朗らかに笑い、労うように男の肩を叩きうなづく仕草を見せた。その笑みを見て、男はリーダーの顔に浮かぶやつれが和らいだように感じた。リーダーが何か男に声をかけて立ち上がり、小屋の外へ出ていく。


たいした時間も経たずにリーダーは壺のような物を抱えて小屋に戻り、戸口の前に立って何かをせき立てるように外へ向かって声を掛けた。すると、先程の小動物のような少女が木で出来た盆を抱えて遠慮がちに入ってきた。そして、盆を男の前に置いたと同時にリーダーの丸太のような足の後ろに隠れて此方を窺っている。リーダーは頭を掻きつつ呆れた様に抵抗する彼女を前に押し出して自分と一緒に盆の前へ座らした。


盆には大小の皿があり、魚の丸焼きや蒸した肉をほぐしたもの、果物などが満載であった。男は涎が出そうになるのを我慢していたが、リーダーが魚を手にして男の手を取り勧めるジェスチャーを見て我慢をやめた。かぶりついたが一度、手を出すと止まらなくなり、喉が詰まってリーダーが持ってきた水瓶であった壺の水を勧められるまで食べ続けた。男は人心地がついて食べる手を休めた時、漸く2人の原住民が男の食べっぷりに呆気に取られている姿を見て取った。男が気恥ずかしくなった束の間、リーダーの豪快な笑いにつられて少女もはにかむようように笑い、男も不思議とこの島に来て初めて笑った。


リーダーは再度、男に食事を勧めて三人は一緒に食卓を囲んだ。

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