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大戦争準備②

アビスが魔術に特化し過ぎた異端のエルフであるように、かつて魔王を屠った勇者パーティーには、異端者が勢揃いしていた。


例えば、竜族出身のデニスであれば、耐久に特化した異端の竜人であるし、パラディスであれば呪いに特化した異端のドワーフであった。


アビスは自他共に認める世界最強の魔術師なのだが、アビスの魔法を一撃程度であればデニスは耐えきる事が出来るし、パラディスに至っては術祖返しによって、命と引き換えではあるものの、アビスですら殺す事が出来た。


ニーズ・ヘッグが木陰の腕で眠りに落ちた事や、戦闘跡地が死の大地と呼ばれるようになったのは、パラディスが持つスキルを孫のドワーフも持っていた事が少なからず関係していた。


Exスキル 絶死。命の灯火が消える時、対象を絶対的な死に誘う。


地面の中で穴を掘り、もぐらのような生活をしているドワーフが、地面の中とはいえどの種族からも脅かされずに生息できているのは、このスキルが交渉に絶大な影響を持つからだった。


ドワーフには力も魔力も知恵も知識もない。それでも生存能力だけはどの種族よりも担保されていた。


「こふっ。わしは知恵も知識も携えておるがの」


その聡明さと威厳に憧れたアビスが、自身の口調を真似ている事に、パラディスは少なからず誇りも持っていた。


アビスはパラディスにとって今も生意気な糞ガキなのだが、かつてはもっと生意気なクソガキだった。


アレがずっと歳上というのが、今でも信じられない思いだ。


「なんだいいきなり。ボケでも始まったのかい?」

「こふっ。誰かにドワーフを馬鹿にされた気がしての」

「それは老いだよパラディス。じじいになると被害妄想が強くなるものだからね」


「こふっ。相も変わらず口が悪い」

「君のように臭くはないだろ?」

「こふっ。わしが死ぬ時は、対象にお主も巻き込んでおくからの」


「その時はアビスも。彼女だけ安全圏はズルいからね」

「こふっ。わしの命を保険扱いしたのじゃからそれは当然じゃよ。宣言もしてあるしの」


「それは助かる」

「こふっ。助からなさそうじゃがの」


パラディスはアビスが言っていた世界最強の武器と防具をじっと見た。

一目で分かる。これは世界最強の武器と防具で、最高に呪われていると。


どれ程耐久力を持っていても、こんなものを装備したら死ぬのではないだろうか。


死なない存在がいるとするなら、それこそ魔王ただ一人か。


「圧巻ではあるね」

「こふっ。デニスよ。いかに惚れた女のためとはいえ、これを装備する勇気がお主にあるのかえ?」

「惚れた女が用意した服を着ない男が、世の中にいるのかい?」

「こふっこふっ」


デニスの返答にパラディスは笑う。


デニスが失敗したから、パラディスは巻き添えを喰らって死ぬ事になる。


そうなれば、魔王の武器防具は死を迎えるだろうし、あわよくば魔王自身にも絶死によるスキル判定が届くかもしれない。


ただ、例え魔王が死んだとしても、絶死という交渉スキルを失ったドワーフには、未来がない可能性があった。


「かといって、友人の覚悟に水を差すのは漢ではないし、漢が廃るというものじゃな」

「また、独り言かい?」


「こふっ。じじい一人消えて無くなる種族であれば、どのみち未来はないと思っただけじゃ」


「それは無駄な心配だよ。最近の若者はと嘆く輩は、等しく若者達に老害として煙たがられているだけだからね。僕や君がいなくなった所で世界は変わらない。寧ろ生きやすくなったとさえ思われるよ」


「こふっ。それはそれで寂しいの」

「長く生きたじじいの末路はそんなものだよ。僕や君は過去の栄光が凄い分、尋常じゃないくらいに煙いだろうからね。アビスのように見た目の愛嬌者ないしね」


「こふっ。なんだかわし、死にたくなってきたわい」

「そうか。僕はまだまだ生きる予定だから残念だよ」

「お主の性格の悪さ、まったくもって変わらんな」


失敗したとしても、絶死の効果がデニスに及ばないよう努力してやろうかと、パラディスは考えていたが、容赦なく殺してしまっても大丈夫だなと、考えを改めた。


「では、姫が用意した禍々しいドレスを着込むとするかな」


デニスは魔王専用装備であるオーバーロードにでを触れた。



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