魔王が魔王となった日
とても懐かしい声が頭の奥底で響いた。
機械的なレベルアップの声とは違う、感情が少し乗った声。
ただ私は、この声を聞きたいとまったくもって思わなかった。
「何の用?」
『そう構えずとも、とって食べたりはしませんよ』
「なら、帰ってください」
シーちゃんが話し掛けてくる時は、大抵録な事が起きない。
魔族の大虐殺とか人族の大虐殺は元辿れば全部、シーちゃんが悪いからだ。
最初はいなくなって寂しいと思った事もあったけど、今はアビスやエルがいるから、シーちゃんという話し相手は必要なかった。
面接の時は嘘八百で自己アピールしまくるけど、会社に入ってしまえば面接官となんて、挨拶すら交わさない赤の他人となる。
シーちゃんは私にとってそんな存在だった。
『他責思考は良くありませんよ。後、木陰ちゃんは、相変わらず酷い思考をしていますね』
「心を読むなんて酷い」
『口から出ていました』
「ま?」
『まです』
「そっか。じゃあそういう事なので帰ってください」
『何やら随分と嫌われてしまったようで、悲しい限りです』
「ほな、ぶぶ漬けでも食べはりますか?」
直接言っても、全然帰ってくれる様子がないので、今度は遠回しに言ってみる事にした。
私は京都人じゃないから、この使い方で合ってるかは知らないけど。
『木陰ちゃんはそんな物すら作れなさそうです』
「帰れ」
『はいはい帰ります。では木陰ちゃん、最後まで楽しませてくださいね』
不穏な言葉を残して念話が消え、シーちゃんの気配が無くなる。
しかし、本当に何しに来たんだ?あの人。
人なのかどうかも分からないけど…。
「木陰、お主、アイルを救えなくなったぞ」
ただ、私の中にできた?マークは、アビスの一言で解決する事となった。
シーちゃんはやはり、録な事をしなかったのである。
「自身を鑑定してみるとよい。世界は木陰を殺す気じゃ」
森山木陰
魔王、世界を滅ぼす者
レベル99
HP8810000
MP281000
TP8810000
力2810000
魔力281000
素早さ2810000
防御力2181000
器用さ81000
スキル
魔衝撃レベル7
魔炎撃レベル7
魔氷撃レベル7
魔風撃レベル7
魔雷撃レベル7
魔振撃レベル7
魔導砲レベル6
超弱行動レベル5
拘束レベル7
万里眼レベル7
召喚レベル6
闇の衣レベル8
闇の波動レベル8
闇の鼓動レベル8
絶対王政レベル8
パッシブスキル
威圧レベル8
指揮レベル5
抑制レベル6
精神レベル8
支配レベル6
奇跡レベル6
言霊レベル6
怠惰レベル8
自動回復レベル6
超再生レベル6
EXスキル
魔王
素質
黒色
異才
滅ぼす者
チートスキル
阻害
変身
転移
鑑定
持ち物
チーターズブック
まほろばの剣
英血の腕輪
アビスの首飾り
「は?」
鑑定した結果、思わず変な声が出た。
物凄く強い。
ちょっと強過ぎないかってレベル。
レベル99になった後で鑑定した時は、早熟型の典型と呼べるくらい、ステータスに伸びがなかったというのに…。
特にHPが底なし過ぎる。
てかこれ、ニーズヘッグ君が持っていた役割、私に移ってませんか?
滅ぼす者って、不穏が過ぎる。
スキル滅ぼす者、鑑定。
滅ぼす者。あらゆるモノを滅ぼす者に与えられるスキル兼称号。
あらゆるモノから敵視され、敵視された分ステータスが上昇する。
精神汚染レベル9精神破壊レベル9精神操作レベル9精神崩壊レベル9が強制執行され、その場にいるだけで種族は滅びに向かう。
世界の何処にいても、世界の敵として位置を補足され、世界に結束のスキルを付与させる。
取得条件。100万の生命を奪い、100万の土地を奪い、100万の経験値を奪った末、神からの祝福を得る。
「なにこれ?」
あらゆる所がぶっ壊れてる。
てか、シーちゃんやっぱ神じゃん。
神なら神らしくちゃんと祝福しろ。こんなのただの呪いじゃん。
「さて、ここでお別れじゃの木陰」
「え?アビスも敵になるの?」
それは本当に勘弁して欲しい。
アビスが強いって言うのもそうだけど、純粋に嫌だ。戦いたくない。
生意気な妹みたいで、私はアビスが結構好きなのだ。
「子供達が木陰に殺されるとなれば、妾とて杖を抜く事になる」
「殺さないよ?」
エルフの子達は私も大好きだし、エルフレアは私の第二の故郷みたいなもの。
寧ろ何かがあれば、全力で護ろうとさえ思う。
「スキルが、それを許すまい」
「…だね」
アビスの言葉は合っていた。
阻害を使って、滅ぼす者が発動しないよう、邪魔しているのだが、完全に阻害する事はできなかった。
神から貰ったスキルは、神から与えられたスキルには勝てない。
つまり私は、エルフの子達を護るために、ここを離れないといけない。
「木陰、お主と過ごした日々は中々有意義であったぞ」
「今生の別れみたいなの、やめて欲しいんですけど…」
普通に寂しい。
ぎゅっと抱きついてくるアビスの頭を撫でながら、私は少しだけ天を仰いだ。
輝く太陽がこの時ばかりは恨めしく思った。




