激闘⑤
ニーズヘッグがの体が二つに割れる。
オーバーロード(剣)の斬れ味が良すぎたせいか、手応えと呼べるものは何一つなかった。
擬音で表すならスッって感じ。
サッでもいいかもしれない。
『木陰』
「分かってる」
鑑定さんは万能なのだ。
アビスに言われるまでもなく、ニーズヘッグのHPがまだまだ残ってる事はお見通しだった。
斬れたというより二つに別れた感じだし、アビスによる魔法ダメージしか入ってないもの。
便利だね変容のスキル。
でも、一つ一つは弱くなってるから、更に分割してやるんだから。
魔風撃を使い、斬り上げた体勢を無理矢理変化させ、ニーズヘッグの体を今度は横に薙ぎ払う。
手応えはなし。
それでもニーズヘッグは四分割され、ステータスもそれぞれ四分の一になった。
ステータス四分の一でも、私とためはれるレベルだけど、これを繰り返していけば、勝利は確定的と言ってしまってもいい。
更に追撃。
ザシューッ!
私は体勢を変え、更に斬り掛かる。
しかし、今度の攻撃はニーズヘッグを分割する事はなく、一つの手応えもなく空振りに終わった。
ニーズヘッグが転移を使ったからだった。
「ほんと、便利だな転移」
敵に使われるとウザいことこの上ない。
このまましっぽを巻いて逃げるなんて事はないと思うけど、転移を使った鬼ごっこが始まったら、かなりマズい。
便利な鑑定さんも、反射的な行動までは教えてくれないし、目に映らないものまで鑑定する事はできなかった。
反射的に転移で逃げられたら、追うことは実質不可能なのである。
私から逃れる方法は一つ。
私の目に映らない事だ。
なんてね。
「ギシャアアッ!」
「…っ」
転移で消えたニーズヘッグが、消える前とほぼ変わらない場所に姿を現し、龍爪で攻撃を仕掛けてくる。
私は反射的にオーバーロードで龍爪を受け止めた。瞬間、背後と左右からもニーズヘッグが姿を現し、龍爪を繰り出してくる。
4対1とか反則じゃないですか?
卑怯者!
4分割したのは誰だって?私です。
でもこいつ、私が斬らなくても4分割してたと思う。なぜなら戦闘巧者だから。
それなら、鑑定で見抜けただろって?
うるさい。
私は悪くないもん。
ニーズヘッグ3体の龍爪が、私を中心に交錯する。
オーバーロード(剣)で防げなくても、オーバーロード(鎧)が防いでくれるから、多少は痛いと思うけど、さほど問題はな…。
「…えっ…」
カーンと甲高い音が響き渡り、体に激痛が走った。
痛い、痛い、痛いっ!?
例えるなら、鋭利な刃物で体を突き刺されたような痛さ。
初めての痛さ。
ヤバい、ヤバい、痛い。
これ、無理なやつ。
「ギルギャオ!!」
「このっ…」
私は闇の波動と闇の鼓動を使用し、オーバーロード(剣)を魔風撃を使って無理矢理下に叩きつけた。地面が砕け散り周囲に闇の衝撃が迸る。
闇の波動と闇の鼓動の効果は、端的に言うなら攻撃力の極大アップ。波動の方は相手の防御ダウンだけど、相対的に攻撃力が上がる事になるから大体同じ。
ただ、この能力にはデメリットがあった。
使用後は、理性を失って暫く暴れ狂うというデメリット。こっちは、闇の鼓動の効果で、闇の波動のデメリットは自身の防御力も滅茶苦茶落ちる事だけど。
なんでこんな能力使ったのかって?
向こうが使ってきたからってのと、オーバーロード(鎧)を貫いてくる以上、私自身の防御力なんてあってないようなものだからです。
後、痛い思いをしながら戦うのとか、嫌だもの。
みんなだって、手術は麻酔を使って行うでしょ?
それとおんなじ。
てことで後は頼んだ。もう一人の私。
私の意識はそこで途絶えた。
暗い暗い闇が辺りを覆っていく。
底へ底へと落ちていく。
少し怖いと思う反面、なんともいえない快感もあった。
落ちて、墜ちて、堕ちる…。
経験値が一定に達しました。
魔王木陰のレベルが99になりました。




