激闘④
「ゴシュアアアッ」
ニーズヘッグの黒炎が息つく間もなく飛んでくる。殆んどダメージを受けないとはいえ、熱いと分かっていて受ける程、私のМっ気は強くはない。
ただ、転移で逃げるにしても、ニーズヘッグが目を光らせてる範囲しか動けないし、目眩ましも意味がなかった。
互いにこれ、致命傷与えられなくない?
なんだかんだの転移で逃げつつ、私は少し思考した。
ニーズヘッグの攻撃は殆ど私には効果がなく、私の攻撃はニーズヘッグに殆ど効果がない。
互いに決め手に欠けている癖に、HPは膨大。
冗談抜きで決着まで1000日掛かる。
明日には世界最強の生物に変容するらしいし、そこでジ・エンドなんですけどね。
タイムリミット20時間。
イケんの?これ?
答え、無理。
とか考えていたら、紫色の霧が辺りに立ち込め始めた。毒霧による毒殺に狙いを切り替えたらしい。
しかし残念。毒霧程度じゃ有効打にはならない。オーバーロードが守ってくれる事もそうだけど、例えまともに受けたとしても、時間経過によるスリップダメージよりも、時間経過による自動回復の方が勝っているからだ。
ちなみにニーズヘッグも自動回復を持ってはいるけど、阻害君で阻害中なので、ニーズヘッグのHPは回復していなかった。
どうせ逃げないのだから、終末をどうこうする必要ないし、物理防御系もオーバーロード(剣)を装備しいる以上、阻害する必要はなかった。
この状況、間違いなく私の方が有利なんだけど…。
決め手がない。
爪や牙以外にオーバーロード(剣)が当たれば、かなりのダメージは入るんだけどあの龍、オーバーロード(剣)をバチクソに警戒してるっぽいんだよな。
『有効に使えないなら、魔王の剣も宝の持ち腐れじゃな』
阻害君を外に出張させた結果、私に対するオート阻害は消え、アビスが念話で話し掛けてきた。
しかも嫌味な念話。
お前はどこぞの姑か。
「嫌味言ってないで、手伝って」
『事実を言っただけじゃ。で、何を手伝って欲しい?』
「取り敢えず、足場を崩すなりして体勢を変えたい」
『あやつは、飛んでおるぞ?』
「揚げ足とるな」
『練習に、木陰の足場を崩してみたのじゃ。なんての』
「うざっ」
これは、本当にうざい。
戦闘中の念話はただでさえ集中力を奪われて鬱陶しいというのに。
ぶつ切りしたくても阻害君は出張中だし、戻せばニーズヘッグのHPが回復していく。
なんだろう。キレそう。
私はオーバーロード剣で、大地を叩いた。
大地に真っ直ぐ綺麗な斬れ後が残る。
なんでも斬れる剣は、誇張抜きに世界すら斬れそうだった。
一番キレてるのは私なんですけどね。
『じょ、冗談じゃぞ木陰』
「…」
少し無視する。精神さんの沈静効果は抜群といえ、そこまで一瞬ではない。
あっ、落ち着いてきた。
『わ、妾、頑張るぞ。あやつの動きをしっかりきっちり止めてみせるのじゃ』
私がピキピキしているのを察してか、アビスが急に殊勝な態度になった。
手伝ってくれるというならありがたい。落ち着いたとはいえ、溜まった怒りは、ニーズヘッグにぶつけ散らかすとしよう。
「頼んだ」
『頼まれた』
アビスとの念話が切れる。
ニーズヘッグは毒霧を巻きながらこちらの様子を伺っている。
伺っているというか、龍眼を使っている。
龍眼の効果は相手のステータスを弱体化させ、弱体化させた分のステータスを自身に上乗せさせる。
阻害があればどうという事はないし、阻害がなくとも闇の衣がある私には、ステータスダウン系は殆んど効果がなかった。
毒霧に龍眼。絡め手を使わないといけないと感じる位には私を警戒しているらしい。
警戒というよりも、恐れていると言った方が適切かもしれない。
普通なら10回は殺せてるもんね。
鑑定を持たないニーズヘッグには、私という存在がさぞかし不思議でならないだろう。
その殆どがオーバーロードのお陰なんだけどね。
「ギグシャアアアッ」
「ナイスアビス」
アビスの光と地の複合魔法がニーズヘッグの巨大な図体目掛けて空から打ち落とされた。
地という質量を持った魔法によって、ニーズヘッグの体は大地に落下する。
私は落ちてくるニーズヘッグ目掛けて、オーバーロード(剣)を斬り上げた。ニーズヘッグの回避行動は気にしなくていい。
才能なく、ただ不格好に斬り上げただけだとしても、会心の一撃が出るようアビスが合わせてくれる。
光魔法がチリチリ痛いのは御愛嬌だ。
あらゆるモノを斬るオーバーロード(剣)によってニーズヘッグの体は二つに斬り分けられた。




