激闘
空を見上げると、地龍ニーズヘッグが地龍の癖に空の中心に浮かび留まっている。
地上に出て来てから6日という時間が経過し、ステータスはすべて3倍以上になっていた。
魔王の武具改め、オーバーロードを装備しているとはいえ、正直勝てる気はしない。
てか。勝てなくない?
だって私のステータス10倍になってないもん。
オーバーロードは切れ味が良くて硬いという以外、特殊能力が何もなかった。
こういう武器って読むのが面倒になる位、特殊効果もりもりのもりなはずなのに、何もない。
初期のブルーアイズみたいな感じ。
確かに強いけど、今の環境下じゃ戦えませんって。
「妾が本気を出しても、勝てぬレベルに到達しておるの」
「うん。どうする帰る?」
「帰った所で、日が過ぎればこやつに焼き尽くされるぞ」
「こういう時こそ世界が結束して、何かしらの何かが出てきたり…」
「妾と木陰以外、誰も来てはおらぬな。兵器が設置されてる様子もなさそうじゃ」
「世界ぇ」
アビスの言う通り、辺りを見渡した所で誰もいないし、万里眼を使った所で、戦いの準備をしている者さえいないのが現状だった。
ただ、魔族も人族も会議はしていた。
事件は会議室で起きてるんじゃないんですけどね。
異世界であろうと、重役というのは会議がお好きらしい。
「じゃが、強いからこその朗報もあるぞ」
「何?」
「妾の超本気の一撃を見る事ができる」
「へぇ」
「なんじゃその反応は。妾の本気を見られる機会なぞ、そうそうないぞ?」
「わあ凄い。そのまま倒して欲しいな」
てか、倒せ。
私は戦いたくない。
「倒すの木陰の役割じゃ」
「わあ凄い」
凄すぎて感情を無くしてしまいそう。
「では、開戦の狼煙といこうかの」
アビスはそう言うと、杖を掲げ、ぶつぶつと祝詞を唱え始めた。
周囲に風が巻き起こり、杖に光が収束していく。
風魔法レベル10と光魔法レベル10の同時発動。魔術の秘宝と才能を持ったアビスだからこそ出来る複合魔法である。
しかもこれに加え、魔力超解放と杖に蓄えられた魔力の行使。
地上に放てば世界の半分程度、簡単に壊せる威力がありそうだった。
これ、ニーズヘッグ死ぬんじゃない?
いや、死んでくださいお願いします。
なんでもは、しませんけど…。
「アビスキャノン発射じゃ」
アビスの杖から光と風を纏った超威力の魔導砲が放たれ、空間を引き裂いていく。
魔力特化にしているからか、速度は遅い。
ただ、ニーズヘッグは動かず眠っているので、回避可能の魔法も直撃は確定していた。
爆音が響き、閃光が飛び散る。
ニーズヘッグが殺した大地は、アビスの魔法によってさらに深く削り取られ、底の見えない穴ができあがった。
なんとも言えないダサい名前だったが、威力は申し分なし、この魔法を直撃して生きている奴なんて、普通おらんやろってレベルである。
「やったか!」
と思わず言いたくなってしまう。
「いや、やってはおらぬ」
「うん知ってる」
やったか!は、やってないの代名詞。
この言葉を口にした瞬間、全然やってないのだ。
しかも鑑定によって、光が晴れる前からニーズヘッグの残りHPが200万近く残っている事も、私はバッチリお見通しだったりする。
「まぁ、こんなもんじゃな。後は頼んだぞ木陰」
「アビス。もう一発」
二発あれば屠れます。
世界平和の為、ニーズ君の経験値を食べて爆発して下さい。
「無理じゃな。そもそも二発目を黙って喰らう程、あの龍は甘くはあるまいて。では、妾は隠れさせて貰うぞ」
大きく息を吐いたアビスはそれだけを言い残し、姿を隠した。
アビスが消えたという事は、ニーズヘッグのヘイトは姿丸見えの私に向けられるわけで、気が付けば私は、遥か後方に吹き飛ばされてしまっていた。
ゴリゴリと大地を体が削っていき、山に激突した所で停止する。
停止した私の目の前には、大口を開けたニーズヘッグの姿があり、口からは黒炎が吐き出される所だった。
容赦のない連続攻撃である。
寝起きがとてもお悪い。
「このっ!」
私はニーズヘッグの口目掛けてオーバーロード(剣)を振り上げた。
放たれた黒炎が二つに斬れ、ニーズヘッグの口を傷付ける。
それでも、炎は私とその周囲を容赦なく焼き尽くした。
熱い。
熱いけど、ダメージを例えるなら、熱々のココアを一口飲んでから、あびゃっとすぐに吐き出すレベルの熱さだった。
炎が当たった一瞬だけは物凄く熱かったものの、致命傷になる前にオーバーロード(鎧)が守ってくれたらしい。
周囲が黒炎で溶けて消えたというのに、私の五体は余裕で残り、肌は火傷すら負っていなかった。
エルの全身フルアームと違って、半分位皮膚丸出しなのに、恐ろしい防御力である。
世界最高という代名詞に嘘偽りなし。
これって、もしかしてイケちゃう?
うん。なんだかいけそうな気がする。
あると思います。




