木陰ちゃん労災に遭う③
「…ぶはっ。熱い熱い火傷する」
大きく息を吐き、私は全身に引火した炎を手で叩いて消した。
私の場合、変身のスキルによって服も再現してるから、服が燃えて裸体が露になる事はないけど、そうでなければ、お色気シーンをお茶の間に届けてしまっている所だった。
黒炎はそれ位の威力があったし、例え耐久力があったとしても、ズボンや下着が焼け残る可能性は皆無だった。
まぁ、だからこそ逃げられたんだけど。
私は黒炎で跡形もなく消え去ったように見せかけて、地上に転移していた。
転移は終末の効果で使えないはずだろって?
まったくもってその通りなんだけど、私にはチートスキルの阻害君があるのだよ。
終末に阻害が使えるかは賭けだったけど、ちょっとでも阻害してくれれば、転移もチートレベルなので、逃げられるって寸法です。
結果、うまくいきました。
地龍ニーズヘッグは、相手の強さを測るスキルは持ってないし、一瞬で私の眷属を消し去ってもいた。
弱い眷属を従える主なんて大した事ないって理論から、黒炎で私が跡形もなく消える事に、疑問は感じないはずだ、
起こした奴絶対赦さないbotと化してたから、普通に逃げても追い掛けてきそうだけど、死人は追えない。
私を殺したと思い込んだまま、本当の終末までゆっくりお休み。ニーズヘッグ。
という事で帰りましょう。
転移発動。
しかし何も起きなかった。
いやいやいや。地龍さん。まさか追ってきてないよね?
跡形もなく消し去ってやったわ。ワッハハって感じで、余韻に浸ったあと寝てますよね?
私の疑問に答えるように、グラグラと大地が揺れ動き、火山が噴火するように、空に向かって黒い炎が立ち昇った。
一度この身に受けた以上見間違うはずがない。
アレは、地龍ニーズヘッグが放つ黒炎だ。
追ってきてる?
でも、ニーズヘッグは転移を使える。
追い掛けるだけなら、わざわざ黒炎を空に向かって放つ意味が分からない。
まさか、目覚めたイコール終末と勘違いして、世界ブッ壊すドラゴンになったとかじゃないよね?
すんごいあり得そうだった。
黒炎で風穴を空けたニーズヘッグが、空高く飛翔する。
私と戦った時は黒く不気味な塊に変容していたが、今は龍の形をして空にいる。
大きさは、アルミリアに作られた魔王城の2倍といった所だろうか。
羽を広げた姿は、悍ましく不気味であり、見たモノに終わりを感じさせるには十分な迫力を持っていた。
「ギシャアアアアアアッ!!」
ニーズヘッグの咆哮が大地を震わせ、闇の波動が迸る。弱い生物ならこれだけで100度は死ねる。
実際、辺り一面の森は一瞬で枯れ果て、海も暗く沈んでいった。
黒炎が空に昇った時、周囲の動植物はざわめいたが、今や何の音すら発せなくなっている。
この場所だけを見たなら、まさに世界の終末だった。
ニーズヘッグが大きな口を閉じ、歯と歯が当たったからか、カーンと鐘のような音が響き渡った。




