木陰ちゃん労災に遭う
地下世界からこんにちは!
お久し振りです木陰ちゃんです。
突然ですが私は今、地下にいます。
地下といえばなんでしょうか?
そう、労働です。
私は今、働いています。
せっせと穴を掘り進めながら、オリハルコンを探しています。
「若い小娘なのに、スゲー力と体力っぺな。人族っちゅうのは、こんなにもスゲーのか」
「まあ、ね」
人族じゃないですけど。
魔王様ですけど。
「この勢いならすぐに見つかるっぺ」
「…」
「そこは左に向かうといい気がするっべ」
「…」
言われたので黙って左折する。
「ここで敢えてもう一度左っぺな」
「…」
言われたので、またも黙って左折し穴を掘り続ける。
さっきからなぜ黙っているかって?
人見知りを発揮しているからです。
私は日向ちゃんと違って、おじさんとの会話は不得意なのだ。おじさんって、何話ぜばいいか分からないし。
ちなみに、このおっさんが誰かって問には答えられる。
ドワーフのドリスさんです。
アビスが「あの辺にありそうじゃ」とか適当ぬかした大陸の地下を、直下掘りしてたら出会いました。
出会ったというか、マグマを掘り当ててドーンってなった時に、叫び声が聞こえた先にいたって感じ。
私はドリスの命の恩人だった。
マグマと魔氷撃によってドリスが100年作り続けた地下を駄目にしちゃったけど、命には変えられない。
木陰ちゃん偉い。
「しかし、本当に凄いっぺ。そして少し悔しいっぺ。おでの100年が、森山殿にかかれば1年にも満たないっぺな。そこだけは本当に悔しいっぺ」
「100年頑張ったから、私に出会えた」
10年で作業をやめていたら、私には会えなかった。そこから90年作業を続けた所で、最初からやり直す事は変わらないよけど、そこは触れない。
残酷な真実は伝えない優しさを私は持っているのだ。
「そうだっぺ。森山殿に出会う為の100年と考えれば、お釣りが出るっぺよ」
「…まぁね」
「本当に、森山殿は凄いっぺ。こんなにも綺麗に素早く穴を掘れるなんて。きっと人族じゃなくて、森山殿だからこそ凄いんだっぺな。惚れ惚れするっぺ」
「ふふふ…」
変な笑いが漏れた。
だって、なんか凄い誉めてくれるんだもん。
自己肯定感爆上がりって、やつですよ。
私って、誉められて伸びるタイプなんだよね。誉められたら何処までも鼻も伸ばせちゃう。
ぐんぐんぐーん。
「本当に凄いっぺ」
「もっと凄い所、魅せてあげる」
私は大袈裟に全身をふるい、魔風撃によって、辺り一面を削り取った。
ガリガリと岩を掘削する音さえなく、吹き荒れた爆風によって、目の前に巨大な空間が出来上がる。
マグマを引き当ててビックリしてたけど、私に掛かれば、ちまちまと穴を掘り続ける必要なんてないのである。
「ギャエエエエエエエエッ」
なんか、すんごい叫び声が聞こえてきた気がしたけど、気のせい気のせい。
「これはまさか、地龍様の叫び声っぺか?」
「そっ」
やっぱり、聞こえてたみたい。
真っ暗でなんも見えないけど、万里眼チェック。
…。
……。
………。
もの凄くでかい龍がそこにいた。
真っ黒で形が分かりにくいものの、でかい蛇のように、全身が波打っている。地龍という名から格好いい見た目を想像するけど、素直に気持ちが悪い。
私には無理なタイプだ。
蛇、私嫌いなんです。
そして私はこの蛇が、もっともっと嫌いになりそうだった。
ニーズヘッグ・アース・コアトル
終末の地龍
レベル99
HP1905000
MP260000
TP1890000
力1990000
魔力360000
素早さ760000
防御力2010000
器用さ869000
スキル
黒炎レベル9
龍爪レベル9
龍牙レベル9
毒霧レベル9
龍眼レベル9
瞑想レベル9
変容レベル9
飛行レベル9
転移レベル9
闇の波動レベル9
闇の鼓動レベル9
パッシブスキル
魔法防御レベル9
物理防御レベル9
自動回復レベル9
威圧レベル9
咆哮レベル9
精神レベル9
支配レベル9
逆鱗レベル9
Exスキル
眠れる龍
終末
伝承
世界の終末に現れるとされる伝承の龍。
眠りを妨げる者をけして赦さない。
ま?
これ、ま?
ドラゴンが狩れる程度だから、この世界の龍は大した事ないとか考えてたけど、極悪に強いじゃん。
伝承とか伝説より格上感もあるし、てかこれ、RPGで言ったら裏ボスなんじゃない?
だって、魔王様よりステータス高いですもん。
勇者に殺されないよう素材を集めにきたら、勇者より断然ヤバい奴に遭うとか、洒落になってない…。
てことで、転移発動。
逃げます。ドーン。
「…嘘でしょ」
転移が発動しなかった。
ここにきてシーちゃんの嫌がらせかと一瞬過ったけど違う。
ニーズヘッグのスキル終末。
効果は、始まりなき終わりからの逃亡を阻止し終結させる。
ちょっと何言ってるか分からないけど、世界を終わらせる者に相応しいスキルで、逃げられないという事だけは分かった。
この逃げられない感じも、裏ボス感が半端ないじゃんよ。
「どうしたっぺか?森山殿」
「逃げる」
転移が駄目なら足で。幸い素早さのステータスはこっちのほうが上だ。
命懸けの鬼ごっこなんて嫌だけど、立ち向かうよりは遥かに勝算があった。
「我の眠りを妨げた者は赦さぬ」
「はあ…そっちは、使えますもんね」
振り返り一歩目を踏み出した瞬間、目の前にはニーズヘッグが現れ、私は深いため息を吐いた。
気持ちの悪い龍形態ではなく、小さな黒い塊としてそこにいる。
鑑定がなければ無視して突っ切っていたくらい、万里眼で見た姿とは違っていたが、こちとら鑑定を使っているので、馬鹿な行動は取らずに済んだ。
「なんだっぺか?これ」
「やめっ…!」
ドリスがニーズヘッグに近付こうとした瞬間、私の体は吹き飛ばされ、ドリスの体は跡形もなく消え去った。




