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勇者邂逅③

夜が来て、朝が来て、再び夜が来る。


野宿は嫌なので、私は転移を使って船のベッドで眠り、朝はエルやアビスと一緒に釣りを楽しみ、昼はエフの武器錬成を見学し、夜はエルフレアで美味しい料理を食べた。


飽きたから見てないけど、アイルとベリアルの戦いは今も続いている、


「魔王城の破壊はどうなったのじゃ?」

「見れば分かる」


私は今釣りをしていて、後ろを振り返れば立派に魔王城が聳え立っていた。


「その通りじゃが良いのか?最近は様子すら見に行っておらぬではないか」

「偽者の勇者でも死なない装備を、本物の勇者が装備してるんだし、平気平気」


今もちらりと万里眼を使って戦況を覗き見てみたけど、百万回目の再放送が行われているだけだった。


全然なんも変わっとらん。


この状態なら、万が一にもアイルが負ける事はないし、例え負けたとしても、勇者の武具一式を装備をしているアイルが死ぬ事はないだろう。


てか死んでも、アビスがいるし。


そして何より、アイルが死んでも私は一向に構わんかった。

だって勇者だし、魔王の天敵だし。


勇者が死んだらラッキーじゃん。

と、悪魔さんも耳元でよう囁いとります。



「妾は小娘ではなく、木陰の心配をしておるのじゃがな」

「そうなの?」


「小娘の鑑定結果が、日に日にキモくなっておるからの。歴代の勇者を何人か見てきたが、あの成長速度は上位のキモさじゃぞ」

「やっぱそうなんだ。アビスさん。なんとかして下さい」


アイルとべリアルが激突してどれ程の日時が経過したのか、代わり映えが無さ過ぎて既に分からなくなっているものの、日々変わっている点が一つだけあった、


それはアイルのステータスが爆発的に伸びている点だ。


ベリアルが耐えるという構図は同じでも、様々なスキルや魔法を覚えていくアイルによって、エンドレスバトルは確実に終わりに近付いていた。


エンドレスバトルの終わり。

それはつまり、四天王最強の盾をアイルが粉砕した事を意味しており、その矛が魔王に届く事を意味していた。



アビスが心配し忠告してきたのは、このまま我関せずで勇者を成長させたら、痛い目を見るのはお前だよって、伝えずにはいられなかったのだと思う。


忠告ありがとう。

でも、私には何も出来ないので、色々とお願い致します。


なんとかして下さい。


「人頼りとは情けないの」

「魔王はほら、自分では動かないから」

「妾を右腕として扱う気かえ?」

「アビスを魔軍参謀に任命します!」

「任命すな」


「でもどうしよう。私、勇者に殺されたくないんだけど…」

「釣りをしながら、そんなふざけた顔で言われたところで、説得力皆無なんじゃが…」

「ふざけた顔はしてないでしょ」

「これでもかえ?」


アビスは空間を指先を使ってなぞった。

すると、何もない空間から派手に飾り付けされた鏡が現れ、私の顔を映し出した。


私は(*´ェ`*)こんな顔をしていた。

何かいい事でもあったのかな?って感じの顔である。確かにふざけていそうではある。


にしても私ってば、どんな顔をしてても可愛いな。鏡に映し出された自分の顔に、私は改めて惚れ直した。


自分の顔に馴れてからあんまり鏡を見なくなったけど、やはりこの女、相当可愛いぞ。


「何か、よりムカつく顔になったの」

「ただただ可愛いだけでしょ」

「危機感皆無じゃな」

「参謀のアビスさんが、なんとかしてくれるって信じてるからね」


「ならば報酬として、世界の半分を貰うぞ」

「どうぞどうぞ」


てか、アビスは世界征服完了してるから寧ろ私にくれるの?って感じなんだけど。

…。

いや、いらないんだけど。

半分どころか、百分の一すらいらない。

国も町も村もいらない。


いるとしたら…。

いや、なんもいらん。

私、結構お金持ってるし、欲しいものも特にないもん。スマホとかあれば欲しい所だけど、手に入れた所でネットに繋がる事はないだろうしね。



「魔王らしからぬな」

「そんな事はありません。大魔王様」


私はアビスに恭しく頭を下げた。

世界を手に入れたアビスは、魔王の参謀なんかじゃない。あなたこそ、大魔王だ。


「おい。妾を悪の親玉にするでない」

「大魔王アビス。なんかそれっぽいし、私より強いし、もうそれで良くない?」


アビスが大魔王になってくれたら、私のやらかしは全部アビスのせいに出来るし、アイルちゃんのヘイトだって大魔王アビスに擦り付ける事ができる。


私に得しかないじゃん。

悪魔的発想の逆転手だ。

私は魔王なんだけどね。


「良くないわ。木陰が言うとマジになりそうだからやめよ。それに妾が大魔王になったところで、勇者にまず倒されるのは、魔王が道理。そこが変わる事はないであろうに」

「アビスが今動けば変わる。勇者をぶっ殺してやって下さい」

「そんな事、木陰自らやればよかろう」

「無理。お姉様とか言ってくれる女の子を殺すとか、ほんと無理。私はほら、こう見えて妹思いのお姉ちゃんだから」



「そんな妹を、妾に殺せと言っておるのはどの口じゃ?」

「この口。やっぱり何だかんだ自分の命の方が大切だもの。自分大好きだもの」


命を天秤に掛けるなら、私は私が一番大事なのだ。だから、不慮の事故でアイルちゃんが死んでしまっても、私の心は少ししか痛まない。


魔王に良心などないのだ。

ガハハ。


「何というか、呆れを通り越して逆に清々しいまであるの」

「アビスだって、自分が一番大切でしょ?」

「妾は…さて、どうであろうな」


アビスは少し意味深に微笑んでみせた。

馬鹿みたいに永く生きてるから、もしかすると命というものに、そこまで価値をおいていないのかもしれない。


少ししんみりした所で、持っていた釣り竿が揺らぎ、魚がヒットした。


フィーシュと心の中で叫びながら釣り上げてみると、目玉がギョロッとした気持ちの悪い魚と目と目が合った。


「…」

「…」


釣りというのは、はキャッチ&リリースが基本。私は釣りのルールにのっとり、そのまま魚を海に還してあげた。


キャッチしてないって?

ゲームセンターを見てみなさい。

キャッチしないキャッチャーは沢山いるのです。







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