表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/119

勇者邂逅

魔族に支配されたアルミリアの町は、酷い状態にあった。


人族が生活していた痕跡となる建物は壊されておらず、再利用もされているため、一見すると人族が住んでいる町に見える。


しかし、二見すればすぐに異変に気が付く。町の至る所で、ペットのように鎖を繋がれた人族がいるからだ。


人族の目は総じて光がなく虚ろであり、体には痛々しい傷を負っていた。


放たれた魔物をバッタバッタと薙ぎ倒し、アルミリアの町を堂々と闊歩しているにも関わらず、誰一人として近付いて来ないのは、私が美し過ぎて近付き難いのも当然あるだろうけど、目の前にある希望を寄せ付けない位、心が闇に染まっているからだった。


闇に染まった住民を救うためには、魔王城を破壊し、闇を自力で祓えるような希望を示す必要があった。


つまり、当初の予定通り魔王城をぶっ壊すという事である。


ただ悲しいかな、私の心はこの惨状を見ても何一つとして動いてはいなかった。


人族を助けた方が良いと考えるのは、昔の記憶によって、それが良くない事だと刷り込まれているからでしかない。


記憶がなかったら、魔王を遂行していたのではないかと思えるくらい、私の精神性は立派に魔王だった。


お前はもう、立派に魔王を遂行しただろうって?


記憶にございませんね。


「魔王、赦さない」

「そうだね」


魔王赦さないbotと化しているアイルちゃんの呟きに、私は他人事のように頷いた。


恨まれる事は覚悟していたし、あれを放置するのもどうかと思ったからズドンとやったけど、アイルの怒りはかなりのものだった。


でも、あれを放っておいたらアイルもああなっていたし、ワルドー国民をはじめ、多くの人族も巻き込まれていた。


活躍としては大英雄並みだと思うんだけど、見た目が悪いと損をする良い例である。


魔王っぽさを出す為に、笑ったのが良くなかったかな。


「赦さない、赦さない、赦さない…」

「どうどう」


私はアイルの背中をぽんぽんと叩いた。

魔王としてであれ、英雄としてであれ、私がアイルの家族を殺した事に変わりはない。


だから私にできるのは、復讐の鬼になったアイルが満足するまでの間、死んでしまわないよう、護ってやることだけだった。


ふと思ったけど私のパーティって、精神子供、見た目子供、ただの子供と、クソガキばっかりだな。


そして、そんな糞餓鬼と何だかんだうまくやっていけてる私。


私ってばもしかして、保育士や教員に向いてたりするのかな?


エルフの子供達にも好かれてたし、ありえるかも。私の天職は先生だった!



元の世界に戻ったら、転職して先生になろう。


え?今の仕事を辞めれるのかって?

世の中には、退職代行サービスというものがあるのだよ。



「随分と暴れ回ったようだが、ここいらで行き止まりだぞ?」

「トマレ」


天職を見つけ、転職について考え歩いていると、数人の魔族がざっと現れ、私達の行く手を遮った。


魔王城が目と鼻の先となると、流石にだんまりと見送るわけにもいかなかったらしい。


魔王の為に働く魔族がいてくれて、少しだけウキウキする。


「止まれと言われて止まるとでも?」


私は内心のウキウキを隠しながら、立ちはだかる魔族を見た。


問答無用で斬りかかろうとしたアイルを抱き寄せ、止める事も忘れない。


雰囲気で魔族を挑発してみたけど、止まれと言われたらちゃんと止まって欲しいと、私は心の底から思った。


柴犬のぺっちゃんが発情して、お隣さんの犬にハッハッと向かって行った時の気分。


気まずいんだよね。あれ。


「思ってなどいないが、死ぬぞ?」

「シヌ、シヌ」

「魔王様は、極悪非道であるからな」

「ヒドウ、ヒドウ」

「生きたまま無限の苦しみを味わう事になる」

「クルシイ、クルシイ」



「一応勇者だから、見逃せないのよ」


(仮)だけど。

とはいえ、勇者の武具一式を託されたり、でっかい国船を貰ったりもしてるからね。


だから(仮)ではあっても一応勇者。一応。まさに今の私にピッタリの言葉だ。


「勇者だと…」

「ユウシャ、ユウシャ」

「つまりお前を捕らえれば、俺は魔王様に…」

「ホメラレル、ホメル」

「いや、ありえないな。あのお方はそこまで慈悲深くはない。ベルフェル様であれば或いは、いやしかし…」

「ムジヒ、ムジヒ」


魔王に勇者を差し出せば、いい役職に取り立てて貰えるかもしれない。そんな事が一瞬頭を過っていそうだったが、すぐに考えを改めたらしかった。


魔王がしてきた事を考えれば、連れていったお前ごと消し去ってきそうだし、正常な判断ともいえる。


主観的に見た魔王は、世界一可愛くて綺麗なベストガールでしかないけど、客観的に見れば、非道で無慈悲な極悪魔王様に他ならない。


私は物事をきちんと客観視する事ができた。

客観的な分析力。就活にはこれがとても重要なのだ。


「通っていいかな?」

「駄目だ。勇者とは魔族共通の敵。勇者と名乗られてしまった以上、勇者には死んで貰う」

「ダメ、ダメ」


「そっ」


魔王が人族全員の敵であるのと同じように、勇者も魔族全員の敵というのは納得できる。


でも出来れば、魔王様の為に。みたいな言葉が一言くらいは欲しかったかも。


私の人徳低すぎっ!

この場合は魔徳かな。


「勇者死ねい!!」

「シネ、シネ」


魔族達が一斉に襲い掛かってくる。

私は全員の手、腕、足を拘束し、地面にひれ伏させた。


無駄な殺生はしない。


だって私の技は魔王とまったく同じだから、魔王っぽい痕跡を残したら、更に魔王が嫌われてしまうもの。



まぁ、スキルなんて使わずに力こそパワーって感じで、ザシュザシュッと今のアイルちゃんみたいに、魔王の痕跡0で殺す事はできるんだけど、私ってほら、虫も殺せない乙女だからね。


ん?


今のアイルちゃんみたいに?


いやいやいや、アイルちゃんあんた何やってんの?


私が拘束し動きを封じた魔族は、アイルの振るう剣によって斬られ、既にこと切れていた。


レベル1で、ステータス100しかなかったのに、めっちゅスムーズに斬り刻んでる。


勇者に絡んでくるだけあって、そいつ等一応、平均1000のステータスはあったよ?


アイルちゃんの軽く10倍です。


「お姉様。邪魔者はいなくなった。だからさっさと行こう。魔王を殺しに」

「えっ、あっ、うん」

「魔王、赦さない…」

「…」



返り血浴びてるアイルちゃん怖い。

怖いので鑑定をする。


アイル・リリ

伝説の勇者



レベル28

HP8307

MP8307

TP8307


力8307

魔力8307

素早さ8307

防御力8307

器用さ8307



スキル


光衝撃レベル1

光炎撃レベル1

光氷撃レベル1

光風撃レベル1

光雷撃レベル1

光振撃レベル1


回復魔法レベル2

治療魔法レベル2


パッシブスキル

HP自動回復レベル1


EXスキル


天の加護

光の加護

不幸

剣の才能

魔法の才能

覚醒

伝説

不屈

成長



魔王に大切な家族を目の前で殺され覚醒した伝説の勇者。

勇者の武器防具を装備する事で、ステータスは現在の10倍まで底上げされる。

魔王に届き得る人族唯一の存在



オー、ジーザス。

いつの間にか勇者になってますやん。

そしていつの間にか勇者の剣持ってますやん。


いや、エルが渡してる所見てたし、アイルが巻き込まれて死んでも困るからって事で、容認もしたけどさ。


その時はただの村娘でしたやん。


「お姉様?どうかした?」

「なんでもない」


なんでもしかない。

このままアイルが魔族バッタバッタ殺していったら、鑑定通り私に届いてしまいますやん。


今で大体ステータス80000でしょ?


勇者を決める大会とか、茶番もいい所ですやん。

私やっぱり勇者(笑)ですやんか。


「なら行こう。私今、凄く調子がいい」

「でしょうね」


覚醒後はそうなるって、私は数々の漫画で履修済みなのだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ