魔王討伐部隊出航②
船に乗り込み、私達は魔王城のあるアルミリアに向けて航路を取った。
長い船旅が始まる!
なんて事はなく、片道三時間で到着しました。ワルドーから魔王城は見えてるんだからそんなものです。
ただ、三時間で到着は出来たものの、魔王城までの道のりはそこそこ険しかった。
アルミリアが魔族領となった事で、あらゆる場所に魔物が放たれていたからだ。
そんな所にのこのこと入れば、それはもう盛大に過激な大歓迎を受けるわけです。
大歓迎を受けたところで、だから何?って感じではあるけど、いくら防虫剤や火炎放射機を持っていても、大量の虫に襲われれば、嫌な気持ちにはなるよね。
自転車漕いでる時に蚊柱にぶつかった感じ。あれほぼノーダメージだけど、精神的には、ね。
なんか喉がイガイガしてきた。私は美少女だからタンは吐かないけど、口はゆすいでおくとしよう。
「魔王、赦さない…」
「…」
実は険しさの要因の大半はアイルちゃんにあったりするんだけどね。
なぜなら私は今、魔王赦さないbotと化したアイルちゃんと二人きりなんです。
エフは勿論、エルもアビスもそばにはいなかった。
ここで、少し回想。
「さて、木陰。港に到着したわけじゃが、妾とエルは船に残る」
アルミリアの港に着くなり、アビスはそう言った。
「え?は?」
混乱する私にアビスは続ける。
「ここまで魔物がいる以上、船を守る必要があるからの。エルは連れていっても普通に足手まといじゃろうし、エルに船のお守りをさせるわけにはいくまい?」
「おら、もう無理だべ。おぼぼぼ」
「それは、そうだけど…」
アビスの言う事はもっともだと思う。エルは船酔いで多分鎧の中で吐いてるし、連れていった所で、より足手まといになる事は確定的だった。
エルがどれだけ足手まといでも、私にはあんまり関係ないけど、鎧を背負って戦う勇者は、さすがにちょっとダサい。
私は見た目や美しさには結構拘りを持っていた。
お洒落は我慢なのだ。
「という事で、気を付けて行ってくるのじゃ」
「アビス、なんか企んでない?」
「そんな事はないぞ」
アビスは分かりやすく私から目を反らした、
企んでます。
悪い事ではないけど、企んでます。
ちょっと具体的に言うなら、エフに色々と創らせようとしてます。
iPhoneを開発したスティーブ・ジョブズ的な立ち位置になろうとしてないよね?
新しいおもちゃで世界を変える。みたいな。
「では、改めて。気を付けて行ってくるのじゃ」
「行ってら、あぼぼぼ」
こうして私は殺意増し増しアイルちゃんと一緒に、魔族領となったアルミリアを歩く事になったのである。
「空気、悪いね」
「魔王、赦さない…」
ほんと、空気悪い。
敵さんも、この空気を和ませる為に襲い掛かってきてよ。
チラッ。
私は建物の影に隠れている魔族に目を移した。
船上や陸上で、魔物が瞬殺されていく姿を目撃したからか、こちらに視線を送ってきてはいても、魔族が襲い掛かってくる様子はない。
魔族とて、命は惜しいという事らしい。
でもさすがに、このまま魔王城に近づけば襲い掛かって来るとは思う。
魔王の為に戦うのは、魔族の宿命だからだ。
魔王城、ほぼ目の前だけど…。
これからの数100メートルで私は、魔王に対する魔族の忠誠心を見る事になりそうだった。
気持ち悪い生物に忠義を尽くされた所でって感じではあるけど、ないならないでちょっと嫌だった。
これが複雑な乙女心、いや、魔王心なのかもしれない。




