英雄の消失
ゾラに完膚なきまでに敗北したドラゴンは、勇者の武具一式を託し、ゾラのもとを離れた。
大ダメージを負った体は、気を抜くと倒れてしまいそうだったが、歯を食いしばりなんとか歩いて行く。
呪われた勇者の武具がない今、野盗や火事場泥棒が持つ、悪意ある善意に頼る事はできない。
今の状態でも野盗風情に負けるとは思わないが、それなら自分自身で、治療士を探す方がマシだった。
「…そういえば、あいつ等は元気にしているだろうか?」
ドラゴンはふと思い出す。
近くにはアイカ達の住む村があるはずだった。
久々にアイカの手料理が食べたい。
リーズと追いかけっこをしていたせいで、5年近く会っていないから、忘れられているかもしれないが…。
「それはないな」
ゾラや魔王やリーズにズタズタにされたドラゴンだったが、傲慢さや誇りを失ったわけではなかった。
「お兄さん、ボロボロじゃないか。肩を貸そうか?」
「へへへっ」
ドラゴンが少し折れかけたプライドをムクムクさせていると、案の定というべきか、ガラの悪い野盗達が絡んできた。
勇者の武具一式を渡したとはいえ、パンツ一丁で歩いているわけではない。今のドラゴンはそれなりに身なりを整えていた。
ぱっと見、金は持っていそうといった感じである。
「失せろ」
「強きだねぇ。金目の物があらかた取られ尽くしてて、イライラしてんだよなぁ。お兄さん俺達のサンドバッグになるぅ?」
「へへへっ」
「はあ」
ドラゴンは息を吐く。
温かいごはんを食べ、暖かく看病されたい気分だった。




