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転生したら魔王になっていた件②


こんにちは。魔王です。

と、明るく心の中で呟いてみたものの、正直未だに理解出来ていないし、納得もいっていない。


特にこのビジュアル。


転生先の魔王といえば、美女が美男子のどちらかと相場が決まっている。なのになんで、こんなガサガサの肌をした爬虫類みたいな生物なの?


後、声も最悪。


声優大好きな声フェチとして、この声はない。寝起きのお父さんでも、こんな声じゃないのに。


『ですが魔王です。転生ガチャでいったらSSRではありませんか?』

「見た目と声がキモかったら、SSR引いても嬉しくないから」


ベンチを暖めるだけだから。

しかも一生出番が回ってこないヤツだから。


『魔王は人権キャラでもあります。攻略サイトには、絶対手に入れるべきキャラクターとして、一番上に載ってる位には凄いですよ』

「私は攻略ガチ勢じゃないから、エンジョイ勢だから。見た目と声は超大事だから」



『なるほど。では、ゴブリンの群れに襲われる見目麗しい娘となって、今から美しい声を奏でますか?誰の耳にも届く事はないと思いますが』

「ごめんなさい」

『分かればよいのです』

「てか、シーちゃん。気軽に会話しすぎじゃない?」


めっちゃいい声だし、耳元で響くから、極上のASMRを聞いてるみたいで、とても良い気分だけと、こいつ、最終的には敵になるヤツなんだよな。


そう考えると、凄く複雑。


『暇ですから』

「さいですか」


だったら仕方ない。


『なので、質問があればじゃんじゃん答えます。世界征服を成すために、なんなりとご利用くださいませ』

「世界征服めっちゃ勧めてくるけど、それしたら何かあるの?」


『征服王のスキルが手に入ります』

「スキルの効果は?」

『それは、手に入れた時のお楽しみです。ネタバレはつまらないですから』

「じゃあ、世界征服しなかったらどうなるの?」


『堕落王の称号が手に入ります』

「効果は?」

『全ステータス99%オフの大特価セールにプラスして、全ての技が封印されます。この世界の魔王弱すぎ。みたいな感じで、勇者以外にもボコられてしまいます』

「そっちの効果は言っちゃうんだ」

『取得されると困りますから』



「…ま、魔王様、まずはた、誕生、おめでとうございます。我が名はベルフェル。魔王様の右腕として、粉骨砕身の働きをみせましょう」


私がシーちゃんと話をしていると、舞っていた砂煙の中から、一人という一匹の生物が姿を現した。


カエルのようなトカゲのような、女子には忌避感のある気持ちの悪い生物である。


砂嵐の中にいるみたいにやたらと視界が悪いのは、魔王として転生したこの場所が、そういう立地だからだろうか。


『木陰ちゃんが、破壊した結果です』

「あぁ…」


納得。

そういえば、魔衝撃とかいう技で、辺り一帯をぶち壊したんだった。すっかり忘れてた。


『地形を変える程の破壊を忘れるだなんて、木陰ちゃんは魔王としての才能がありますね』

「元の地形を知らないから」


私が立っている一部分を除いて、クレーターのように凹んでいるけど、隕石がぶつかった可能性だってワンチャンある。


魔衝撃が目眩まし系の技だった可能性だってあるしね。


『目眩ましでレベルはあがりません』

「シーちゃんってもしかして、私に現実を突き付ける係?」


見えない物は見えないままにしておこうよ。


『誤った認識を正しているだけです』

「あっそ」


「魔王様、このベリルト、刻苦勉励(こっくべんれい)に勤しみますゆえ」


同じような爬虫類が再び砂煙の中から姿を現した。

そして、なんかよく分からない事を言ってくる。


「四天王が一人ベリアル見参」

「同じく四天王ベルゼバ、推参致しました」


そして一人、また一人と謎のキモ生物が姿を現した。


シーちゃんが言った通り、レベルアップしたって事は、魔衝撃で結構な数を倒しちゃったみたいだけど、目の前にいるキモ生物は耐えたという事だろうか。


てか、魔王として何か答えた方がいいのかな?


嫌だな。だって、気持ち悪いし。

私、爬虫類苦手なのよね。


そとそも、私の基本スペックはコミュ障の陰キャなのである。ていうか、陽キャであってもキモ生物と仲良く会話なんて出来なくない?


出来ないよね?

…出来ちゃうかも…。


学生時代にいたウェーイな陽キャを思い出し、私の自信は一秒で揺らいだ。


あいつ等も、私からすれば異星人だったし、異文化コミュニケーションは十分にあり得る事だった。



それにしても、名前の類似性といい見た目の類似性といい、四天王とやらは四つ子か何かなのだろうか。


どっちかなマナカナ状態過ぎて、既にどれが誰か分からない。いきなり、四天王間違い探しをさせられても困るんだが。


「うむ。よくぞ集まった」


でも、取り敢えずはなんかそれっぽく頷いておいた。


威厳たっぷりって事はないと思うけど、頷きに対して四天王が萎縮したのが分かった。


魔衝撃とかいう、分けの分からん技をいきなり喰らった手前、絶対に怒らせてはならない相手として認識しているのかもしれなかった。


その件についてはゴメン。

でも、君達がこう、爬虫類っぽくて気持ち悪いのがいけないし、シーちゃんが私の美肌をキモい感じにしたのが何よりいけない。


爬虫類が得意な女子って稀だし、肌に出来たニキビを女子は恐ろしい程気にする生き物だからね。


これが多数派。だから私は悪くない。


「ま、魔王様、これからいかがなさいましょうか?」

四天王の一人ベリアルが、代表とばかりに口を開いた。


ん?あれ?こいつベリアルで合ってたっけ?


よく分かんないけど、ベが付くのは間違いないし、ここは合っているという事にしておこう。


「好きにしろ」

後、いかがなさいましょう?とかふわっとした事を聞いてくるな。質問は具体的にが社会人としてのマナーだぞ。


「はっ。魔王様の仰せのままに!」

「仰せのままに!」


ベリアルが言い、四天王全員が声を揃える。

何も仰せってないけど、こいつらは一体何をするつもりなんだろうか。


『流石は魔王木陰ちゃん。とても大胆な命令です』

「そうなの?」

『魔王は魔族を統率する者でもありますから、統率者が好きにしろという事は、魔族はそれはもう、好き勝手にするという事を意味していますから』


「それって、マズかったりするの?」

魔族が好き勝手したからと言って、魔王にはなんの損害もない気がする。人類が魔族と敵対してるとかなら、人類に甚大な被害が出そうな気はするけどね。


『少なくとも、勇者が誕生する条件は満たすのではありませんか?人族のピンチに勇者は立ち上がるものですから』

『それは、確かにマズそう』


魔王の天敵が勇者って事は、あまりゲームをしない私でも分かる一般常識だった。

でも、今更四天王を止める事はできない。

だって私、アイツ等の連絡先知らないもん。


スマホみたいな便利アイテムがこの世界にあるかどうかは知らないけどね。


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