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魔王とエルフの女王③

目の前には巨大な湖がある。

予想が正しければ、この場所にこそ大神木があるのだが、目を凝らして見た所で大神木が見える事もなかった。


カンストスキルで隠匿されている以上、遠かろうが近かろが、見えない者には見えないのである。


私クラスになれば、履歴書を開示させる事はいつでも出来るんだけどね。株式会社木陰は透明人間であっても、きちんと面接します。学歴フィルターもありません。 


て事でいるなら見せて貰おうか。君の履歴書を。


ユーリ・エルフレア

賢樹、大神木


レベル12

HP120000

MP120000

TP120000


力120000

魔力120000

素早さ120000

防御力120000

器用さ120000



スキル

風魔法レベル8

治癒魔法レベル7

回復魔法レベル7

魔力無効結界レベル3

千里眼レベル8

風の衣レベル7

念話レベル5

指揮レベル5


パッシブスキル


予知レベル6

隠匿レベル6

天災レベル6

厄災レベル6


EXスキル


成長

光合成

賢樹の光

奇跡


樹齢12000年を誇る大樹。意識を持ち知識を持つ。五年に一度大いなる姿を現す事で、エルフ達の信仰を集めている。

森に許可なく訪れる者には天災を与え、森を穢す者には厄災を与える。


こんなのが世界に七本も埋まってるとか怖っ。

てか、エルフさん地味に世界征服完了してますやん。世界を手中に納めてますやん。


『妾が本気を出せば一夜にして、世界は手に入る』みたいな事、アビスは酔って言ってたけど、もう手に入れてますやん。


人族と魔族を滅ぼすのに、一夜掛かるって意味かもしれないけどさ。


「どうじゃ?妾の娘達は?中々壮観であろう?」

「うん」


姿形は見えないけど、樹齢12000年はヤバいと思う。神社にある樹齢うん百年の御神木の大きさを考えると、絶対に凄い。


しかも、生産者はアビスだし。


『見えておらんくせに』

「心の目で見てる」


我々は例え目に見えない存在であっても想像し、敬意を表す事のできる種族なのです。八百万の神々に感謝を。

私は心の中で祈りを捧げた。


『それは、良い事じゃ』

「アビス、まだ、夜じゃないよ?」


なんでしれっと隣にいるの?


「気にするな」

「女王がいたら目立つ」


弱くなったとはいえ、まだまだ余所者に対する視線は痛々なのに。


「妾の姿を知っている者は、ここにはおらんし問題ない。見慣れぬエルフが、余所者に興味を出したとしか思われんよ」

「そう。ならいいや」

「あっさりと信じるのじゃな」


「疑っても意味ないし、よくよく考えると散々目立ってきたから、今更でもある」


侵入者として捕まったり、鎧人間としてエルフレアでは炎上してバズったから、今更目立つ事を気にしても仕方がなかった。


ロストでは散々注目されまくって、集まる視線には慣れたし、少しの事では動じない精神を私は持っていた。


「木陰は罪人として捕まっていたのであったな」

「何もしてないのに」

「エルフは余所者には敏感じゃからな。許せ」


アビスはにこりと笑顔を向ける。

15000歳のババァ感皆無。芸能界の美魔女とやらもこんなのを前にしたら微魔女に降格して、発狂してしまうに違いない。


「ん?なんじゃ?妾の顔をじっと見て」

「祭りまで、一緒に歩くのかなって?」

「嫌か?」

「いや」

「ガーン。やっぱり妾、木陰に嫌われておるのか?木陰は妾の事嫌いなのか?念話も阻害しおったし、妾、嫌われておるのか?」


嫌という意味ではなく、どっちでもいいと言う意味で答えたつもりだったけど、アビスは面白い位に取り乱した。言葉というのは本当に難しい。でも、面白いのでこれはこれでアリ。


「冗談」

「なんじゃ冗談か。木陰は人が悪いの」

「冗談の冗談」

「つまりやっぱり、妾の事が嫌いって事かの?なぜじゃ?嫌な所は直すぞ。妾はこう見えて素直で良い子なのじゃ」

「冗談」

「い、一体どっちなのじゃ…」


アビスが疑心暗鬼の視線を向けてくる。

エルとはまた違ったクソガキのアビスは、本当に可愛らしかった。




出店に神輿に花火。これが一番オーソドックスな祭りだと私は思う。中には裸で踊り狂ったり、牛やら馬やらに追い掛けられたり、トマトやブドウやらをぶつけ合ったりする祭りもあるけど、これはレアでニッチな部類だと思う。テレビやネットで流れまくってるから、身近には感じるけどね。


で、アビスの聖誕祭はというと、私の知っている祭りとは明らかに一線を画していた。


簡単に言えば、兎角騒がしいのが私の知ってる祭りなのだか.アビスの聖誕祭は、とても静かなものだった。


出店はないし、花火もない。

誰も裸にならないし、物をぶつけ合ったり、何かに追い掛けられるという事もない。


今はただ静かに、湖の上で数人のエルフが舞っているだけだった。


鳥の囀りも虫の音さえ聞こえない。

風の音も川のせせらぎもない。


それでも、荘厳で壮大な【音】は確かに聞こえていた。

エルフ達が舞う湖の上に、まるで霧が晴れるようにして、巨大な大神木が姿を現す。


「…!!」


大神木の迫力に思わず声が出そうになったものの、大神木の迫力に思わず息を呑んでしまう。


アビスが自慢したくなるのが良く分かる。

これは、確かに凄い。


大神木が姿を現してからも、エルフの巫女達は舞い続け、巫女の舞いを彩るように、蛍のような淡い光が、大神木の葉からふわふわと降り注いだ。  


何処までも静かで美しい光景は、まるで一つの芸術作品を観ているようだった。


私はふわふわと落ちてくる光にそっと手を触れてみた。暖かな光は触れた瞬間に、更に小さな光になって霧散していく。


EXスキル賢樹の光。

これで100年の豊穣が約束され、明日からも美味しい野菜と果物が収穫される事になる。


エルフの男にハゲがいないのはきっと、この光をふんだんに浴びているからだろう。


神聖な光景を眺めながら、私はそんなしょーもない事を思った。


てか、大神木でか過ぎ。木というより山なんですけど。高さ1200メートルに半径120メートルとか、山なんですけど。


こんなのが世界に7本。

しかもステータスは四天王クラスだし、これはまごうことなき大神木ですわ。


光が雪のようにしんしんと降り注ぐ中、エルフの多くが両膝をつき、両手を合わせて祈りを捧げ始める。


神聖な事に祈るのも、こうしたポーズを取るのは、世界や種族が違っても同じらしい。私も見よう見まねで、大神木に祈りを捧げた。


ついでに、何かいい事ありますようにと、願いも伝えておく。


世界平和は願わない。

だって私魔王ですし、願いが叶ったら私が死ぬって事ですし。


「世界が平和でありますように」


隣には、私の死を願ってる美少女がいるんですけどね。


「祈ってる所申し訳ないが、大神木はエルフの願いを少し叶えるだけじゃから、お主等の願いは届かぬぞ」


「じゃあ、おらの願いはどうなるべさ?」

「それは、人族の神に祈れ」

「私の願いは?」

「木陰は、自分でなんとかできるじゃろ」

「ガーン」


確かに私は魔王だし、めっちゃ強いし、チーターズブックとかもあるけど、面と向かって言われると少しショックである。


「仕方ないの。ならば妾が一つ願いを叶えてやる。言うてみるが良い」

「ほんと?」

「本当じゃ」

「なら…」


元いた世界に返して欲しい。

そんな願いが頭を過った。ずっと考えないようにしていた願い。

精神さんが、抑えてくれていた願い。


社内ニートに戻るのは嫌だけど、私は帰りたかった。


「どうしたのじゃ?」

「ううん。やっぱりいい」


アビスの持つ魔術の才能や奇跡に賭けてみるのもありかもしれないけど、それで無理だった場合、精神さんがあっても寝込む自信が私にはある。


何より、もし戻れるのであれば、ちょっとまだ戻るのは早いかな~って。

だってまだ世界を満喫してないし、明日から職場で社内ニートに復帰とか無理。


エンドレスエイトは怖いけど、終わりが見える夏休みはいつだって延長希望なのだ。


つまり出来ても出来なくても、この願いをアビスに伝えるのはまだ早いって事。希望は取っておかないと。


「願わぬのか?」

「うん。タイミングが来たら言う」

「その時、妾が素直に願いを聞くとは限らんぞ」

「大丈夫。アビスは優しいから」

「なっ。ふむ。まぁ、妾は優しいがの」


アビスは少しだけ、頬を赤らめた。

延長された夏休み、どう楽しもうかな。


ほんの少しだけ、心を躍らせている自分がいた。

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