ある日森の中
ハローハロー木陰ちゃんです。
私は今、森の中を歩いています。
森の中といえば、定番の出会いがありますよね。そうです。熊さんです。
花(食人植物)咲く森(食林地帯)の道、熊さんに出会ったのです。
「グガアァアア!」
熊さん。めっちゃ叫んでます。
五月蝿いし、臭いです。
なんでこんな、熊さんと出会うような危険な道を歩いているのか?って。
道に迷ったからです。
万里眼を持つのに、道に迷う事なんてあるのかって?
あります。
だって今、迷ってるじゃないですか。
「可愛い熊さんだべ」
「そう?」
5メートル位あるし、牙でかいし、涎ダラダラだし、毛先固そうだし、目玉飛び出てるし、なんか臭いのに?
エルの美的センスは絶望的に狂っていた。
エルなら、魔王バージョンの私も格好いいとかいって、誉めてくれるかも。
あの姿に戻る事は、多分ないけどね。
なぜなら、鑑定による身バレは、チート阻害によって完全に防がれるからだ。
美少女状態と魔王状態とで、ステータスが変わるわけでもないし、身バレしないとなれば、わざわざ戻る必要なんてないもん。
私は魔王という本アカではなく、美少女という裏アカで生きてゆくのです。
裏アカ女子最高。
「ギシャアアアッ」
熊さんが再び咆哮を上げる。
そろそろ襲ってくるかも、とか思ったけど、ギョロギョロの目玉をこちらに向けているだけで、全然そんな事はなかった。
何かしらヤバい魔法を唱えてる可能性もゼロじゃないし、取り敢えず鑑定。
履歴書チェックの時間だ。
ワイドグリズリー
森の覇王
レベル45
HP9830
MP98
TP9830
力9830
魔力98
素早さ9830
防御力9830
器用さ983
スキル
爪撃レベル3
咆哮レベル3
パッシブスキル
本能レベル9
裁きの森に君臨する猛獣。
人族にも魔族にも組しておらず、縄張りに入った者は問答無用で切り刻む。
蜂蜜が好き。
気になるメスグリズリーとこの戦いが終わったら結婚する予定。
本能のスキルによって死を悟っている。
「鑑定して良かった」
鑑定さんありがとう。
てか、熊さん、死亡フラグビンビンに立てた状態で魔王の前に現れんなし。
私が冷酷非道な一般通過魔王だったら、死んでましたよ?熊子ちゃん泣きわめく事になってましたよ?
「去れ」
という事で私は優しく熊さんに語りかけた。キモい動物相手に面倒なやりとりを増やしたくないので、威圧と絶対王政のスキルも発動させておく。
スキルの効果を説明するなら、相手をめっちゃビビらせて言うことを聞かせるって感じのヤツ。
やれる事はもっとエグいんだけどね。
「はい。帰ります。ごめんなさいでした」
熊さんはしっぽを巻いて逃げ出した。
めっちゃ普通に話すやんお前。
こわ~。
「逃げていったべさ。おらにビビっただか?」
「人に背負われておいて、そんな事言える、エルにビビる」
「テレるからそんなに誉めないでけろ」
「誉めてない」
「なら、誉めてけろ」
「エルは生きてて偉い」
それ以外には誉める所ないです。
「エヘヘ」
何か喜んでるし。
「進もう」
熊さんはいなくなったし、気持ち悪い花や木もいつの間にかへなへなに萎れたお陰で、道が分かりやすく開けていた。
このまま進めば裁かれる事もなく、森を抜けられそうだ。
魔王、無罪ってね。




