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【明けぬ獄夜に縋る糸】~少女の愛が届かない 異世界と繋がる人外暗躍復讐譚~  作者: 三十三太郎
2章ー紅天女の黒い華

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因縁はすぐそこに


 その後、フレイヤは一人暮らしのマンションへ“あかいくつ”灯塚裕理(ひづかゆうり)護衛の(もと)送られていった。

 そのまま裕理は、そのマンションで警護に当たるらしい。


 窃盗団の目的がどこからか情報を得た呪物であれば、持ち主の護衛は要らないのではと思う。 

 だが協力者とはいえ、あくまで一般人のフレイヤに危険が無いよう念のため護衛するそうだ。


 翌日。

 カルタが交代でフレイヤの護衛に当たり、俺と銀伽藍、リンカとクジャク、そして灯塚裕理の5名で近くの義瑠土支部へ向かっていた。


 「今回の潜入にあたり応援人員が来ることになったのですが…………はぁ」


 街中を徒歩で進む中、灯塚裕理が重いため息をつく。


 「なにかあったの?」


 「犬神(いぬがみ)が来ます」


 「………………………伽藍は、あの人苦手」


 裕理から聞いた名に反応し、烈剣姫がストレートに拒否を示した。正義を重んじる少女が、ここまで他人に嫌悪感を露わにするとは。


 「応援ってことは魔導隊だろう? 隣にいる“あかいくつ”と同じく、君が目指してる場所に居る1人だ」


 「一度会ったけど、あの人は……正しい心を持って魔導隊に居るように見えなかった……」


 「魔導隊は警察組織や義瑠土からの選抜だ。実力主義には変わらないだろうけど、体裁もあるだろうし、そうおかしな人間は――」

 

 「見た目と中身、両方が後ろ暗いあなたには遠い世界ね。解ったようなこと、言わないで」


 見た目は関係ないだろう。

 出かかった言葉は、銀伽藍の本気の不機嫌を察して飲み込む。


 「私、ギルドに行くのは初めてです、クジャク様」

 「こっちの世界のギルドはどんな感じなんだろうね。見極めるにはいい機会だ」


 クジャクとリンカは、親子のように仲睦まじく後ろを歩いていた。

 相変わらず異世界人特有の美貌を持つ2人に、周囲の視線が集まる。


 横断歩道。

 ビル街の大通り。

 そんな道なりに一喜一憂するリンカと話す烈剣姫。


 彼女の表情がやっと和らぎ、少女らしい笑顔が戻った頃、目的の義瑠土支部に到着する。


 ギルドという異世界組織の名称をそのまま当て字で名乗る、支部であり管理する国が異なる別組織。


 コンクリート建築に、高級感のある塗装を施された建物。

 自動ドアをくぐれば絨毯(じゅうたん)と、整頓が行き届いた受付窓口が出迎える。


 「ラコウにあるギルド支部とは雲泥の差だね。ここと比べりゃ、アッチは山賊のねぐらだ」


 「わあぁ――綺麗ですね七郎様」

 「帝海都に近い義瑠土支部は設備が良い。場所によっては、廃れた役場みたいな所も多いよ」


 「役場……ですか?」


 「国の行政事務を行う施設というか……ラコウに似たような場所は無かった?」


 「ええと……ラコウでは領地を統括する、いくつかの貴族があって……。場所ごとに統治のやり方は違いますが、犯罪者は警邏(けいら)隊が捕まえてっ、街に降りてくる魔物は貴族に仕える武者が倒すのですっ。……貴族家同士で起こる(いさか)いの方が、魔物なんかよりずっと怖いですけど……」

 

 ラコウではあらゆる危険が身近なものらしい。修羅の国すぎる。

 行政事務から物騒な話にすぐ繋がるあたり、リンカもそんな国を生き抜いた人間なのである。


 普段の健気で可愛らしい様子から、忘れそうになるが。


 

 「クジャク様?」



 女主人の空気が変わったことに、いち早く気づいたのはリンカだった。

 先ほどまで、日本の街並みを楽しんでいた顔は何処にいったのか。


 親の仇を見つけたような()で、視線を奥へ。


 「ッ、ぬかったねっ。こんな近くに来るまで、気づかなかったってのはっ」


 火を思わせる赤髪が揺れる。彼女が息をするたびに、周囲の温度が上がっているような錯覚。

 

 「(違う。本当に、燃えるように熱い)」


 魔力が漏れている。普段の自若泰然(じじゃくたいぜん)とした彼女からは想像できない形相。


 「オイ、何やってんだ。義瑠土に犯罪者を連れ込むって、裕理ちゃんはやっぱりバカってことだな。なんで魔導隊やってんだよ」


 俺を含め全員がクジャクの様子に驚いていた時、奥のドアから男が現れた。

 スーツを着る若い男であるが、嗜虐的に歪んだ表情が嫌悪感を抱かせる。その表情こそが、男の内面をすべて物語っているようだ。


 「犬神……犯罪者とはどんな意味です? 彼女たちは協力者で――」

 「はあ? 公共の場で魔力垂れ流すババアが真っ当なワケねぇだろ。オマエ間違ってるよ。ハイ論破」


 会って数秒でわかるほど不愉快な男であるが、クジャクの視線は動かない。

 男の後ろ、扉の奥を凝視していた。


 「なぁんや、赤毛の(めす)が怯えてるさかい、(あつ)うて(かな)わんわぁ」


 聞こえたのは、腐った果実を思わせる甘ったるい声。

 黒のドレス、その長いスカートの下でヒールが ‘コツ、コツ’ と床を叩く。


 男にしなだれかかる様に立ったのは、ラコウ人。

 リンカと同じ闇色の肌、血色の唇を舌で濡らす。


 「レンメイ……!」

 

 「奇遇やなぁ……クジャクぅ」

 

 纏わりつく、蜘蛛糸の気配。

 悪意の糸は既に俺達へ絡みついていた。


読んでいただき、ありがとうございます。

少しでも面白いと思っていただけましたら、

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