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【明けぬ獄夜に縋る糸】~少女の愛が届かない 異世界と繋がる人外暗躍復讐譚~  作者: 三十三太郎
2章ー紅天女の黒い華

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華の想い


 枝を集めて火を(おこ)す。

 光が漏れないように小さく、なるべく枝葉で周りを覆う。


 「“絡新婦(じょろうぐも)”がこんなトコまで追ってくるとは……抜かったね」

 「きっとカルタ(ねえ)さんが追っ手を撒いてくれます。それまで隠れて……」


 ――カルタ姐さんの身が心配だけど信じるしかない

   私がしっかりしなくちゃ……


 クジャク様の体は病魔に蝕まれている。

 かつての鉄火(てっか)女傑(じょけつ)は、衰え見る影も無い。


 「(だからこそ今、恩返しを……助けになりたいのに)」


 ヤツメの家から逃げた私を下働きとして(かくま)って、娘の様に可愛がってくれた日々の記憶にいつも心が救われる。


 浅い呼吸で赤い着物の胸元がはだけ、汗が胸の谷間に伝う。自分が(まと)う汚れた着物でふき取るしかない。


 「(安全な場所が見つからない……どうしよう)」


 隠れたところで、此処は土地勘の無い山の中。

 それにもう何日も、まともな物を食べていない。


 ――最後に食べた川魚と、まん丸のネズミ……おいしかったな


 ラコウで商売敵の絡新婦(じょろうぐも)に脅かされ、クジャク様の伝手(つて)で異世界に渡ってからも彼らは執拗に追ってきた。

 

 ニホンで使えるお金も無い。誰かから盗むことをクジャク様は許さない。


 国全体で食文化が貧しいラコウ。

 肥沃な平地が少なく、穀物は育ちにくい。

 主食は山でも育つお芋で、肉や魚は強力な魔獣蔓延(はびこ)る山海でしか手に入らない。

 

 そんな国の、小さな貿易商の下働きとしては、いい暮らしをさせてもらっていたと思います。

 貧しさには慣れてるけど……でもやっぱり……お腹がすいた。


 「誰? 追手じゃあ、ないようだ」

 「っ、クジャク様」


 うかつでした。近くに誰かいる!

 絡新婦の追手がもう!? カルタ姐はっ?

 

 力の入らない体に活を入れ、必死に構える。


 「それ以上、近づかない……で……」

 

 「――そんな」


 暗闇から歩いてきたのは黒髪で……暗い目をした男の人。

 

 クジャク様と違い、私は翻訳式の刻印を体に入れていないのです。

 

 彼が発する言葉が理解できない。

 でも敵意はまるで感じない。暗い目で私を強く見つめている。


 顔が熱い。とっても強い想いが、彼の眼から伝わった。

 怖くない……年上の男の人。

 

 ――そんな人、初めて


 安心出来る状況でもないのに、私の中の女が自分のみすぼらしさを恥じる。


 「どうして、そんな目で私を見るんですか?」

 

 私に触れようとした彼の手は、途中で力なく地に落ちる。

 それでも目の前に蹲る(ひと)が私……リンカを見て泣いているのだと分かった時、触れたいという気持ちを抑えられなかった。


 初めて触る、男の人の肌。心臓の鼓動が高鳴る。


 彼は小さく、何かを呟いた。


 「真理愛(まりあ)


 彼がなんと言ったのか、私にはわからない。


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