表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/320

初代魔導隊(1)


 魔導隊(まどうたい)として活動し、はや1年。

 これまで魔獣の討伐を主な戦闘経験として積んできた。

 魔導隊の黒鎧(くろよろい)にも細かい傷が増えてきたが、大きな破損は無い。この鎧のおかげで、魔獣の牙から何度救われたことか。


 今は、魔犬の群れが目撃された(けん)まで大型車で移動している最中。


 「ふふ~ん」


 虎郎が愛用の剣と鎧を磨きながら鼻歌を歌っている。

 俺は彼女の鼻歌をBGMに、璃音と盤上遊戯に勤しんでいた。

 戦況はこちらが劣勢。


 「七郎は一発逆転のロマンを追い求め過ぎなんだよ。もうボクの勝ちは揺るがないね」

 「う~ん」


 困った。本当に逆転の目が見つからない。


 「そういえば墨谷。この前の休暇で家に帰ったんだろ? どうだった?」

 「あ、アタシも気になってた」


 愛魚(まな)の隣に座る鋼城(こうじょう)と、手入れを止めた虎郎が俺の里帰りについて聞こうとする。

 彼らが俺の帰省という、つまらない内容に興味を持つのには理由がある。


 「…………相変わらず、祖母には俺が服役中だと思われてたよ。“今度の仮釈放はいつだい!?”……だってさ」


 「くっ……あははははははははは」


 鋼城と虎郎は大爆笑。璃音も笑いをこらえきれず、愛魚(まな)ちゃんも噴き出す始末。

 だから言いたくなかったんだ。


 俺達の近況は、家族にも詳しく説明されていない。

 魔導隊として活動していることは伏せられ、適当な国の活動に従事していることになっているのだ。

 

 魔導隊となってから、情報を漏洩しないことを条件に全員一度家に帰され、家族と再会している。

 しかし俺の祖母は、なぜか俺が逮捕され刑務所でお勤めしていると思い込んでいた。

 

 国の説明役はきちんと妥当な理由をでっち上げ祖母に説明したが、祖母は俺が捕まったのだと思い込んでしまったのだという。


 「(俺はそんなに、ナニカしでかしそうだったのかい? ばあちゃん……)」


 和気あいあいとした空気。

 

 これは上辺(うわべ)だけのものだ。自分達なりの息抜き。


 本当は皆疲れ切っている。

 度重なる戦闘、不死者を処理した際の人殺しに似た罪悪感。


 ……人殺し……そう、俺達が相手取るのは魔物だけじゃない。突発的に魔法への適性を得て、それを悪事に利用する人間への対処も仕事。

 魔法への奇跡的な適応力の高さで、詠唱知識も無しに火炎魔法を街中で放つバカもいた。


 考えてもみて欲しい。

 身体検査や金属探知機にも引っかからない丸腰の人間が、突然火炎魔法と言う手りゅう弾を握る。

 国もこういった魔法による犯罪には手を焼いているのだ。


 市民に犠牲者を出した魔力適応者……第2世代魔法使いで構成された武装集団を制圧した時から、俺達の心は暗い。


 「……はぁ、久々にこんな笑ったわ。ありがとね七郎」

 

 「こんな喜べない感謝ある?」


 もうすぐ魔犬の群れが目撃された土地に着く。

 俺達は無理にでも笑いながら、到着までの道行(みちゆき)が楽しい時間となるよう努めた。


『ブックマーク』と★★★★★評価は作者の励みになります。お気軽にぜひ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ