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【明けぬ獄夜に縋る糸】~少女の愛が届かない 異世界と繋がる人外暗躍復讐譚~  作者: 三十三太郎
夜話ー前

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異世界エルフのスパルタ教育

男の娘ってイイですよね……。


 息が切れ、汗が滝のように流れる。――どうしてこんな事に


 「気合を入れろ! もう10週!」


 気温が低いとはいえ、運動による熱は体の中に籠っていく。

 線の引かれた広いグランウンドを、集められた魔法使い5人は死に物狂いで走っていた。


 「も、もう無理……です」

 「ダメよ愛魚(まな)ちゃんっ走ってぇぇぇ」


 虎郎(ころう)が死にかけの愛魚に、肩を貸し立ち上がらせる。

 全員が必死になるのは、後ろから迫る鬼教官が恐ろしいから。


 「 【水玉弾(すいぎょくだん)】 」


 魔法の炸裂(さくれつ)音が後方から聞こえた。

 

 詠唱を省略した弱い水魔法だとニーナラギアール……ニーナ教官は言っていたが、とんでもない。

 ボーリング玉と同じ重さの水球が降ってくるのだ。

 地面に着弾した水球の飛沫ですら、当たれば驚くほどの衝撃を感じる。


 初めて見る憧れの魔法は、俺達を追い立てる恐怖の鞭。


 「あははははははははっ。さあっ死にたくなければ走れ!」

 

   「「「「「もう(いや)(だ)ぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」


 今、5人の心は1つとなっていた。



 5人全員が集められた初日。

 異世界との外交官を始めとする大人達に、改めてゲートや魔導隊(まどうたい)について説明された。

 自分たちの身柄は国が預かる形となり、残念ながら帰宅が許されないとも。


 アパートに1人残した祖母が心配ではあるが、そこは国の人間が上手く調整しているらしい。


 「どちらにしても、君達は此処に留まるしかないんだ。時間は有効に使わないとな」


 エルフの有無を言わせない笑顔を前に、俺たちは強制的に哀れな生徒にされた。

 彼女を絶対者とした、女王の教室。


 ――アレは脅迫と言うんだ……。


 結局のところ俺達に、彼女の教導(きょうどう)を拒否する権利は……最初から無かったのである。

 

 ・

 ・

 ・


 体力づくりの後は座学。

 普通、行う順番が逆じゃないか?


 「いいか。ウィレミニアと違い日本では魔力が――」


 魔法や魔力についての基本知識。


 「魔法に適性の在る人間には、魂と肉体に魔力を流す回路がある。その魔力の道を使い肉体の強化を……」


 身体強化の方法について。


 「寝るな!!」

 「ふがっ!?」


 超えられない上下関係。


 1ヶ月が瞬く間に過ぎていく。

 ニーナ教官による教導、その中で毎日必ず行われる訓練があった。

 5人をチームとした、戦闘訓練である。


 「いいわね。今日こそあの尖り耳の鼻を明かしてやりましょ」

 「異議なし」

 「どうやって彼女の魔法を()い潜れば……」


 目の据わった虎郎に、俺も同じような顔をして返す。

 鋼城勝也(こうじょうかつや)も、連日体に(あざ)を作る魔法への対策に頭を悩ませる。

 

 「や、やっぱり……まだ怖いかも」

 「……フン」


 鷲弦(わしづる)愛魚(まな)は戦闘への恐怖を拭えず、璃音(りおん)は相変わらず慣れ合う気は無いと言った様子。


 グラウンドの隅で行う作戦会議。

 この訓練のルールは、教官であるニーナラギアールの背中を地面につければ合格。

 身体強化と殺傷能力の無い訓練用の武器を使い、5人一斉にかかる。


 「いつでもイイぞー」


 すでに教官は杖のみを持ち、生徒らが動き出すのを待つ。

 細身で非力に見える彼女の魔法と徒手格闘に、連日惨敗を(きっ)しているのだ。


 最初は軽装の教官に武器を向けることに戸惑ったが、その躊躇(ちゅうちょ)は必要ないと容赦なく分からされた。

 

 虎郎は何となく選んだ、刃の潰れた直剣を気に入り愛用。

 鋼城も同じく剣、それに1m程度の盾を構える。


 鷲弦はなんと自前の弓を持っている。

 可愛らしくピンク色に着色された、アーチェリーで使用する競技弓。

 弓に付けられた名前は愛魚スペシャル。

 彼女は、アーチェリー大会で優勝経験のある選手であった。 


 璃音も変わったモノを手に握る。

 登山用のピッケルである。意外なことに登山が趣味らしい。


 「(どうりであの過酷な体力作りに付いていけるわけだ)」

 ――むしろ俺の方が、体力面では負けているかもしれない。


 ()は「野蛮なモノは持ちたくないね」と施設に用意された武器は選ばなかった。

 自前の為ピッケルの刃は潰されていないが、彼には戦闘訓練への参加意欲が無い。振り回したところでニーナ教官に通用するかは別として……。


 そう、彼。

 初対面では女子だと思っていたが、彼は(れっき)とした男子であったのだ。

 施設に在る風呂で、大きな衝撃が俺を襲う。


 璃音を女子だと思っていたと、つい口を滑らしてしまった程だ。


 容姿のせいで女と思われることを嫌う彼は、それ以来俺に対して毒舌の当たりが強い。

 自業自得だとはいえ、そこまで言うことは無いのではと、不満に思うこともある。


 ……自身が持つのは、盾と手ごろな長さの棒。

 

 「(これは棍棒なのか……?)」


 俺には、特に決まった得物があるわけでは無い。

 様々な物を試し、試行錯誤していた。


 「いくわよぉぉ!」


 後ろで見ているだけの事が多い璃音を除く4人。

 各々(おのおの)悲壮な覚悟を決めて、エルフの女戦士に突貫していく。


 本日も叩きのめされるだけに終わった。


読んでいただき、ありがとうございます。

少しでも面白いと思っていただけましたら、

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