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【明けぬ獄夜に縋る糸】~少女の愛が届かない 異世界と繋がる現代暗躍復讐譚~  作者: 三十三太郎
2章ー紅天女の黒い華

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活路


 ――Gi、イ、イ、イッッ!!


 十字の光を宿す影に(さいな)まれ、苦しみながら遠ざかる怪物の一頭。

 瞬く間に水平線の向こう、視界を海沿いの陸地に阻まれた彼方(かなた)の距離へ消えていった。


 「……」


 呆然とする裕理の隣で、(しろがね)伽藍(から)は目を細め無言。


 伽藍の憧れ、初代魔導隊の背中を幻視させる男。

 霊園山で出会った墨谷七郎、その瞳に見た十字の光。

 

 「(見間違い……きっと、そう。似ているけど全然違う)」


 犬神と魚のバケモノを襲った光に、伽藍を助けてくれた強さは無い。

 あれはただ怖いだけの――。


 「しっかりしなっ」

 「っ!」


 声のお陰で我に返ると、牙が近くまで迫っていた。

 瞬時に足へ魔力を流す。


 伽藍は裕理を支えて跳び退(すさ)った。


 怪物の(あぎと)が誰も居ないビルをかみ砕く。同時に赤熱する炎糸が、“玉眼(ぎょくがん)”の刃鱗(じんりん)に絡みついていく。


 「一頭消えたからって、あたし等が不味(まず)い状況には変わらないね……」

 「爆炎符も尽きちまった」


 戦い慣れたクジャクとカルタは、海底の大隆起という状況からの復帰が早い。

 再度“玉眼”の拘束を試みるが、効果は(かんば)しくない。


 「――周りを全部焼いちまうんで、押さえてましたが……こうなったら、あたしの最大火力で」

 「クジャク様……それは」


 「待って。その前に、考えがある」

 「伽藍?」


 伽藍の言葉に首を傾げる裕理。

 竜を押さえる糸に力を込めるクジャクや、万策尽きた様子のカルタも(おおむ)ね同じ反応である。


 「あの怪物、たぶん片目が殆ど見えてない。……あの色の違う方の目。そっち側の側面からなら、頭を狙って一斉に攻撃できるかも」


 「しかし伽藍。攻撃と言っても、あの鱗と頭蓋を貫くことは……」


 「伽藍が斬る!」


 「……できるのかい?」


 「やってみせる。でも間合いの中で集中したい、その為に――」


 「そのためにヤツの死角から一斉に攻めて気を引くってワケだ。いいさ、乗ったよ」

 「クジャク様が言うんじゃ仕様がないな。頼むぜ伽藍」

 「――っ、わかりました。信じますよ伽藍」


 「ん」


 短く答え、伽藍は刃を鞘に納め集中する。

 瞑目(めいもく)、深呼吸。


 「休んでてもいいんですよ?」

 「伽藍が頑張ってる手前、寝てるわけにはいかない」

 

 炎糸を操り、“玉眼”が暴れる力を(たく)みに(そら)らすクジャク。

 魔力を(たぎ)らせる裕理を尻目に、カルタは持ち前の身体能力で竜をかく乱している。


 「そらっ!」


 タイミングを見極め、クジャクは手繰る糸へ一斉に魔力を流す。

 

 強度と力を増した糸により、態勢を崩す竜の巨体!


 “玉眼”の視界は衝撃に揺れるが、それでも明瞭。

 大昔に透明さを失った片眼は、相変わらず(かすみ)がかった世界を映す。


 そう思っていた矢先。片側のぼやけた世界が色づき始めた。

 

 鮮やかな紅色。“玉眼”がそれを認識した時、魔力を込めた3人の女傑は竜の(ふところ)に。


 魔力を纏うカルタの爪が宝石色の目を切り裂き


 「喰らえぇっ!」


 裕理の足底が首に食い込み


 「ハアアア!」 

 

 2人が離れたと同時に、傷を負った竜の頭部にクジャクの業炎が刺しこまれる。


 「ユイロウ流操炎糸術:絢火槍(けんかそう)!」 


 ―― A˝ A˝ A˝


 首を打たれ、目を抉られ、傷を焼かれるなど、たまったものではない。

 苦悶を叫ぶ“玉眼”。


 その眼前で、今まさに白刃が解き放たれようとしていた。


読んでいただき、ありがとうございます。

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