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慟哭
終わりを認められない、壊れた男のローファンタジー
失った。もう誰もいない。
男が少女の頭を抱え、呻く。
”黒牢”は破られ陽が昇れども、皆が居ないと夜は明けない。
「何故この子がこんな目に遭う!? 俺の仲間が何をしたっっ、どうして死ななきゃならなかったっ!? こんな終わり方があってたまるかっ!!」
認められない。許せない。
俺から皆を奪った世界も、誇りを捨てて悪逆に逃げたあいつらも。
「奪い返してやる。死から!世界から! 奪い返してやる奪い返してやるっ奪い返してやるっっ!!」
誓う。簒奪への復讐を。
たとえどんな手を使っても。
あいつらと同じ場所に堕ちてもいい。
いやきっと、俺はもう地獄に落ちているんだ。
この子が信じてくれた善性こそが、自身をヒトたらしめる最後の縁であったのだから。
「皆と約束したんだ。全員で朝日を見ると……必ず生きて帰ると。その約束を果たす為に。その為だけに」
男の、祈り縋るように暗闇を走る、夜が始まったのだった。