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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

王宮を追放された令嬢は、魔王軍に加入して王国を滅ぼす

作者: Tokyo Secession

「婚約破棄...?なぜですか、ユリウス殿下。」


アリシア・ルーンフォード公爵令嬢は、王宮の大広間で必死に訴えていた。彼女と王太子ユリウス・エルハルトとの婚約は、突然、一方的に破棄された。理由も明かされぬまま、彼女は王宮から追放されようとしている。


ユリウスは冷たい瞳でアリシアを見つめ、新たな婚約者エレノア・ヴァレンティーヌに腕を絡めた。


「アリシア、お前は不適任だった。エレノアこそが私にふさわしい。」


その言葉は、アリシアの心に深く突き刺さった。彼女は衝撃と悲しみを抑えきれず、涙を堪える。


「アリシア様。」


優しい声に振り向くと、侍女長のレベッカが心配そうな表情を浮かべていた。


「ここはお引き取りください。もうここにあなた様の居場所はありません。」


レベッカの言葉は現実を突きつける。アリシアはレベッカに支えられながら、王宮を去る準備を始めた。


***


アリシアは絶望し、涙を流しながら王宮を後にした。彼女は身寄りのない身となり、行く当てもなく、森をさまよっていた。


「どうしてこんなことに...。私はユリウス殿下を心から愛していたのに...。」


アリシアは一人、恨み言を呟きながら、暗い森の中を彷徨った。


「お嬢様、この森で道に迷ってはいけませんよ。」


アリシアが途方に暮れて森をさまよっていると、謎の男が現れた。彼は黒のマントを纏い、顔の半分を仮面で隠している。


「私はゼイン。魔王軍の幹部だ。お嬢様の魔法の才能に興味があり、お会いしたかった。」


ゼインと名乗る男は、静かにアリシアを見つめる。


「魔王軍ですか...私に何の用なのですか?」


アリシアは警戒心を露わにした。


「お嬢様、あなたは今、人生の岐路に立たれています。私たちと手を組めば、あなたの望む未来を手に入れることができるでしょう。」


ゼインは不敵に微笑むと、アリシアに手を差し伸べた。


「私と来てください、お嬢様。魔王軍と共にユリウス王太子に打ち勝ちましょう。」


アリシアの心に復讐の炎が灯った。彼女はゼインに導かれ、魔王軍の根城へと向かうことを決意した。


***


魔王軍の根城は、王国から離れた山奥にあった。アリシアは過酷な訓練に耐えながら、魔法と剣術を習得していく。


アリシアは昼夜を問わず、魔法の訓練に励んだ。彼女は魔族の兵士たちと戦い、強靭な肉体と高度な魔法技術を身につけていった。剣術の訓練では、ゼインから直接指導を受け、日に日に腕を上げていく。アリシアの才能は際立っており、彼女はあっという間に魔王軍の中で頭角を現した。


「なんて恐ろしい人間だ...。彼女は魔族よりも魔族らしい...。」


アリシアの驚異的な成長ぶりを見て、魔王軍の兵士たちは恐れと尊敬の念を抱くようになっていた。


アリシアはゼインの言葉に励まされ、魔王ヴァルトールからも期待されていることを知る。彼女は復讐心を抱えながらも、自分の才能が認められていることに充実感を覚えるのだった。


一方、王宮では、ユリウスとエレノアの結婚式が近づいていた。


「エレノア、君は本当に美しい。アリシアのことは忘れよう。」


ユリウスはエレノアに囁き、エレノアは嬉しそうに微笑んだ。


「はい、ユリウス様。私があなたを幸せにします。」


エレノアの言葉に、ユリウスはアリシアのことを忘れたかのように、幸せに浸っていた。


***


「魔王軍の皆様、王国への侵攻を開始します。ユリウス王太子に打ち勝つ時が来ました。」


アリシアは魔王軍の軍勢を率いて、王国への進軍を命じた。彼女は魔王ヴァルトールから絶大な信頼を得ており、この作戦の最高指揮官を任されていた。


「アリシア、油断するな。ユリウス王太子は強敵だ。」


ゼインはアリシアに忠告する。


「分かっています。でも、私は負けません。必ず勝利を掴みます。」


アリシアの瞳は決意で燃え上がっていた。


***


王国と魔王軍の戦いは苛烈を極めた。アリシアは魔法と剣術を駆使して、王国軍を追い詰めていく。


「その姿...まさか...アリシアか!?」


戦いの最中、ユリウスはアリシアの姿を認め、愕然とした。


「ユリウス!あなたが私を捨てた罰を受けなさい!」


アリシアの復讐心は爆発し、激しい魔法の応酬が始まった。


ユリウスも必死に反撃し、一時はアリシアを追い詰める。しかし、アリシアは冷静さを失わず、巧みな戦略で形勢を逆転した。激しい戦闘の末、アリシアはユリウスを打ち倒した。


「くっ...アリシア...お前の力は本物だった...。」


ユリウスは敗北を認め、力尽きた。


「さあ、ユリウス。あなたの命をもらう!」


アリシアの剣がユリウスの首元に迫る。


「待って!アリシア、お願い、私を殺さないで!」


エレノアが割って入り、ユリウスを庇った。


「エレノア、お前は生きてユリウスの悲しみを味わえ。」


アリシアはエレノアを捕らえると、ユリウスを処刑した。


「アリシア様、王国全土が魔王軍の支配下に入りました。」


ゼインがアリシアに報告する。


「復讐...できた。」


アリシアは虚ろな瞳でつぶやく。しかし、復讐を遂げたはずなのに、彼女の心は満たされなかった。


***


「アリシア様、お加減はいかがですか?」


ゼインがアリシアの部屋を訪ねた。アリシアは窓辺に立ち、遠く故郷を眺めている。


「ゼイン様...私は、復讐のために生きてきたのでしょうか?本当の自分を見失ってしまったような気がします...。」


アリシアの瞳から涙がこぼれ落ちる。


「アリシア様、あなたは何か大切なものを見失っているのではありませんか?復讐の先に何があるのか、考えてみてください。」


ゼインの言葉は、アリシアの心に重く響いた。


***


「アリシア、世界征服も目前だが、君は悩んでいるようだな。」


魔王ヴァルトールは、アリシアの様子を心配そうに見つめた。


「ヴァルトール様...私は、自分の人生の意味を見失ってしまったのです。」


アリシアは正直に打ち明ける。


「本当の幸福は、君自身の心の中にあるのではないかな?君は故郷を恋しがっているようだ。一度、帰郷してみては?」


ヴァルトールの言葉に、アリシアは故郷への思いを抑えきれなくなる。


***


アリシアは久しぶりに故郷の村を訪れた。村人たちは、魔王軍の幹部となったアリシアの姿を見て、恐れをなした。彼女が近づくと、皆が後ずさりし、うつむいてしまう。


「あ、アリシア様...。」


村長が恐る恐る声をかけた。


「皆さん、私は昔のアリシアとは違います。でも、故郷が恋しかったのです。」


アリシアの言葉に、村人たちは戸惑いを隠せない。彼女は魔王軍の幹部であり、もはや人間ではないのだ。


アリシアは村を歩き回ったが、かつての仲間たちは皆、彼女を避けるようになっていた。


「私は...もう、ここに居場所はないのですね...。」


アリシアは悲しみに暮れながら、村を後にした。


***


「ゼイン様、ヴァルトール様。私は魔王の座を退きたいと思います。」


アリシアはゼインとヴァルトールに宣言した。


「アリシア様!なぜですか?」


ゼインは驚きを隠せない。


「復讐に囚われ、私は自分自身を見失ってしまいました。もう、この世に未練はありません。」


アリシアは虚ろな瞳で語った。


「アリシア、君の決断を尊重しよう。安らかに眠れ。」


ヴァルトールは悲しそうに微笑んだ。


***


アリシアは故郷の村の近くの森で、自らの命を絶った。彼女は復讐を遂げたが、心の中の空虚さを埋めることはできなかった。


「アリシア様が亡くなられた...。」


村人たちは、アリシアの死を知り、複雑な思いに駆られた。


「彼女は、自分の人生を生きられなかったのだ...。」


村長は、アリシアの人生を悼んだ。


アリシアの死は、多くの人々の心に深い影を落とした。彼女の物語は、復讐の虚しさと、自分自身を見失うことの恐ろしさを、静かに伝えていた。

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