第2話 源田壮亮選手の物語
源田壮亮選手は、日本代表チームのショートストップである。
この遊撃手というポジションは、とても難しい。
強い打球が、いっぱい飛んでくる。
それを確実にキャッチして、一塁に素早く、正確に送球しなければならない。
「内野で最も上手い奴がやる」と言われている、花形ポジションだ。
超人達が集まる日本プロ野球界でも、源田選手はトップクラスの守備力を誇るショートだ。
安打と思われた打球でも、追いついてキャッチしてしまう守備範囲の広さ。
華麗なグラブ捌き。
キャッチしてから投げるまでが、恐ろしく速い。
そして投げられたボールは矢のような勢いで、一塁手のミットへと吸い込まれていく。
ファンはそのような美技を見て、「源田たまらん」と称賛するのがお約束となっていた。
今回のWBCでも鉄壁の守備を見せてくれると、誰もが信じて疑わなかった。
1次ラウンドで、韓国代表と対戦するまでは。
走者として塁に出ていた源田選手は、韓国の選手と交錯した際に右手小指を骨折してしまったのだ。
源田選手以上に、ショートというポジションを上手く守れる者はいないというのに。
決勝ラウンドに入ってからは、1発勝負のトーナメント戦。
失策ひとつで、全てが終わってしまうかもしれないのだ。
「今大会で、日本は優勝できないかも? 源田選手抜きでは……」
ファン達の間には、重苦しい雰囲気が充満した。
だがそんな雰囲気を、吹き飛ばすような出来事が起こる。
源田選手が、準々決勝のイタリア戦から復帰したのだ。
試合中、守備では骨折前と変わらぬ美技を見せ、打撃でもタイムリーヒットを打つ活躍っぷり。
テレビで観戦しながら、「マジか? ホントに骨折してるのか?」と零してしまった。
筆者は「怪我をおして試合に出る」ことを美談とする風潮には、否定的である。
現に源田選手も、「子供や学生は、絶対に真似しないで」と訴えている。
だが選手生命を縮めるリスクを背負ってでも、彼は出場したかったのだ。
「侍ジャパンが世界一になる瞬間、ショートを守っていたい」
その夢を、実現するために。
源田選手は30歳。
まだまだ元気だが、次回のWBCは3年後。
選手としてのピークは、過ぎていることだろう。
世界一になるチャンスは、もうないかもしれないのだ。
骨折をおして試合に出続けた源田選手は、好守備で何度もチームのピンチを救った。
特に印象的だったのは、準決勝メキシコ戦。
盗塁を試みた走者を、タッチアウトにしたプレー。
あまりに紙一重なプレーで、ビデオ判定に持ち込まれた。
メキシコの選手はスライディングしながら身を捻って、源田選手のタッチを掻い潜るという人間離れした動きを見せた。
しかしビデオ判定の結果、スライディング後に一瞬だけベースから足が離れていた。
そのわずかな隙に、源田選手が再タッチしてアウトにしていたのだ。
先にサッカーワールドカップで三苫選手が見せた「三苫の1mm」にちなんで、「源田の1mm」と名付けられたプレーである。
このプレーは大きかった。
これ以降試合の流れが変わり、奇跡の大逆転劇へと繋がるのである。
源田選手のファインプレーは、ショートの守備だけではない。
ホームランを打たれて気落ちした佐々木朗希選手にすかさず声を掛けに行くなど、細やかな心遣いもさすがとしか言いようがない。
本当に、たまらん魅力を持った男である。
WBCとは関係ない話だが、源田選手の奥さんは元乃木坂46の衛藤美彩さんである。
日本全国の少年達よ、野球選手を目指せ。
世界一にまで昇りつめれば、アイドルのお嫁さんをもらえるかもしれないぞw