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01 プロローグ

 ──はて? ここは?

 見渡すと真っ白な天井と周りには小さな机とピンクのカーテン。

 初めて見た光景に一瞬思考が止まる。

 何故かベッドに私は横たわっている。

 ゆっくり深呼吸をしてみたが、特に息苦しいこともない。


 何故? 私はここに?

 私は生きていたのか?


 思い返せば、あの時私は「死の森」と呼ばれる森へ勇者パーティーに同行して行っていた。

 そこであの……今思い出すだけでも震えが止まらない。

 今まで経験したことが無いぐらいの恐怖。

 あの悪夢のような恐ろしい魔物との出会い……


 世界最強と言われた勇者パーティーの一人が瞬殺され恐怖に慄いた次の瞬間には、呆気なく無残に次々と……

 必死で回復を試みるが、一瞬で抹殺されていくメンバー達に為すすべもなく……

 絶望を感じた私は、最後まで戦っていた勇者にその魔の手が迫った瞬間、残り僅かなMPで咄嗟に唱えた「強制転移」

 ()()()()のパーティーメンバーを()()()()を強制的に転移・帰還させる魔法。


 私はあの時、自分の死を覚悟した。あの時、必要だったのは私ではない。

 どんな強敵も斬り裂くことができる「勇者の剣」を使用できる者。世界にたった一人の勇者。

 勇者がいなくなれば、世界が終わると言っても過言ではない唯一無二の存在。

 その彼を私は自分の命と引き換えに、この世の悪夢とも言えるあの魔物から逃したはず。


 そして私は……


 何故か生きている?

 ここは何処なんだろう?


 ゆっくりとベッドから身を起こし、自分の手足が普通に動くことを確認し安堵する。そして床に立ち、床を踏みしめるように一歩ずつゆっくりと窓際へ歩み、窓から外を眺めると、目に入ったきた光景は何処かの町中? のようだ。結構人通りがあり、賑わっている様子だ。以前暮らしていた風景に似ている感じもする。


 はて? ここは?

 この建物は二階建てのようだ。そして私は一階部分に行く為に階段を、恐る恐るゆっくり降りて行く。階段から垣間見える広い空間を目にした私は、声を掛ける。


「誰かいますか~? 誰かいませんか~?」


 …………。


 返ってくる返事がないようなので、恐る恐る私は階段を下まで降りた。

 落ち着いた木の匂いがし、何処か温もりを感じさせる部屋のフロア。そして大きなカウンターと、テーブルと椅子のセットが何個かある。


 何かの店?? カウンターの中に入ると、大きめの流し台に調理台。備え付けの食器棚に大きめのオーブン。小洒落たカフェのような作りだ。

 もしかして……

 私には心当たりが少しだけあった。


 いや……まさかね……


 勇者に「強制転移魔法」を詠唱する際、私は自分の死を覚悟しながら、ほんの僅かな望みを祈ってみた。

「次に生まれ変わるなら、平穏で幸せな生活。例えばカフェなんかを営みながら、スローライフを送りたい」まるで少女のような、こんなちっぽけな夢をほんの少しだけ願ってみた。


 私の人生は常に死と隣り合わせだった。10歳の時に聖女認定されてからは、楽しいことも、やりたいことも全て制限され、常に私の側には大勢の監視役とも言える国の重鎮達。そして常に私は危険な地へ赴く勇者パーティーに同行させられた。


 人を助けることは嫌いではなかったが、私に要求されたのは、もっともっと強くなること。もっともっと皆に尽くすこと。

「傷ついた人を助けて当たり前、敵を倒して当たり前。お前は大聖女なんだから」

 ずっとこの言葉を皆に言われ続けてきた。

 激しい戦闘中も、回復と身体強化の補助魔法、合間に攻撃をと、一手に任された私は、誰も私に感謝することなどなく、MPが枯渇すれば「役立たずのお荷物」と罵られた。


 そんな生活が何年も続き、私は心身共に疲れ果てていた。

 あの日も、そんな中で繰り広げられた死闘。

 過去最大の死闘と言っても過言ではなかったであろう。



 あの時、私が自らの死を覚悟してまで「強制転移」を使用したのは、きっとそんな生活から逃れたかったのかも知れない……



 そんな中で私が抱いた、たった一度だけの小さな望み。



 もしかして??

 叶った???


 私は半信半疑で今まで何度も目にした画面を頭の中でイメージした。


『ステータス一覧』

 名前 サーシャ・フレミング

    (異世界転移者)

 称号     大賢者


 女      18歳


 レベル    999


 攻撃力    875


 防御力    999


 魔力     650000/650000


 魔法耐性   999


 敏捷     654


 固有スキル ・アイテムボックス

 レアスキル ・強制転移・空間転移

 有効スキル ・魔法作成、錬金術

 所持スキル ・オートリカバリー

 魔法    ・全属性魔法Ⅳ、補助魔法全



 見慣れたその画面には、たった一つだけ今までとは違う文字が一行だけ増えていた。


『異世界転移者』


 ──私はあの時、異世界に転移してしまったようだ……













「お忙しい中、最後までお読み頂き、大変感謝しております。」

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