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転生ものに飽きたけど推し兄弟の間に転生しました。  作者: 海人ハナ
第5話『まさか出会えないとは』
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①青春をもう一度

 フェリック・ヴェルナドット――乙女系アプリゲーム『栄国のハニー』の攻略キャラの一人。17歳。ヒロインが一人娘だったため伯爵家の跡継ぎのために分家から養子にきたヒロインの義弟であり従兄弟。茶色の髪と目、高身長が印象的。伯爵家の立派な跡継ぎになろうと勉強中の真面目で穏やかな好青年。


 これが私の記憶の中のフェリック。




















「大丈夫かい?」


「ヒェッ」


 声まで優しい。ルノアは思わずうわずった声が出てしまった。


「ああ、ごめんね。熊に襲われて恐かったよね。驚かせるつもりはなかったんだ」


 フェリックは馬から降りて長い銃を地面に置いた。猟銃だろうか。服も動きやすそうな、狩猟のようなスタイルだ。


「さ、手を」


 フェリックはひざまづいてルノアに手をさしのべた。


「ふ、服が汚れます!手だって…」


「気にしないで、さあ」


 フェリックは強引に、でも優しくルノアの手を引いて立たせた。


「この辺じゃ見ない子だね。どこから来たの?」


「えっと、王都から…伯父のオークスのところに来ました」


「ああ、オークスの。彼にはいつもお世話になってるんだ。僕はフェリック・ヴェルナドット。ブルモーリー村の領主、ヴェルナドット伯爵の息子だよ」


「……ルノア・オークスです」


 フェリックの親しげな笑顔にルノアの顔は引きつった。


 知ってるうぅぅ。あなたのルート攻略したことあるもの。っていうかフェリックって王都に住んでなかったっけ?


「もうすぐ日が暮れるし、オークスの家まで送ろう」


「え!?いや、大丈夫です!一人で帰れます!」


「でもまた熊が出てきたら大変だし、オークスの姪になにかあったら領主の息子として顔が立たないよ」


 フェリックは猟銃を背負って馬の手綱を引いた。


「乗れるかい?」


 ルノアは馬を前に予知のような感覚におちいった。


 私、乗れる。


 ルノアは鐙に足をかけた。やっぱり、身体が覚えてる。


 そのまま鐙にかけた足に体重を乗せた。ひらりと浮いた身体。とともに舞ったスカート。


 すとんと鞍に座るとスカートも落ちついた。


「………」


「………」


 見られた!


 なにが、なんて脳内でさえ考えるのが恥ずかしい。ルノアは顔が真っ赤になった。


「あの、す、すみません!お見苦しいもの…!」


 鞍の上で慌てたルノアを不快に思ったのか、馬が身震いした。前に滑りおちたルノアをフェリックが受けとめた。


「ごめんね、スカートなのに乗れるかきいた僕が悪かった。………見えてなかったから」


 嘘だ。そらした赤面がそれを物語っている。


「ちょっと失礼」


 フェリックはルノアの正面から両脇に手を入れ鞍の上に横向きで座らせた。その後ろにフェリックも乗る。


 急な接触に浮遊感。手を引かれたときよりも距離を近く感じてルノアの心臓がせわしなく動いた。


(びっくりした…)


「掴まって」


「どこに!?」


「え、僕に…あ!下心とかじゃないから!」


 焦った顔が思春期の男の子みたいでかわいい。いや、年相応か。


 フェリックと違ってルノアの中身は二十代だが、残念ながら自転車二人乗りで彼の背に掴まる、なんて青春はなかった。


「じゃあ…私も下心なんてないけど、お言葉に甘えて」


 ルノアは控えめにフェリックの胸あたりの服を握った。


 人並みの恋愛はしてきたが、二回目の青春をしているみたいでドキドキする。


 馬が歩きだしてから、二人はなんとなく気まずくて黙ったままだった。


「えーっと…貴族って繁栄した街に住んでると思ってました」


「ヴェルナドット家はブルモーリー村が領地だから本邸はここにあるんだ。でも別邸は王都にあるんだよ」


 なるほど。フェリックルートの舞台はおもに王都だった。しかしあれは別邸だったのだ。


(本邸がブルモーリー村にあると知ってたら来るのやめたかな…?)


「オークス家の馬は足腰が丈夫で良い馬が多いんだ。だからよそへ出荷したり王家へ献上したり。王都で見たことない?」


「えーっと…」


 記憶の井戸から記憶を引っぱりあげる。王都で馬、王都で馬…


「あ、見たことあります!この前荷車引いてました!」


「だろう?とくに優秀だと、競馬に出たりするんだ」


 伯父が馬の育成を…だから「ルノア・オークス」は馬に乗れたのか。


 昔、牝馬競馬の大会をオークスと呼んでいたらしい。ご先祖様は優秀な牝馬を数多く輩出していたためオークスという名字をいただいたそうな。フェリックが教えてくれた。


 フェリックはそれ以外にも優しく話しかけてくれた。


「…フェリック…様って、お姉さんいます?」


「え?どうして?」


「いや、女性に対して優しいし、話しなれてるなー、と」


 嘘。本当は探りを入れたのだ。彼がここにいるのなら、義姉のヒロインもいるのではないかと。


「うん、いるよ」


(やっぱりー!)


 それはあっさりとわかった。


 どうしよう。フェリックと会ったときはばれないように早めにおいとましたかったけど、ここまできたらヒロインにも会ってみたいかも…。明日にでも「昨日のお礼です」って訪問しちゃう?失礼かな。使用人に通してもらえないかも。


「着いたよ」


 伯父の家の前に到着するとフェリックは先に馬から降りた。


「おいで」


 あたりまえのようにルノアにむかって両手を広げた。ルノアは抵抗がなかったわけではないが、いままで散々触れあってきたこともありフェリックに手を伸ばした


 ――ガチャッ


 ときにグロウが家から出てきた。


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