④ブルモーリー村
言い訳です。長期更新できなかった言い訳だとわかっているけど…
コロナで職場がやられた。コロナ憎い!
王都を出るとすぐに田舎になる。延々と続く野原、畑、森。たまにちょっと栄えた街。
日本もそうだったなあ、と懐かしくなる。
退屈になりかけたら乗り換え駅を逃さないように気を張って、時々兄弟と会話をして、家で作ったサンドイッチでランチを済ませた。
昼過ぎ、機関車を乗り換えること二回。父の故郷、ブルモーリー村にやってきた。
機関車を降りる客はルノアたち三人しかおらず、ほかは荷物を積んだり降ろしたりする乗組員だけだった。
王都では初夏の日差しが照りつけていたが、北の田舎はまだ薄い長袖で充分だった。駅前にはなにもなく、舗装されていない道を囲むのは自由に広がる原っぱ。遠くの畑では豆粒大の人間が畑仕事に精を出している。
「おーい」
荷馬車に乗った男がこちらに手を振った。
「伯父さーん!」
グロウがぶんぶん手を振り返す。あの人が伯父――父の兄だ。
田舎で身体が資本の仕事をしているだけあって父同様肩ががっしりして身体が大きい。しかし眼鏡をかけた顔はたれ目で優しそうで父とはあまり似ていない。
「遠いところよく来たね。さ、後ろに乗りなさい」
ルノアたちは荷台に乗りこみ、伯父の家に向かった。
道中、ガタガタと揺れてお尻が痛かったが風が爽やかで気持ちよかった。畑仕事をしている人を見かけたり、荷馬車とすれ違ったが王都と比べ圧倒的に人が少ない。そのためか時間の流れもゆっくりに感じる。
「よーし、着いたぞ」
時間にして15分ほど、伯父の家に着いた。小高い丘の上にあり、隣家とは100メートルは離れている。
「馬と荷馬車をしまってくるから先に家に入ってなさい。伯母さんたちが待ってるよ」
「はーい」
ギイときしむドアを開けた。奥から話し声がきこえる。
「伯母さーん、こんにちはー」
パタパタと小走りで現れたのは中年の女性と若い男性。ルノアの記憶の井戸によると伯母と従兄弟だ。
「いらっしゃい」
「疲れただろ」
遅れて若い女性がやってきた。
「おひさしぶり、元気だった?」
この人はたしか従兄弟の嫁だ。教会で祝福を受けたときに家族そろって参列し、一度だけ会ったことがある。
「返事のお手紙にもあったけど、お腹大きい」
「臨月はまだだけどね」
そっとなでるとそのふくらみがよくわかる。
「ルノアちゃんだって5、6年後にはこうなってるよ」
「いや、ルノアはいいんで」
「大丈夫なんで」
「なにが?」
まったく返答になっていない。シスコン兄弟め。
「それより、なに手伝えばいい?」
グロウは肩をぐるぐる回した。
「いいのかい?来たばっかなのに。それにルノアは…」
「ルノアの分まで俺たちが働くって。ずっと機関車に揺られてたから身体を動かしたいんだ」
「本当、体力バカって能天気でいいよね」
「メロウは体力ねえなあ」
「む…普段事務仕事が多いだけで体力ないわけじゃなから」
「…ってことだ。ルノアはカシス探してこいよ」
ぽん、とグロウの手がルノアの頭に乗せられた。
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
「カシスは森の近くに生えてるよ。ほら、このカゴ持っていきなさい」
ルノアは伯母からパンが三つほど入るカゴを受けとると外に出た。森は来た道と反対側にあった。
カシスを採って、リキュールを作って、女性にもお酒を楽しんでもらう。わくわくしてきた!
ルノアは男女混合の店内を想像し、自然と足早になった。
草が無造作に生えている斜面を登るとすぐに森が見えた。森の手前に何本も低木があった。
「これかな」
近づいてみるとルノアと同じくらいの高さで黒い実をつけていた。一粒採って食べてみた。
「ん゛っ!すっ…ぱ!」
甘くない。これで本当に現代で飲んだようなリキュールになるのだろうか。でも砂糖とアルコールに漬けるし、ジャムやあんこだって砂糖いっぱい使うし…
迷った末、ルノアはカゴいっぱいにカシスを入れることにした。それでも木々にはまだカシスが残っていた。
「父親の故郷にこんなに宝の実があるなんて」
ルノアは森の中に目をむけた。
「森の中にもあるかな」
ルノアは森に足を踏みいれた。日光をさえぎってできた影が涼しい北国の空気をさらに涼しくさせていた。
「カシスは…ないか。ほかにお酒の材料になるものないかなあ」
影に包まれた森はまだ昼間ということもあって不気味とか恐怖といったものは感じなかった。
「あ、キノコ」
ルノアは少し奥の木の根元にキノコが生えているのを見つけた。茶色くて分厚い。
キノコのお酒か。ハードルが高そうだな。でもいい出汁が出そうだから薬屋のおじいさんが作ってたみたいに嗜好品じゃなくて健康や料理目的で…
――バキッ
遠くで枝が折れる音がした。ふりかえると木々の間から茶色い毛皮をまとった動物が四つん這いでこちらを見ていた。――熊だ。
次の一手を判断する前に熊がこちらに突進してきた。恐怖でとっさに立ちあがった。熊は意外と速く、もうすぐ近くまで来ていた。どうしよう、足が動かない。
――バァンッ
どこからともなく銃声がした。驚いたのはルノアだけでなく熊も同じで、ターンして逃げていってしまった。
「大丈夫かい?」
背後から優しい声とともにサク、サクっと草を踏む音がした。しかしリズムは人間の歩行にしては不自然だった。
ルノアはふりかえった。と同時に腰を抜かした。安心したのではない。
――この人。
逆に馬に乗った人物に驚いたからだ。
――ゲームの攻略キャラの一人だ!
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カシスって日本だと青森なんかで栽培しているそうです。
なので青と森でブルモーリー村。




