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転生ものに飽きたけど推し兄弟の間に転生しました。  作者: 海人ハナ
第4話『新しいお酒、新しい出会い』
13/18

②薬屋さんで

 ルノアはベッドに入っても甘い酒のことを考えていた。


 今まで仕入れをしていたグロウや父が知らないんだったらこの世界にない可能性のほうが高い。


 醸造所に作ってもらって…いや、この世にないものを作ってもらうってどんな説得すればいいんだ。それよりもリキュールを手作りして自家製酒として売ったほうがいいかな。オークスブランド的な。


 ルアノはすこしずつ眠りの底に落ちはじめた。だんだんまぶたを開いていられなくなる。


 試しにリキュールを作ってみて…


 あ、リキュールってどうやって作るんだろ…























 そうだよ!リキュールの作り方知らなきゃ作りようがないじゃん!


 翌日、目を覚ましたルノアはまたしても頭を悩ませていた。


 前世ではリキュールが好きだったけど、作り方までは知らない。


 今までの経営で不便はないけれど、どうせ思いついたのならやってみたいし、女性客にも飲み放題を楽しんでもらいたい。


 ルノアは頭をかかえた。


「ルノア、ちょっとおつかい頼まれてくれない?」


「はーい」


 メモと財布とカバンを手に昼下がりの街へとくり出す。買うものはにんじんにジャガイモにお肉に…なるほど、今日はシチューだな。


 冷蔵庫がないこの世界、肉は最後に買おうと八百屋へむかった。


 道中もリキュールのことを考える。


 梅酒って梅と氷砂糖を一緒に瓶詰めして作るんだっけ?あれ?これじゃ梅ジュース?勝手にアルコールに発酵するのかな。んなわけないか。梅と氷砂糖と…お酒を入れるのかな?なんのお酒?ワインやウイスキーはもう風味がついてるし。なんの風味もないお酒ってあるかな?あと氷砂糖は?氷砂糖なんてある?


 八百屋に着き、元気な店主からメモに書かれた野菜を買って歩きだしたときだった。


「ルノア!」


 呼ばれなれた名前に反応してふりかえると、見覚えのある同い年くらいの少年がこちらへ駆けてきた。彼はきょろきょろして一安心したあとルノアへ笑顔をむけた。


「今日は一人か?」


「ええ」


 ………だれだっけ?


 見覚えはあるんだよなー。でも出てきそうで出てこないというか。古い引き出しが開かない感じ。


 ルノアは例の井戸から井戸水を汲みあげるイメージでルノア・オークスの記憶を探った。


 ………わからん。


 ってことは記憶に残ってないってこと?せめてグロウやメロウみたいにゲーム主役級のイケメンだったらなあ。


 にしてもこの子、頬を赤らめて嬉しそうで。なんか私のことすきっぽい…


「!ミシェル!」


「そうだけど?」


 思い出した!十五歳のときデートに誘われた薬屋の息子だ。


 もしかして二年前のデートを暴露したあと本当にグロウとメロウになにかされたのだろうか。だからきょろきょろしたり一人かどうか確認したのだろうか。


 せっかく好意をもってくれたのに申し訳ない気持ちになる。


「久しぶりだな。えっと…今時間あるか?」


「いや、お肉屋さんに寄って帰らなきゃならないんだけど…」


「そっか…じゃあちょっとうち寄ってお茶していけよ!」


「え、でもお店があるし…」


「一杯だけだから!」


 やや強引に手を引かれる。兄弟が迷惑をかけたこともあって断れず、ミシェル一家が経営する薬屋についた。


 店内に入ると薬独特の匂いが混じった空気に包まれる。棚に並べられた瓶には粉、液体、葉っぱなど様々な形の薬がある。


 これを一人一人に合わせて売ったり調合したり、すごいなあ。


 と思う前に床で腕立て伏せしているおじいちゃんに意図せずくぎ付けになった。


「…帰るね」


「ちょ…待ってルノア!じいちゃん!腕立て伏せやめて!」


 店内中央、上半身裸で腕立て伏せをしていた老人はその場であぐらをかいた。


「なんじゃい、調子よかったのに」


 老人は首にかけたタオルで汗をぬぐった。やせ型ではあるが老人にしては腕や肩、腹など全体的に筋肉がついている。


「お前、病院に配達は行ってきたのか?」


「行ってきたよ!その帰り!」


「ふん。帰り道で女をつれてくるとは偉くなったもんじゃの」


「た、たまたま会ったからお茶してもらおうと…なのに…なのになんでじいちゃん腕立て伏せしてんだよ!」


「ひまだったからの。それにスパイス漬けも完成したしな」


 老人は目線をカウンターにむけた。そこには抱えるほど大きな瓶があった。中身は茶色い液体で、なにか固形物も入っていた。


「なんですか?これ」


「名前のとおり、スパイスを漬けたもんだよ。シナモン、生姜、今回は華の国の辛子なんかも入れた特別もんだよ。他にも入ってるが忘れた。これを飲むと一気に力が湧いてくる」


「へえ、なにに漬けてるんですか?」


「酒だよ」


 ………え。


「お酒!?」


「ああ」


「ちょっと飲んでみてもいいですか!?」


 老人は30㏄程しか入らない極小コップにその酒を注いでくれた。


 飲むと少量なのにのどや胃が熱くなる。スパイスの強い風味に顔を歪めた。アルコールを感じるけれど、スパイスも同じくらい感じる。


 これをスパイスではなく果実にしたら果実酒…リキュールができるのではないか。


「なんのお酒に漬けたんですか?どこに売ってますか?教えてください!」


「なんじゃお前、自分の店の商品も知らんのか」


 興奮するルノアとは真逆の呆れた顔で老人は告げた。


「オークス酒店で買ったホワイトリカーじゃよ」


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