第3話:出会いの日
市場で野菜と魚を買った街娘・ハルは家までの道を歩いていた。
もうすぐで勇者様とお会いできる。
その感情ですでにいっぱいだった。
勇者の姿は10年前に鏡で見る以来になるが、強烈な運命を感じた彼女にとっていつでも記憶の中から容姿を引き出せるほどになっていた。
しかし、浮かれてばかりはいられなかった。
魔王はもう片付けたが、これからは勇者に群がる女たちを何とかしなければならなかった。
いや、魔王軍の経営面でも彼女は苦労しているわけなのであるが、ひとまずはそれは忘れよう。
勇者が旅に出たと言うことは1週間前に王国からの号外新聞にて多くの民が知る事実となった。
この街に来るまでにひとつ村があり、その後にハルがいる街・エーテルに着く。
おおよそ一週間ぐらいの行程だ。
途中にいるモンスターに苦戦さえしていなければ。
だが、そのことについてはハルは一切気にしていなかった。
などと様々な事に思いふけながら彼女は家の近くまでたどり着きそうになった時、足下がおぼついて体勢が崩れてしまった。
その瞬間、彼女は身体を支えられた。
腕?もしかして?
彼女は体勢を変え、支えられている腕の人の顔を見ようとする。
「大丈夫ですか?お嬢さん」
「あっ!あっ!」
パニック状態だ。
唐突の出会いに彼女はうまく返事ができない。
「あっ!あっ!」
顔まで真っ赤にするハル。
そしてようやく彼女の口から、
「アギル!!!」
・・・隕石を対象者に落とす強力魔術が唱えられた。
空から飛来するその攻撃に勇者は避けることはできず、7777のダメージを負いその場に倒れてしまった。
返事がない、ただの屍のようだ。