第2話:終わりの日
「必殺・腹パン」
街娘・ハルはそう呟きながら魔王に技を繰り出した。
魔王は信じられないという顔をしながら、身体が崩壊していき消滅していった。
魔王の終わりの日。
これは勇者と街娘が出会う1年前の話
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ハルは幼心に一目惚れをしたあの日以来、ありとあらゆるシミュレーションを行い、自分に必要なスキルを身につけていった。体術・魔法・教養とすでに街娘というよりは戦士として強力な力を獲得していた。
そしてふと考える。
「勇者様にとって私なしでは生きれなくすればいいのだわ」
魔王討伐の旅について行き、私がそこで勇者様の助けになることが出来れば勇者様もきっと私の事を好きになってもらえる。ハルは考えを纏め、
「魔王討伐の旅も私のシナリオ通りに進めれば…」
かくして、魔王討伐の旅を企画・立案すべく彼女は下見もかねて魔王城までの旅に出た。
両親には実家を手伝うために、王国で働いて修行してくると家を出て、いざ行かんと魔王城まで出発した。
ハルのレベルは旅の中でみるみる上がっていき、魔王城付近に到着する頃にはレベル90となっていた。その頃にはありとあらゆる、体術・魔術・スキル等を獲得し、旅の道中の地形なども把握していた。
当初の予定では、魔王城まで来ることが目的であったが、ハルの心持ちは変わっていた。
「そうだ、魔王葬ろう」
まるで観光都市に行くような流れで、彼女は魔王討伐を考えた。
「魔王討伐して、私のスキルで魔王の替え玉を作り出し、魔王が生きていることにすれば、魔王軍側も私の手の中にあるも同然…」
勇者の剣?大魔法?召喚獣?
いらない、いらない。
彼女は拳一つでここまで多くの猛者たちを葬ってきた。
「今日が魔王の終わりの日ね」
そうしてゆっくりと彼女は魔王城へ入って行くのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
魔王が消滅した後、彼女はスキル「疑似模型」「人形遣い」を使い魔王の復元に成功。
魔王を日頃から操ることが出来るようになった。
こうしてハルの勇者攻略と魔王軍指揮という二足のわらじが始まるのであった。