第1話:はじまりの日
さあ、始めようか。
街娘・ハルはこの数年間を思いながらふと思った。
10年前、運命の人を見つけて以来彼女の努力は始まった。
それまで性根の腐った生意気な少女だったが様々なことに取り組み、今では実家で立派な喫茶店の看板娘として働いている。暴力?だまし討ち?そんな品のないことをしないまでに彼女は成長したのだ。
「お母さん、行ってきます」
「お買い物よろしくね」
反抗期も超え、彼女は両親を大切にしていた。
まさにどこにでもいる街娘としての振るまいを覚えていた。
「この路地裏からの方が市場に近いわよね」
路地裏を抜け少し歩くと目的地であり、急ぎ足で歩いていたハル。
「今日いよいよだわ」
今日は勇者と初めて邂逅の日。
鏡で見ていたとき彼女の手には買い物の袋を持っていたことから、この買い物が終わり家に帰る頃に勇者と出会う。
「身だしなみは朝一からやったからバッチリ」
気合いの入るハルは鼻歌混じりに路地裏を歩いていると、
「お嬢ちゃん、俺たちと遊んでいかないかい?」
10人ぐらいの金髪やドレッドヘアーなどいかにもヤンキーの姿をした男たちに取り囲まれていた。
当然か弱い街娘のハルは、
「あ、結構ですー」
と男たちと目を合わせることなく路地裏を進んでいく。
これにたまらず、
「おいおい、無視とはダメだな」
ハルは軽くため息して、
「私、人を痛い目にあわせるの趣味じゃないんですけど?」
まるで挑発するような言葉に男は、
「こいつ、まるで俺たちくらいならすぐ倒せるみたいな言い方しやがって。生意気だな。おい、お前ら、こいつに少し社会の怖さを教育してやれ」
男たちがハルに向かって拳を上げようとした時、
「ズドン」
と重い音が響いた。
成人男性3人ぐらいが泡を吹きながら倒れた。
「は…」
リーダー格の男は口にこぼす。
「全く。街でこんな姿見られたら、清楚系で売っている私の評判が下がるんだっつうの」
ハルが気だるそうにそう言う。
「くっ、このアマ!」
リーダー格の男がハルに飛びかかってきたときハルは一言、
「必殺・腹パン」
とりあえず全員を一撃で片づけたハルはそのまま市場の方に向かったのであった。