第0話:街娘志す
初めての投稿なので、温かく見守っていただければ幸いです。
運命。
人間の意志を超えて、幸福や不幸、喜びや悲しみをもたらす超絶的な力。
人生で運命というものに巡り合えた時、人は動物はどう感じるのだろうか。
はじまりの街・エーテル。
旅人や戦士、冒険者などがまず訪れる街。
街の近くには王国もあり、比較的豊かな街と言えるだろう。
そんな街をひた走る彼女・ハル。
背後から追いかけてくる男の子たち。
モテモテで追いかけら…
「まてや!!ゴラぁ!!」
「ハル!お前今日こそは許さねえぞ!!!」
怒号の嵐だった。
男たちの異性をよそにハルはスルリと路地裏へ侵入。
あっという間に男たちを撒いてしまった。
その小さな身体で年齢はまだ8歳になったばかりの彼女は…
「ざまあねえな」
この街娘、性根が腐っていた。
この後も家の手伝いを掻い潜るためにどうしようか策略を立てている所だった。
「そういえば、家の倉庫にこないだオヤジが貰ってきたマジックアイテムを仕舞うって言ってたっけ…」
そうと決まればと、ハルは家の倉庫にて身を隠しながら、目当ての品を散策することに興じるのであった。
埃っぽい倉庫内。隠れる場所ならいくらでもあり、外から家族が入ってこないかだけ心配しながら、早速物色を始めるハル。
数十分もした頃に、大きな埃よけを見つける。これは以前倉庫になかったものだ。
ハルはこいつだと確信し、
「よいしょ!」
と埃よけを剥がす。そこには、年の変哲もない大きな鏡があった。
「特にマジックアイテムって感じでもないな…」
と、彼女が徒労に感じたそのとき、鏡は強烈な光を放ち始める。
ハルも光の眩しさに目が開けられなかったが、次第に光が弱まり鏡が見れるようになった。
ハルはその鏡の中に、自分に似た、但し年齢は数年はたっているであろう自分と並び男の人が談笑しているのが鏡に映った。
「これは10年後の今日あなたと勇者様が初めて出会った日の光景です」
「!!!!」
ハルは突然しゃべり出した鏡に対してびっくりしてしまった。
しかし、鏡が急に人間の言語を操り始めたことよりも、自分の姿が10年後どんな風になっているのもどうでも良かったのである。
「ゆ、ゆ、勇者さま…かっこいい!」
それはハルにとって初めての感覚だった。今まで短い人生を生きてきたが異性と思える男性は当然のようにおらず、知り合い・知人の男性もぱっとしない顔立ち。
勇者の顔立ちはまさにハルのドストライクだったので。
「なに、これ、この人!!!」
興奮状態は何分もかけて収まった。
鏡はハルに呼びかけるように告げるのであった。
「将来魔王が現れ、世界滅亡を企てようとする。勇者は世界を救う素質を持ち、いづれ仲間を連れて旅に出るだろう。残念ながらハルは他の選ばれたパーティーにあるアザがないため勇者の仲間とはなれない。そのパーティーも勇者の周りにはハーレムメンバーが揃うだろう。そして国王は魔王討伐の折には王様の娘を勇者に嫁がせると言っている。」
途中から聞きたくない情報ばかりが聞こえてくるがハルには関係なかった。
「そんなのどうでも良い。この人は私の運命の人。だったら他の女に奪われないようにするだけ!」
町娘ハルの野望が埃まみれの倉庫の中から今始まった。