甲子園デビュー
「いよいよ夏の甲子園が始まった。メジャーリーガーだった那覇を使うと周囲から恨まれるから基本は首里が投げろ。那覇はリリーフで待機。今年こそは優勝するぞ!」
「おお!」
具志堅監督の短いありがたいお言葉である。
「初戦は開催国の大阪ですね。」
「那覇先輩? 何をしてるんですか?」
「え? 大阪名物のたこ焼きを焼こうと思っています。おまけのお好み焼きも焼けますよ?」
「ダメですよ!? 甲子園のベンチは火気厳禁です!」
「チッ。」
那覇の趣味はベンチ料理である。
「プレイボール!」
いよいよ甲子園の1回戦が始まった。沖縄高校と大阪高校の対決である。
「大阪? どこかで聞いたような?」
那覇は何か昔に知っているような気になるが思い出せない。
「3番バッター、スーバくん!」
カキーン!
「ホームラン! 1回の表! 大阪高校! 3番のスーバくんに先制ホームランが飛び出しました。」
「4番バッタ-、布掛くん!」
カキーン!
「5番バッター、田岡くん!」
カキーン!
「三者連続ホームランです!」
大阪高校がクリンナップの3本のホームランで3点を先制した。
「ああ~!? 思い出した!? 大阪のお笑い三人組です!?」
那覇は思い出した。大阪には全日本代表クラスのお笑い芸人がいたことを。
「でも大丈夫です。うちには石垣くんがいます。」
カキーン!
「入ったー! ホームラン! 沖縄高校1番石垣くんの先頭打者ホームランです!」
「やったー! さすが石垣くんです!」
那覇は初めての甲子園ということもあり、熱戦を喜んだ。
「アウト! スリーアウト! チェンジ!」
「あれ? 石垣くんの後は誰も打たない? 沖縄殺人打線は何処へいったですか?」
「何を言っているんですか? 那覇先輩。」
「え?」
「那覇先輩がメジャーに行っている間に沖縄の野球レベルは下がったんですよ。このチームでホームランが打てるのは俺だけですよ。」
「なんですと!?」
沖縄から那覇が消える。那覇の早いボールが見れない。当然、動体視力が落ちる。打線の質が下がる。ということは首里が抑えることが出来ないと負ける。悪循環であった。
「かき氷を作っている場合じゃなかった!? 急いでブルペンで肩を作ってくるです!」
那覇は慌ててブルペンに走って行くのである。
つづく。




