命日にアメリカ行きを決意する
「デニーくん。安らかに眠れ。おかげで僕は好きな人と平和に暮らせてます。死んでくれてありがとうです。」
俺の命日に那覇は墓参りにやって来た。
「デニーくん。あなたの命日だけは私も那覇くんも忙しいけど、時間を割いてお墓でデートができるわ。これもデニーくんが死んでくれたおかげよ。死んでくれてありがとう。」
那覇と安室は俺の命日にデートするのが恒例だった。
「ウッズくんから、アメリカの少年野球リーグに参加しないかって、誘われたんだ。」
「アメリカか、いいわね。私も日本でアイドルになれそうな気がしないから、アメリカに行って、アイドルのオーディションでも受けてみようかしら?」
安室も日本の芸能事情に苦しんでいた。
「日本でアイドルをするってことは、東京に住んだり、東京の芸能事務所に売り出してもらわないとダメなの。テレビ局ともスポンサーとのコネを作る接待とか、アイドルになろうとして、キャバクラやAV女優にされてしまう女の子が多いんだって。」
「アイドルや芸能界って、怖い世界ですね!?」
「アメリカの方がお金持ちも多しし、もしかしたらチャンスがあるかもしれない。」
安室はコネ社会の日本を捨てて、アメリカン・ドリームにかけてみようと思った。
「分かったです。来年は僕もアメリカのトライアウトを受けるです。」
「那覇くん、お金持ちになるためにアメリカに行きましょう。」
「はいです。安室ちゃんと一緒ならアメリカも怖くないです。」
那覇は女のために沖縄を捨てる覚悟をする。
「今年はウッズくんも日本に来てくれたし、来年は安室ちゃんと一緒にアメリカに行くです。」
「ありがとう。来年は私たちの新婚旅行ね。イヒッ!」
那覇と安室の愛が燃え上がる。
「お墓っていいですね。誰もいないから何でも話ができるです。」
「そうね。オシャレなカフェって、会話は隣のお客さんや店員さんに全て聞かれているのよね。何にも話せないわ。」
その通り。オシャレなカフェには他人の会話を盗み聞きしている、つまらない人間が多いです。
(いえいえ。二人の会話は俺が毎年聞いてます。)
俺は命日にお墓参りしてくれるのは嬉しい。だが那覇と安室の逢引の場になっているのは鬱陶しい。
(それにお墓の他の幽霊も聞いている。)
お墓には幽霊がいっぱい、那覇と安室の会話を聞いているのだった。
つづく。




