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沖縄大会決勝

「ああ~ん!? 野球したくないのに、体が勝手に野球場に行ってしまう!?」

 俺の前に、気弱な那覇の意思は関係ない。

「よし! いよいよ決勝戦だ! 気合入れていこう!」

「おお!」

「監督、それだけですか?」

「だって校長先生の話が長いと子供に嫌われるんだって。私、まだ嫌われたくない。」

 具志堅監督の言葉が短くなって、選手のストレスも減って体調が良くなった。

「沖縄小学校の皆さんですか?」

「え? はい、そうです。」

 那覇は誰かに声をかけられた。

「俺たちは今日、決勝戦で対戦する普天間小学校の選手です。」

「普天間小学校!?」

 対戦相手の普天間小学校の選手たちが挨拶に現れた。

「あれ? 意外に日本人ばっかりなんですね。」

「アメリカ軍の子供たちは基地の中に学校がありますから。」

「なんだ、そうだったんですね。スタメンに外国人ばかり並ぶと思って緊張してたです。」

「安心してください。みんな日本国籍ですから。」

「それは良かったです。」

「お互い今日の試合をがんばりましょう。」

「はい。そうですね。」

 意外に普天間小学校野球チームは紳士的な態度だった。

「なんだ。普天間小学校は日本人のチームか。なら那覇を使うまでもない。那覇、今日はベンチで沖縄そばでも湯がいてもらおうか。」

「はい。分かりましたです。やったー! 今日は登板回避だ!」

 那覇のテンションは上がる。

(チッ、沖縄には俺を楽しませてくれる男はいないのか!?)

 俺のイライラは募るばかりだ。

「プレイボール!」

 いよいよ全国大会出場をかけた沖縄小学校と普天間小学校の試合が始まる。

「普天間小学校、1番、佐藤くん。」

「なんだ? 佐藤? バリバリの日本人じゃないか・・・・・・何!? 騙された!?」

 バッターボックスに入った佐藤くんは日本人の女性と結婚した元アメリカ軍の将校の息子だった。

「が、外国人じゃないか!?」

「ハーフです。それに日本人女性と結婚して、佐藤の国籍は日本国籍です。えっへん。」

「いっぱい食わされた!?」

 具志堅監督は普天間小学校に一杯食わされた。

「おかわりですか? まだまだあるですよ。」

 那覇はグラウンドのことは気にしていないので沖縄そばを作り続けている。

「ピッチャー、第一球を投げました。カキーン! 佐藤くんの先生ホームランです!」

 あっさり佐藤のパワーが爆発した。

「落ち着け!? まだ1点差だ!?」

 動揺する具志堅監督。

「二番バッター、鈴木くん。」

「この展開は!? まさか!?」

 そのまさか。鈴木くんも元アメリカ軍のお父さんと日本人のお母さんのハーフで、ごっつい体をしていた。

「不味いぞ!? 那覇!? 急いで準備しろ!?」

「不味い? おいしい沖縄そばですよ。おかわりの準備はできてますよ。」

 あくまでも沖縄そば屋さんの那覇であった。

 つづく。

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