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俺の夢

「ギャアアアアアアー!?」

 次の瞬間バッターボックスで桜島が悲鳴を上げて気絶して倒れた。

「タイム!? タイム!? タイム!?」

 審判が試合を一時中断させる。

(俺の夢は誰にも止めることはできないんだ!)

 桜島のバットが俺のボールに当たった。金属バットはバーン・ボールの衝撃でくの字に押し曲がり、バットを持っていた桜島の両手の骨は砕け散った。

(確かにキャッチャーのことを考えて、ど真ん中中心にしかボールを投げてない。だがな、俺のボールの破壊力はバットに当てたバッターの選手生命を奪ってしまうくらい強力なんだ。)

 俺の剛速球を打つということは雪山に海パンで登るのと同じくらい危なかった。

「タンカーだ!? タンカー持って来い!?」

「救急車!? 救急車はまだか!?」

「沖縄病院に連絡しろ!?」

 騒然となる球場。

(ブレイク・ボール、いや、デストロイヤー・ボールにしようかな?)

 当の本人の俺は新しい魔球の名前を考えていた。

「おまえら!? 桜島の敵討ちだ!? 那覇を打ち崩してこい!?」

「嫌だ!? 死にたくない!?」

「そうだ!? そうだ!? 箸が持てなくなったら美味しいご飯が食べれないんだぞ!?」

「そう言うなら監督が打ってくださいよ!?」

「降参しよう! 生きて鹿児島に帰りたい!」

 話がまとまった鹿児島代表チーム。

「白旗です。降参します。アッハッハッハ。」

(そうか、こういう勝ち方もあるのか。ということは俺のボールを相手バッターにぶつけまくれば、相手は選手が足らなくなって降参する。次の試合の先頭バッターにわざとぶつけてみよう。)

 俺は良いことを経験した。人生、何事も勉強だ。 

「ゲームセット!」

 俺たち沖縄代表チームは鹿児島代表チームに勝った。

「早く! 鹿児島に帰りたいよ!?」

 もちろん桜島は沖縄病院に入院した。

「ダメだ! 大人しくしなさい! 君の手は直ぐに手術しないと良くならないぞ!」

「嫌だ!? 手術は怖いよ!?」

「安心したまえ! 我が沖縄病院は、あの東京代表チームのエース千代田くんの病気も直したんだ!」

「え!? あの千代田の!?」

「そうだ! だから君も安心して、手を鋼に変えよう!」

「なんだって!? 俺を改造人間にする気か!?」

「桜島くん! 君は那覇くんのボールを打ちたいと思わないのかい!?」

「那覇のボールを打つ!?」

「そうだ! あの殺人ボールを打てるのは、君しかいないんだ!」

「俺しかいない!? 分かりました! 先生! 俺の手を手術してください!」

「よし! 任せとけ! 手術承諾書にサインしてね。アハッ。」

 こうして桜島は改造人間手術を受けることになった。

「先生、ただ手術がしたかっただけでしょ?」

「あ、分かる。だって、腕が鋼ってカッコいいじゃない!」

 恐るべし、沖縄病院の医師と看護師。

 つづく。

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