表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/100

一人で二人

「ゲームセット!」

 審判が試合の終了を告げる。

「ありがとうございました。!」

 両チームの選手が整列して挨拶をする。そして自分のベンチに戻って帰り支度をする。

「那覇がいれば全国大会に行けるんじゃないか?」

「そうだな。おまえらがキャッチャーミット代を寄付してくれればな。」

「そんな金はねえよ。」 

 今日の試合だけで5個のキャッチャーミットが燃える寸前であった。キャッチャーミットは摩擦で黒焦げになっている。

「見ろよ。相手チーム。初めて那覇の投球を見て放心状態だ。」

「可哀そう。3カ月前の俺たちだな。」

「那覇パニック。2週間は何もする気しねえな。」

「ああ、野球をやめたくなるぞ。」

 相手チームは放心状態で動けなく、呆然としていた。相手チームの今の気持ちを那覇のチームメイトは3カ月前に体験していたので、相手の気持ちがよく分かった。

「よし、帰るぞ。」

「はい、具志堅監督。」

 那覇の少年野球のチームの監督は、俺のオヤジだった。

「那覇、ナイスピッチング。」

「ありがとうございます。監督。」

 具志堅監督は那覇を見ていると死んだ息子が生き返ったみたいで嬉しかった。小学1年生の那覇を起用している理由がそれである。

「きっとデニーが生きていれば、おまえみたいなピッチングをしてくれたはずだ。きっとあの世で喜んでいるだろう。うるる。」

 少し涙ぐむ具志堅監督。

(あの、俺、ここにいるんですけど?)

 俺は那覇に取り憑いているので、父親の側にはいた。ただし俺の声は聞こえないし、俺の姿は誰にも見えない。

(まあ、俺が取り憑いていれば、弱虫の那覇でもプロ野球選手になれるだろう。ワッハッハー!)

 説明しよう。俺は事故で死んでしまったが、プロ野球選手になりたいと夢のおかげで成仏せずに那覇に取り憑いた。

(フンフンフンフン!)

 幽霊になった俺は暇なので筋トレに励んだ。それによってひ弱な那覇の体でも、俺の筋肉ムキムキの剛速球が小1でも投げられるのだ。全て俺のおかげ。

「さあ、みんな帰るぞ。」

「はい。」

 こうして沖縄大会の初戦を勝利した。

 つづく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ