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決勝戦

「ふう~、やっと決勝戦だ。これで我が家に帰れるです。」

 那覇はホームシックの甘えん坊の小学1年生なんの早く沖縄のお家に帰りたかった。

「いいか! 今までの血と汗と涙を無駄にするな! 絶対に優勝するぞ!」

「おお!」

 沖縄チームは円陣を組んで士気を高める。

「おい! 那覇!」

「はい!? 西表先輩!?」

「俺たちが、ここまで来れたのも、おまえのおかげだ!」

「西表先輩!? あの横暴で他人を傷つけることしか考えていない西表先輩が感謝を言うなんて!?」

 那覇は西表先輩を普段から、そういう目で見ていた。

「西表先輩も野球を通して、人間が形成されて立派な大人になって行くんですね。」

「那覇、なんか言ったか? おまえ殺すぞ!?」

「キャアアアアアアー! 何にも言ってません!?」

 人の性格は簡単には変わらないと改めて思った那覇であった。

「那覇! 今日の試合も頼んだぞ!」

「はい! 今日も完全試合です!」

 那覇も西表先輩と意気投合して、決勝戦に挑む。

「なんでやねん? まさか沖縄が決勝戦に残って来るとはな。」

「ほんまや。わてらの優勝は決りやねん。おおきに。」

「ぼちぼちでんな。カッカッカー!」

 決勝戦の対戦相手は大阪代表チームだった。関西弁全開である。

「僕なんかを信じてくれる監督、チームメイト、お客さんのためにがんばって投げようかな。」

 野球が嫌いな那覇は、応援してくれる人々のために、初めて自らの意志で野球をしてみようと思った。

(おお、那覇の分際で前向きじゃねえか。まあ、投げるのは俺だから関係ないけどな。)

 そう、今までは俺の一人舞台。しかし体は那覇の体。二人の気持ちが一つになった時、奇跡が起こる。

「プレイボール!」

 決勝戦の試合開始である。

「いくぞ! え~い!」

(くらえ! 大阪代表! これが俺のバーン・ボールだ!)

 那覇は第一球を投げた。

 ズバババババババー!

 俺の投げたボールが火の鳥になってバッターに向かって行く。

「うわあああああ!?」

 バッターも、キャッチャーも審判もみんな吹き飛ばしてしまう破壊力だった。

(どうだ! これが俺のボールだ!)

「すいません! すいません! ごめんなさい! 許してください!」

 那覇は全力で謝ることしかできなかった。

「うん? ギャアアアアアアー!?」

 悲鳴を那覇も上げた。バーン・ボールに続く、新しい魔球火の鳥ボールの破壊力の反動に那覇の体が悲鳴をあげて壊れてしまった。

(どうした? 那覇? 俺は幽霊だから、おまえの体のことは知らないぞ。)

 俺は那覇の体が、俺の剛速球に耐えれないとは想像もしていなかった。

 つづく。

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