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ジュニア

「勝った勝った! 楽勝だな!」

 俺たちはカナダに10対4で勝った。もちろん俺の燃えるような投球のおかげである。

「よくやった! 明日は決勝で、アメリカ戦だ! 今日のメジャーリーグのナイター観戦は中止だ!」

「ええー!?」

 子供たちは優勝するよりもメジャーリーグの試合が見たかった。

「そこで、明日のアメリカ戦に勝ったら、明日メジャーリーグの試合を見て帰ることにする。」

「やったー! 勝ちます! アメリカに勝ちます!」

「メジャーリーグの試合を見て帰れるぞ! わ~い!」

 日本代表の選手たちは喜んだ。

「ええー!? 早くお家に帰りたいよ。」

 那覇は慣れないアメリカの大地にホームシックになっていた。

「見せてもらったよ! 君の投球!」

「え?」

 そこに金髪の外国人の子供が現れる。

「那覇くん! 俺と勝負だ!」

「そのユニホームは!? アメリカ代表!?」

「そう、その通り。俺はアメリカ代表の4番タイガー・グッツだ!」

 現れたのは明日戦うアメリカ代表チームのタイガー・グッツだった。

「ま、まさか!?」

「そう、そのまさか。俺はメジャーリーグ、ニューヨーク・ヤンキーズのタイガーの息子だ!」

 タイガー・グッツは那覇がぶつかって吹き飛ばされたタイガーの息子だった。

「あの失礼な人の息子!?」

「何!? 父がなにか失礼なことをしたのか!? 申し訳ない!? 謝るから裁判で慰謝料だけは請求しないでくれ!? うちは父親の性で借金地獄なんだ!?」

 タイガー家は父親の暴力事件で訴訟中の裁判を44件も抱え、台所は火の車。父の年俸100億円でも支払いきれない慰謝料請求が行われていた。

「グッツくん。大変なんですね。」

「そうなんだ。実は。迷惑をかけたみたいでごめんね。那覇くん。」

「こちらこそ。お父さんが失礼だから、グッツくんまで失礼な人間だと思い込んじゃった。すいません。」

 低姿勢で謝罪好きな那覇とグッツは妙に親近感を持ちお互いの苦労を分かり合えた。

「俺は那覇くんのことが大好きだ。」

「僕もグッツくんなら友達になりたいです。」

 那覇とグッツは国籍を超えて野球を通じて友達になった。

「野球って素晴らしいね。」

「何かアメリカで困ったことがあったら言ってくれ。」

「あの、実は日本の先輩にお父さんのサインをもらってこいって言われてるんだ。」

「分かった。明日の決勝戦に父のサインをもってきてあげるよ。」

「ありがとう。グッツくん。」

 那覇とグッツは固い握手を交わすのだった。

 つづく。

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