夢はプロ野球選手!
「俺! プロ野球選手になる!」
俺の名前は具志堅デニー。沖縄に住んでいるとプロ野球のチームが春先に秋季キャンプにやって来る。
「どうして?」
「カッコイイから!」
子供ながらに俺は大人のプロ野球の迫力に憧れた。憧れは将来の夢の動機に十分なる。
「あっそ、デニーらしいね。」
俺の友達の那覇勇作。大人しくて、気弱で、俺のパシリだ。近所に住んでいる幼馴染という悪縁でつながれている。
「那覇、俺たちもキャッチボールしようぜ!」
「ええ!? 僕、運動神経が良くないのに・・・・・・。」
俺の圧力に屈している那覇は気弱な性格になってしまい、自主的に運動をしようとするタイプではなくなった。全て、俺の性ですけど。
「いくぞ! 俺様の剛速球だ!」
俺の投げたボールは子供ながらに時速100キロは出ていた。
「ギャアアアアアア!?」
俺の空気を切り裂き渦を発生させるボールを那覇は受け取れないで、吹き飛ばされる。ボールが当たって痛いではなく、吹き飛ばされるなければ最近はウケないらしい。
「痛いよ!? もうデニー君とキャッチボールなんかしたくないよ!?」
那覇はキレキレでメソメソだった。
「悪い悪い。今度は手加減するからよ。」
誰かが言っていた。この世は気を使った方が負け。他人を踏みつぶせる者だけが成功を掴めると。プロ野球選手になれる者は、毎年100人もいない。実力勝負の世界だ。
「いくよ。え~い。」
那覇のヘロヘロボールは、俺の頭を通り越して、遥か彼方に飛んで行った。
「バッキャロウー! どこ投げてんだよ!」
俺は那覇に文句を言いながらボールを拾いに国道に出た。
「ごめんなさい! え?」
次の瞬間、ドスっと音がして、俺は車に引かれて、吹き飛ばずにまともに直撃を受けた。即死だった。吹き飛んでいれば衝撃は軽かったかもしれないが、俺は運が悪く流行に乗れなかった。
「デニー君!?」
俺のプロ野球選手になるという夢は終わった。
そして月日は流れた。
俺の大好きだった野球の試合が始まろうとしている。少年野球だ。沖縄のリトルリーグの試合だ。
「ピッチャー、那覇くん。」
那覇は野球を続けていた。
つづく。






