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偏差値52の魔王様  作者: 佐倉要
序章
8/11

8

先生たちに根掘り葉掘り聞かれたが答えられることは1つしかない。


古澤に手を出そうとしたらたまたま額が落ちてきて、たまたまゴミ先…本城先輩(本名)の上に落ちてきて、割れて刺さった。

その間誰もその壁にも触ってないし、ましてや額に触った生徒などいない。

先生たちはあまりの偶然に驚いていたが、俺たちが(古澤はずっと黙っていたから俺が、だけど。)言っていることが嘘ではないと信じざるを得なかった。あれだけの人がいて何十人の生徒が目撃者なのだから。


俺も話せることはすべて話したし、先生たちはこのまま話しても意味がないと認識したのか、昼休みが終わる頃には解放された。


最後に先生が俺たちに言ったのは、本城先輩は死んでいない、あと1ミリ数が深かったらまずかったが、命に別状はないとのこと。ただその時の先生たちの暗い顔がどこか引っかかったのは俺は見逃さなかった。


5時間目、6時間目、と授業は進み放課後。今日は部活を休んで帰ると古澤は言うので、俺も古澤に付き添って帰ることにした。藤谷に先輩に伝えてもらうように頼んで校門を出る。


俺と藤谷と古澤はサッカー部に所属している。群を抜いてうまいわけでもないが、足を引っ張るほどでもない。古澤は持ち前の明るさで、藤谷は怖そうに見えて実はツンデレな性格で先輩からも慕われていた。俺はそんな2人をまとめる役として、いつも3人で一括りにされている。

ついたあだ名は、ーーお父さん


おいおい。そう呼ばれるたび嫌そうなそぶりを見せるが、実は割と嫌じゃないのは内緒だ。



2人で帰るのは久しぶりだ、いつもは藤谷も一緒に3人だったり、他のメンバーも入れてそれ以上だったりするから。


それしても古澤の顔が冴えない。

多少は良くなったものの、まだ本調子ではない。仕方ないといえば仕方ないが。

たわいもない話…新しくできたラーメン屋の話でもしてみるか。

「なぁ古「九条、あのさ、なんで額が落ちる前、額見たの。」


「え?」

額を見た?俺が?

「本城先輩が俺に腕を伸ばしてきて、なんとかしなきゃと思った。でもそしたら九条の手に力が入って、どうしたんだと思った。そんでお前の方見たら額を眺てる。そしたら額が落ちた。おれ、たまたまだと思ったんだ。それか、額が落ちる瞬間に、それに気づいて顔を上げたんだと思った。でもどれだけ考えても、お前が額を見てから落ちた記憶しかないんだ。なあ、気が動転してるんだなんて言うなよ。そう思うかもしれないけど、こっちは真剣だ。たまたまなんだよな?」


俺も無意識だった。意識的に上を見上げたわけではないし、実際俺が額を見ていた記憶もない。しかし、見ていたのだろう。こんな状況で古澤は嘘はつかない。


でもなぜそんなことを聞く?

それじゃあまるで

「俺が額が落ちることを知っていたって言いたいの?」


古澤にばれたのか。

俺には予知が見えると。

ずっとずっと隠してきた。

古澤と藤谷相手なら言えたと思う。

でもできなかった。

なぜかわからないが、言ってしまおうと思うたびにこの力は言ってはいけないって頭の中で警告音が鳴り響く。


今もまた、古沢に知られるという状況に置かれてかつてないほどに心臓の動きが早くなる。

知られてはいけない。

気づかれてはいけない。

そればっかりを頭の中で繰り返す。

嫌な汗をかき、頭の中も心の中も得体の知れない何かがブクブクと音を立てて大きくなってくる。


「いや、そうじゃなくて、なんというか、九条がやったの?」


は?何を言った、今。

俺がやった?

そんなわけ、

「そんなわけないじゃん。だいたい俺がやったって、どういうこと?笑あの状況で誰も壁にも額にも触ってないし、あれはずっとお前の隣にいただろ?それにあの先輩の前で下手な真似なんかできねえって。」


おいおい、そうくるか。

てっきり予知のことがバレたかと思ったじゃん笑

さすがにそれはねーわ。


「じゃあさ、」

「ん?」




「なんで額を見ながら笑ったの。」




え、背中に一筋の嫌な汗が流れる。

どうして俺はこんなに反応しているんだ?笑ったって?


それじゃあ本当に


ーー俺がやったみたいじゃないか。



「笑った?笑ってねーから!お前、あの時かなり不安定だったから見違いでもしたんだって!笑うわけねーじゃん、てかあの状況で笑えるとか俺そんな度胸ねえの古澤もよく知ってるだろ?何を言い出すかと思ったら!疲れてるんだって。今日はゆっくり休めよ。」


一息で言い切った。


自分に言い聞かせるように。


「…そうだよな。悪い。流石にないよな。本当に俺疲れてるみたい。ははっ…ゆっくり休むことにするわ。なんか変なこと言って悪かった。忘れてくれ、あと、今日はありがとう。俺お前いなかったらあの時どうなってたかわかんねえから。

…じゃあ、また明日な!」


「おい…いいって。じゃあな。」


そう言って別れる。

古澤は自分の見間違いだと信じたようだが、

当の俺はどうだ。


俺がやった?

そんなこと有り得ない。

予知は、予知夢を見る人もいるらしいから絶対にないとは言い切れない。


もし仮に俺が今日の一件をやったとして、それを言うのか?

こうやって言えばいいってか?

俺が額を落としました。

アキちゃんみたく包帯まるけになればいいなぁと思ったら額が落ちました。

アキちゃんみたいに、死ぬわけでもなくでも体の自由が奪われればいいなぁと思いま…し……た…


俺今なんて…?


ーー死ぬわけでもなく、体の自由が奪われれば…


本城先輩の命に別状はないと言った時の先生の顔を思い出す。


なぜそんな顔をする?


死んでないんだろ?しばらくは入院でもいつか戻れるんだろ?それならいいじゃないか。


その答えは翌日、あっさりと耳に入ってくるのだった。



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